プロジェクトOに参加したある生徒の手記より抜粋。
『IS学園の生徒会会長は常に最強であれ』
一見冗談の類いかと思われる一文だが、これはれっきとしたIS学園の校則の一つである。歴代の生徒会長たちは並み居る対抗馬を実力行使でねじ伏せ会長の椅子に座ったのだ。民主主義を足蹴にするかの様な暴挙がこのIS学園では発足以来さも当然の如く横行していた。
そんな猿山の大将を決めるようなノリでこれまで幾多の女がIS学園生徒会長の座に就任してきたが、その中でも歴代最強の生徒会長と呼ばれる女が居た。
『更識楯無』
IS学園の生徒会の現会長にしてロシア連邦国家代表。そして日本の対暗部用暗部組織の長という厨二病真っ盛りの中学生でも考えないようなキャラをした女である。
胡散臭い肩書きを複数所持している不審人物だが要はめっちゃ強くてめっちゃ頭の良い女なのだ。自分の専用ISを作ってしまえる程に。
「褒めているのか貶しているのかわからない説明があったけど改めまして、IS学園生徒会長更識楯無よ」
「突然やって来て何言ってるですか?」
「頭のおかしい人を見るような目でこちらを見るのはやめてちょうだい」
部屋にやって来るや否や妙な事を口走る楯無、変な人を見るような手芸部の部員達の目線が痛い。
「んんっ…気を取り直して…織斑くんのISスーツを作っているというのは本当なの?」
「そ、そうです」
楯無は呼吸を整えると再び同じ質問を投げかけた、返ってきた答えはそれを肯定するものだった。楯無は腕を前で組むとキリッとした表情で現在手芸部が陥っている問題を指摘した。
「けどもう行き詰まっているようね」
「そうなんですよー…」
素材と予算、そして技術。現時点で彼女たちに目標到達までに不足している物はあまりに多かった。これがただの一般の生徒のISスーツを作るのであれば簡単だった。しかし今回の制作目標は極めて特殊な難物ときた。
「まぁ予算と技術は仕方ないとして…」
しかし、楯無は。IS学園屈指の才女はこの難題にも最適な答えを導き出してみせた。流石だ楯無、流石は対暗部用暗部(笑)の長だ。
「今更褒めても何も出ないわよ」
「?」
「あぁごめんなさいコッチの話…」
やっぱり頭のおかしい女である、しかし頭は良い。彼女の出した提案は素材を『ナノマシン』で補おうというものだった。
『ナノマシン』とは、IS登場以前より世界的に研究が進められてきたものである。細胞ほどのサイズしかない文字通りナノ単位の機械で。それらを体内の血管や内臓に注入する事により病気や疾患などを治療するというのが『ナノマシン』本来の使用方である。
しかしIS登場により、それらの技術を軍事に転用が可能となった。その最たるものがISの装備への使用だ。
ロシア連邦国家代表『更識楯無』は自身の専用機『霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)』の装備にその『ナノマシン』を使用している。
機体の背部にあるアンロックユニットであるアクア・クリスタルから生成される水分の中にある『ナノマシン』が、その水を攻防一体の万能兵装としているのだ。
主兵装である槍を覆えばそれはドリルの如く旋回し、敵を貫き。機体の前面に展開すればそれは水の壁と化して敵の攻撃の一切を防ぎ切る。
また、敵を拘束するのにも使用でき、相手の手足に絡ませれば触手プレイも出来るぞ。なんてやらしいんだ。
「私の専用機の武装に使われているナノマシンを利用してスーツの素材に出来ないかしら?」
「え、でも大丈夫なんですか?」
手芸部の生徒の顔には焦りがあった。本国からの許可とか、ISの技術の秘匿性とか、数々の問題が生じるのではないかと。しかし当の楯無はそんなもの何処吹く風だ。
「問題ないわ、このIS学園は『いかなる団体、企業、国家の干渉を受けない』という規則が存在するもの。つまり…」
「つまり…?」
「何処の所属のISでもこの学園の敷地内なら何やっても良いって事よ」
そんな事は決してないだろうが生徒達は取り敢えず首を縦に振ることにした。だって話を蒸し返して面倒な事になっても困るじゃん。
最悪の場合、生徒会長である楯無が何とかしてくれるだろう。そんな希望的観測に基いて生徒達は楯無の提案を飲んだ。
そしてトントン拍子に話と計画は進み、遂に一夏の新ISスーツは完成となった。詳細は省く、だってめんどくさいんだもの。
「遂に出来たのか…俺のISスーツ…」
数日後、一夏は学園の体育館まで足を運んでいた。生徒会主催で完成したISスーツのお披露目会をするとの事だった。
一夏が体育館に足を踏み入れるとそこには野次馬が広がっており、一夏はその人数に圧倒された。一夏の同級生はまだしも、明らかに他学年の生徒もおり体育館はもはや満員と化していた。舞台の上には楯無を筆頭とした生徒会とその他数人の生徒達の姿が確認出来る、そして彼女たちのすぐ側には赤い幕が掛かった『何か』があった。
一夏は直感でその『何か』が自分のISスーツである事を確信した、自分の為にこんな大それたことをしてくれる。そんなこの学校の生徒達の温かさに一夏の胸は熱くなった。
「織斑くーん!コッチコッチ!」
一夏に声をかけたのは手芸部の生徒達だった、一夏は声のする方へ、体育館の舞台の上へと。
「さっ!上がって織斑くん」
「は、はい…」
舞台の上へと上がる短い階段を登ると一夏は遂に赤い幕に覆われた自身のISスーツと対面を果たした。恐らくマネキンにでも着させている状態なのだろう、服というにはそれは膨らんでいた。
「やっぱり除幕式には主役が必要よね!」
「みなさん…!ありがとうございます!」
一夏の胸は感謝の気持ちでいっぱいだった。これでもうあの忌まわしいボロきれとおさらば出来る、もうこれで体育服でISの実技授業を受けなくて済むと。
「さあみんな!織斑くんの新ISスーツのお披露目よ!!」
体育館は生徒達の興奮に揺れた、学園の技術の粋をもって造られた一夏の新ISスーツが遂に日の目を見ることとなった。
「えいっ!」
一夏は新スーツの上に掛けられていた幕を勢いよく掴むと、それを一気に取った。
「え?」
一夏がそれを見た最初の感想は『困惑』だった。
「あの…会長…」
「ん?なあに?織斑くん」
「コレが…俺のISスーツなんですか…?」
「うん、そうよ」
一夏の目の前にあったISスーツは黒を基調としたカラーリングが施されたものだった。
以前より一夏はISスーツの布地をもっと増やしたいと考えており、その意見を取り入れたのか、新スーツは首元から爪先、足までを黒い光沢のない、ゴムのような素材で包まれていた。
「あの、会長…なんでコレ…」
「ん?」
「なんでコレ…前だけ裸なんですか…?」
前面だけを除いて。
一夏の前に現れた新ISスーツ、それは全面以外を強固な素材で覆った強度を重視したスーツだった。
なぜ前だけ布がないのかと異を唱える一夏、それに楯無は指を降って答えた。
「このスーツの全面、胸からち…股間にかけての部分は『ナノマシン』を使用しているわ」
「ナノマシン…?」
楯無曰く、このISスーツの全面は一見すると何も無いように見えるが、実はこれは透明なナノマシンに覆われているとの事だ。このナノマシンは衝撃を吸収する働きがあり、たとえISのパワーアシストの乗った打撃を受けてもビクともしないらしい。
確かに楯無の説明が本当ならこのスーツの性能は現行のあらゆるISスーツを凌駕するものだろう。見た目のデザインは最低極まるものだが。
「これ、着たら…見えちゃいますよね?」
「ええ、見えるわね。丸出しよ」
一夏のISスーツを着させられたマネキンは前がむき出しになってしまっていた。乳首、へそ、そして股間。作り物特有の均整のとれたボディを惜しげも無く晒してしまっている。
これを一夏が着るとなると、必然的にこのマネキンと同じ状態となってしまう訳だ。
「あの…俺、これ着るのは…」
「大丈夫よ織斑くん!手段は他にもあるわ!!」
この変態スーツを着る以外の方法が存在するのかと、一夏は藁にもすがる思いで楯無の言葉を清聴した。そして楯無は懐からあるものを取り出した。
「これなら大丈夫よ、織斑くん」
「…」
楯無は紐ビキニを懐から取り出すと、それをスーツの胸と股間の部分を隠すように結んだ。これでマネキンの乳首と股間は隠された。
「…ね?」
一夏の目からみるみるうちに光が失われていく、そこに追い討ちをかけるように楯無がもう1つあるものを取り出した。
「はみ出るようなら剃ればいいからね?はいコレ」
楯無から一夏の手に渡されたのはT字剃刀とシェービングジェルだった。楯無は一夏に対してさらに提案した。
「あ、除毛クリームの方がよかった?」
一夏は手に持ったシェービングジェルの容器を楯無の顔面に思いっきり投げつけた。
倒れ伏す楯無、一夏は舞台上で力なく笑った。
遂に完成した一夏の新ISスーツ!
さあ一夏、お前のエロさをみんなに存分に見せつけろ!