来ちゃった…♥
箒とその他クラスメイトによって破壊された一夏の部屋は五日という短期間で元通りに修復された。短期間による突貫工事にも関わらず一夏は特に不備を感じることはなかった。
部屋の扉は銀行の金庫の扉にも使用される頑強な素材で作られ、鍵もピッキング対策としてカードキーと指紋認証、そして網膜認証の3重のセキュリティが科せられ。さらに通気口などの隙間には侵入者(主に箒)対策として高圧電流が絶えず流されている。
「…ちょっとやりすぎじゃね」
千冬の部屋を出た一夏が厳重なセキュリティをほどこされた新居の中で呟いた独り言は完全防音の壁に阻まれ誰の耳にも聴こえることはない。ごく短期間の工期でこれだけの仕事をやってのけた施工業者たちには頭が下がる思いである。
「まーま…まーまぁ…」
「があああああああああああぁぁぁぁ!?!!」
「ウホウホウホォォォォォォォウ!!!!」
「コーッ………ホー…」
故に一夏の耳には届かない、今なお部屋への侵入を計ろうとする者たちの声が。
幼児退行したラウラがドアの表面を爪で引っ掻く音も。高圧電流で古いギャグ漫画みたいに黒コゲになる箒の断末魔めいた叫びも。渾身の力を振り絞り拳で壁を破壊せんするセシリアの雄叫びも。壁にライトセーバーを突き立て溶断を試みる鈴の呼吸音も。聴こえない方が幸せだろう。
「雑誌の取材かぁ」
部屋の外の魑魅魍魎たちの阿鼻叫喚の事など露知らず、一夏は先日千冬から知らされた雑誌取材の依頼を思い出していた。
「え、取材?俺に?」
「そうだ」
一夏との共同生活以来、なんだかやつれた様子の千冬が話を持ちかけたのは先日の放課後の事だった。
何でも一夏がISを動かせると発覚した日以来この手の依頼は数多寄せられていたらしい。IS学園に保護という形で一夏を入学させてからは千冬を筆頭とした学園の教師陣達が一夏の知らないところで水面下で処理していたそうだ。
今回はIS委員会からの信頼も厚いメディアからの依頼との事で学園側も一回限りという条件付きで取材の許可を了承し、一夏本人にも了承を得るために話が回ってきたという事だ。
「まぁ、なんだ、うん。たまには、気分転換も兼ねて良いだろう。こういうのは」
いつもと違う歯切れの悪い姉の様子に怪訝な表情の一夏。あの共同生活から千冬の様子は少しおかしい、何故か一夏と顔を合わせようとしないのだ。普段の泰然とした姿は何処へやら、挙動不審で一夏は少し気味の悪さを覚えた。
一夏は知らない、千冬の視界には今なお『幻視』が解除されずに残ってしまっている事を。そして今、千冬の目には一夏が黒ビキニと黒長手袋とサイハイソックスと白いミニフリルエプロンを纏った格好で映っているという事を。
自らの『幻視』が生み出した弟のけしからん媚体を直視出来ない千冬はせめて1日くらい弟を視界から外したいと願い、半ば独断で今回の取材の話を受けたのだった。
「まあ千冬姉が言うなら」
「あぁ…頼んだぞ……」
素直で良い子な一夏は千冬の猥雑な魂胆を見抜けず、その愛らしい顔を綻ばせる。かわいい。全くなんて素直でかわいいんだ一夏は。
そして一夏は知らない、自分にまたしても苦難が降りかかる事を。今はまだ知らない。
「ここが千冬姉の言ってた…」
翌日、千冬に渡された地図に指示された場所に向かうとそこには一件の大きな商業ビルが建っていた。ビルに入っているテナントを示す看板に一夏は目をやると今日取材を受ける雑誌『インフィニット・ストライプス』の編集部がそこにはあった。ビルを見上げているとその中から一人の女性が一夏に声をかけてきた。
「キミが織斑一夏くん?」
「あ、はい」
「時間通りの到着ね、感心感心!」
「貴女は…?」
「私?私は…」
女性は首から下げていた顔写真付きの社員証を一夏に見せる、社員証には『インフィニット・ストライプス副編集長:黛渚子』と書かれていた。
「黛…」
一夏はその苗字には聞き覚えがあった、あの口喧しいマシンガントークと、偏見、捏造。上等の方向性のジャーナリズムを掲げたあのIS学園新聞部の部長と同じ苗字だ。
最後に彼女を見かけたのはいつ頃だろう。あの忌まわしきアリーナでの乱癡気騒ぎで聴いた断末魔以来、彼女の姿を一夏は学園内で見かけたことはなかった。
「薫子から貴方の話は良く聞いてるわ〜」
まあ生きてはいるんだろう、五体満足かは分からないが。顔を見れば薫子とよく似ている。ジャーナリストの家系なのかなと一夏は呑気な事を考えていた。
「はい…取材は以上です!ありがとうございました」
「は、はい!こちらこそ」
取材はスムーズに進み1時間足らずでインタビューは終了した。緊張の糸が解けた一夏は思わず脱力しながらソファに背を預けた。
「んー、イケメンは何しても絵になるねぇ」
「あはは…」
渚子の適当極まる言葉に苦笑いで答える一夏、それに釣られてその場に居るスタッフも思わず笑みを零した。和やかな光景である。一夏の周囲から暫く失われていた淫欲抜きの平和な日常がそこにはあった。
「あ、そうそう」
「はい?」
「この後グラビアの撮影があるから織斑くん準備お願いね」
日常はなんの前触れもなく瞬く間に崩れ去ったのだった。
「いいわぁ…少年の、この、若い……スベスベの…お肌…」
「あの!これホントに雑誌の撮影なんですか!?」
態度を豹変させたスタッフたちが目の色を変えて一夏の躰に群がっていく。一夏は決死の抵抗を試みるも圧倒的な数の暴力は個人の抵抗を易々と鎮圧する。AVの冒頭シーンみたいな光景に渚子はその顔を悦に歪めた。
「ほらぁ織斑くん暴れないでぇ」
「ちょっとホントにやめっ…」
「他の人は脱いだよぉ!?グラビア撮影なんて取材じゃ当たり前なんだから!」
「いや、けど…!」
「織斑くんのお姉さんも現役の頃は脱いだんだよぉ!!」
渚子のその言葉を聞いて押し黙ってしまう一夏。渚子は嘘は言ってはいない。まだ千冬が現役だった頃、マスメディアに彼女は引っ張りだこであった。
テレビや雑誌の取材はもちろんのこと、バラエティ番組に出演したり、ドラ〇もんといった子供向け番組に本人役で声優としてゲスト出演したり。その中にはこういったグラビア撮影も存在した。
再度言うが渚子は別に嘘は言ってはいない。確かに千冬は過去にグラビアを出している、まあ健全なものだったが。少なくとも今一夏が撮らされようとしているような内容ではないのだが。
「ち、千冬姉も…」
「そうだよぉ…ISパイロットはみーんな脱いできたんだよぉ…!」
「だから織斑くんも脱がなきゃ!」
「そうそう…」
「これから将来ISに関わっていくのならココで脱いだ方が後々、色々、得だよぉ…?」
言葉巧みに一夏本人から自主的に脱ぐ方向にもっていく記者たち。報道の最前線にその身を置く百戦錬磨の彼女らマスコミにとって、世間知らずの男子高校生を脱がすなぞ朝飯前である。
「……そ、そういうことなら…ちょっとだけ」
一夏のその言葉を聞いて記者たちはゲスい笑みを浮かべる、妙齢の女たちが歳若い少年を囲んでほくそ笑むその光景はまさにアフリカのサバンナの真ん中で親元からはぐれた小鹿を襲うハイエナの群れようであった。
「織斑先生本当によかったんですか?」
「…何がだ?」
一夏を学園から送り出した千冬は真耶から呼び止められていた。神妙な面持ちの真耶と千冬。でもおっぱいはぶるんと揺れる、なんて凄まじい乳なのだ。
「今回の一夏くんの取材の件、相手は "あの"インフィニット・ストライプスですよ?」
「大丈夫だ、それに今編集部にいる人材の大半はウチの学園のOGたちだ。心配はいらないさ」
「……」
「……」
心配はいらないと千冬も断言したとはいえ二人の間になんとも言えない微妙な空気が漂う。あの頃のインフィニット・ストライプスを知る二人であるが故の心配だった。
IS専門情報誌『インフィニット・ストライプス』は今でこそ健全な情報誌ではあるが嘗て創刊したばかりの頃は情報誌とは名ばかりのゲスい3流ゴシップ誌であった。あの実話ナッ〇ルズや実装タ〇ー辺りと同列に扱われていた程である。
そしてその手の雑誌において一際読者の関心を集めるのは紙面を彩る麗しい容姿と魅惑のスタイルを持つ若い女性のグラビアである。嘗て現役時代の二人も当時の編集部の面々に言葉巧みに誘導させられ脱がされた。血走ったカメラマンと記者のあの下卑た視線は二人にとって今でも忘れられない悪夢の光景だった。
千冬と真耶、二人のグラビアが載った号は雑誌が売れないとされるこの現代に於いて記録的な売上を飛ばし、特に真耶はその他者を圧倒するそのデカいおっぱい故か編集部から再度単独でのグラビア撮影のオファーがあったが真耶本人が全力でそれを拒否し、何より当時IS関連事業健全化を推し進めていた政治家やら役員やら官僚やらその他大手メディアの所謂『偉い人』たちの怒りを買ったことにより『インフィニット・ストライプス』一度廃刊され、当時の編集部全員を総解雇の上再度創刊した。
IS業界黎明期の恥部として、今なお密かに語り継がれる当時の悪行の数々。しかしそれは既に清算された過去の出来事だ。そんなこともあったねと酒の席で精々話される程度の昔話だ。
そんな忌まわしき過去が今まさに織斑一夏という起爆剤を得て甦ろうといることを彼女らは知る由もなかった。
「わんわんっ!織斑くんあそぼぉ!」
「くっ…」
ソファの上で一夏はその成熟しきる前の若く美しい、しなやかな裸体をカメラに晒していた。着ていた上着とシャツと靴下を脱がされ黒いスラックスのみの状態で一夏は背後から回り込んだ記者に胸を揉まれながら撮影をされていた。第三者から見られでもしたらもう言い逃れの出来ないアレな光景だった。
記者たちは何をとち狂ったか知らないが突然懐から犬の耳がくっ付いたカチューシャを取り出すとそれを自身の頭に付けて撮影をし始めた。
「わんわん!」
「ちょっと……なんで、犬」
犬どもは一夏の躰にまとわりつく様に手を這わせる、揉み、なぞり、撫でる。その光景を少し離れた所で渚子がカメラを回す。
「ご主人様ぁ…遊んでくださいだワン」
「えっと、なんのキャラですかそれ」
「キャラじゃないワン!ご主人様ぁ…」
記者たちのあまりの変化についていけない一夏は躰をよじらせ健気な抵抗を続ける。しかし記者、もとい犬の手はそんな抵抗など無意味とばかりに一夏の抵抗を掻い潜り、懐に潜り込んで来る。
一夏が躰をよじらせるのも反応していると犬たちは思い込み、その興奮を更に煽り立てる。
「わんわん!ご主人タマぁ…」
「きっしょ」
一夏の口から思わず本音が漏れる、実際気持ち悪い。作者だって内心自分がこんなキモい文書を書けるのかとスマホを持つ手に鳥肌を立てている。
「ご主人様きしょいだなんて言っちゃダメだワン、傷つくワン」
「えーんえーんだワン」
「………」
言葉とは真逆に全く傷ついたような素振りではない犬たち。一夏もいくら鈍感とはいえ流石に今自分が犬たちから受けているこの行為が取材の範疇を逸脱している事に気付き始めた。まったくなんて鈍感で可愛いんだ一夏は。鈍感でえっちなボディの持ち主なんて、無知シチュが捗りそうな男である。
「あの、ホントに帰りま…」
一夏が本気で群がる犬どもを振りほどこうとしたその時だった、一夏のジャケットのポケットからスマホの着信音がスタジオに響いたのは。
「織斑くんダメだよー、スマホは電源を切るかマナーモードにしないと」
「あ、ハイ」
スマホの着信音が記者たちを現実に引き戻したのかは定かではないが、突然素に戻った元犬こと記者。キャラの振れ幅に一夏は困惑しながらスマホを手に取る、画面には『千冬姉』の文字が。
内心弟の事が心配で仕方なかった千冬は居ても経っても居られずに思わず電話をしたのだった。
「お姉さんから?」
「は…はい」
「いいよいいよ出ても、私たち何もしないからさ」
一夏は乱れた着衣を整えながらスマホの液晶画面に指を滑らせ千冬からの電話に出る。
『もしもし?私だ。一夏、今電話大丈夫か?取材は終わったか?』
「千冬姉、うん。今取材中。記者の人達と今撮影をしているところで………」
一夏が通話越しに姉へと現状を報告しようとしたその時だった。一夏の胸の双蕾に記者の指が添えられたのは。
「ぁんッ!?」
予想できなかった所への突然の刺激に艶やかな喘ぎを零す一夏。してやったりといった記者は一夏の躰の予想以上の感度の良さに、再度舌なめずりをする。
快楽のスイッチを強制的にONにされた一夏の媚躰に、再び盛る犬たちの腕が伸びる。
『お、おい!?どうした一夏!?』
スマホ越しに突如響いた、弟の艶めいた媚声に驚く千冬。遂に『幻視』が視覚だけでなく聴覚にまで作用し始めたかと彼女は混乱する。
「あっ…だ、大丈夫っ…い、犬が…!」
『犬?犬がなんだって?』
(だ、ダメだ!千冬姉にこれ以上心配はかけられねぇ…!)
姉想いの心優しい一夏は千冬への言い訳を媚感に悶えながら、なんとか取り繕おうと快楽に抗おうとする。理性と淫性の狭間で揺らぐその表情は犬たちの獣欲を更に煽り立てた。
(犬…?犬とは一体…)
千冬はスマホ越しの弟の口から発せられた『犬』という単語を反芻する。犬、そう。あの犬。有史以前から人間のパートナーとして共生してきた存在、犬。可愛い、犬。
(そうか………そういう事か!)
千冬の脳内に浮かぶ、ビジョン。それは愛する弟が草原で毛並みの良い、人懐っこい犬と戯れる情景。大草原で無邪気に犬と遊ぶ一夏は可愛い。なんて可愛いんだ我が弟は。
『あ、あぁ!そういう事か、頑張れよ一夏!』
そう言うと一夏との通話を切る千冬。千冬は今一夏は犬と戯れるイメージビジュアル的な何か写真を撮影していると思い込んでしまい、弟の危機を見過ごしてしまう形となった。
「ふふっ…犬かぁ…」
可愛らしい犬たちと戯れる我が弟の写真が載った雑誌はきっと良く売れるはず、増版もされる筈だ。プレミアも付いて高値で取引されるに違いない。そんな呑気な事を考えながら千冬は学園の窓の手すりに肘をつき、慣れない取材と撮影に奮闘する弟の姿を夢想した。
「ハァ……ハァ……ッあ、はァ…ッ」
一夏の手から、通話を終えたスマホが滑り落ちる。腕を伝う様に落ちたそれはソファの表面に軽くバウンドするとそのままスタジオの床へと堕ちていった。
「よぉく我慢できたワンご主人様ぁ…」
ソファ越しに一夏の背後に回り込んだ記者、もとい犬が一夏の首筋から頬、耳元までを舐め回す。鼻先を当てながらやるその様は本当に犬のそれだ。胸の蕾を刺激するのも忘れない。乳首をまるで指先でほじる様な愛撫に身を捩らせて耐える一夏。
「ぁ…!?」
ふと、一夏の胸先をほじる指が不意に離れた。突然の淫撫の中断に困惑の声を上げる一夏。それまで犬の指先にほじられ、温められた胸先が程よく空調の効いた外気に触れ、一夏の乳首は不覚にもその身を起立させる。
「ワンワンっご主人様ぁ…おやつの時間だワン!」
「おや、え………は?」
一夏が淫撫に悶える躰を気だるく揺らし、スタジオの壁に取り付けられた時計に目をやると、時計の針は3時を指していた。
おやつ、デザート。その類のものはスタジオには置かれてはいない。犬たちに向き直る一夏、眼前には犬耳を頭に付けた頭のおかしな女が二匹。涎を垂らしなが迫るそれはゾンビさながらの姿だ。
「いただきますだワァン!!!!」
そんな二匹が声高らかに吠える。いただきますと。何を食らうというのか。迫る、犬。顔を前面に突き出し、一夏に迫る。口を開き、舌をまるで馬上槍の様に突き出し、狙う。
一夏の乳首を。
それから先の事を一夏はよく覚えてない。どうやって帰路についたか、学園で待つクラスメイトや千冬姉にどんな顔をしておかえりと言ったか。はっきりと言えるのはただ一つ。
一夏の学園生活は更なる混沌へと向かうという事だ。
初めての方も、そうではない方も、お久しぶりです。生存報告も兼ねて投稿しました。
乳首責めって、良いよね。