織斑一夏はIS学園のセックスシンボルだ   作:桃次郎

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性教育はスマートフォンと共に


インフィニット・マタニティー(後編)

阿鼻叫喚。そう呼ぶに相応しい混乱が一年一組を包み込んだ。織斑千冬という統治者不在のこの教室の混乱を止められるものは誰もおらず、生徒達は混乱という名の濁流にただ呑まれるだけであった。

 

 

 

織斑一夏、懐妊。

 

 

 

文字に起こすだけでも正気を疑うこの暴挙。教壇にて勝ち誇るかのような笑みを浮かべるラウラは、隣で呆然と立ちすくむ一夏に視線をやる。

 

「嫁」

 

一夏は、ラウラの呼びかけに反応しなかった、いや、この場合は出来なかったという表現が正しいだろう。

 

妊娠…?俺が、妊娠…?

 

未だ一夏の脳内は混乱の極みにあり、自身の妊娠という理解不能な事情を必死に理解しようと外界からのあらゆる接触をシャットダウンしている状態だった。

 

 

 

一夏の思考は彼岸まで飛翔していた。

 

恒河沙まで向かったそれは

 

阿僧祇を突き抜け

 

那由多の彼方へと飛び

 

不可思議の先を超え

 

無量大数に至った辺りでブーメランの如く戻って来た。

 

 

 

「あ…」

 

思考をようやく現実へと引き戻す事に成功した一夏、先程のラウラの言葉への反応をここでようやく示した。

 

「どうした嫁、言葉が出ない程嬉しいのか!」

 

私も嬉しいぞと無邪気に喜びを全身で表現するラウラ、一夏は無言で、そんな様子のラウラの頭頂部に手を添えた、ラウラは何事かと思いながらこれを受け入れた。そして…

 

 

 

「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」

 

 

 

手をグーに変え思いっきり振り下ろす一夏、ラウラは突然の一夏の攻撃に対処することが出来ず、その場で失神する。

倒れ伏すラウラ、一夏の叫びに冷静さ取り戻したクラスメイト達。

 

「…」

 

平常よりやや遅れて教室へと到着した千冬と真耶。二人は事態をうまく飲み込めず教室のドアで立ち尽くしていた。

 

 

 

自身の妊娠を知らされた一夏が示した反応は、喜びでも、悲しみでもなく、拒絶だった。

 

 

 

そりゃそうだ。

 

 

 

 

 

 

「そ、それで…?ラウラが?お前が妊娠したと…?」

 

騒ぎの顛末を千冬に説明する一夏とクラスメイトたち。千冬は肩を震わせ笑い堪えていた、もう限界そうだ。既に千冬の隣で真耶はしゃがみこんで声を必死に押し殺して笑っている。

 

「性教育は…軍がすでに、施していると、思っていたのだが…」

 

千冬は息も絶え絶えになりながらも、考えを纏めていく。

 

「つまり、ラウラは…子供がどうやったら出来るかというのを全く知らなかったというわけか」

 

元から世間知らずなところがあるとは思っていたが、まさかこれ程とはと、生徒達は未だ突っ伏して意識が戻らないラウラを見下ろしながら考えた。

 

「ねえ、みんな」

 

誰かが呟く、その声は大きくはないが不思議と教室全体に響く、通る声だった。

 

「折角の機会だからさ、ボーデヴィッヒさんに教えてあげようよ」

 

「うん」

 

「性教育」

 

一夏除いたクラスメイトたち全員が、皆一同に頷く。半ば使命感のような意思が、生徒達全員に伝わっていく。

 

教えてやろうではないか、性の穢れを知らずに育ったこの清らかな娘に、性の神秘を。

教えてやろうではないか、戦う術しか知らぬこの哀れな娘に、性の素晴らしさを。

 

「織斑くん」

 

「ん、どうした?」

 

「私たちね、これからボーデヴィッヒさんに教えてあげなきゃいけない事があるの、だから少しの間だけ、教室から離れてもらいたいの」

 

「お、おう…?」

 

クラスメイトたちの何処か熱の篭った視線を一身に浴びる一夏、言いようのない圧力に押され、一夏は教室を去る。

一方千冬と真耶は…

 

「素晴らしい友情ですねっ」

 

「そうだな」

 

クラスメイトの絆に感動する真耶と、冷めた目で目の前の茶番を見る千冬。千冬は寝不足だった、馬鹿共への説教で睡眠時間は削られ、精神は摩耗していた。

 

「よし、お前達、この件に関してはお前達にまかせるぞ」

 

千冬はこの場から逃げる事を決めたのだ、トラブルの解決を生徒へ丸投げすることにより、精神の安定を図ったのだ。

無論これが平常の千冬ならばこんな事はしない。しかし、千冬もまた一人の血の通った人間だ。限界はすぐそこまで来ていた。

 

「よーし真耶!行くぞー!」

 

「え?あ、はい…」

 

真耶の手を引きながら教室を去る千冬。その目に光はない、織斑千冬、無敵の戦乙女、無敗の女が初めて背を向け後退した瞬間だった。

 

 

 

 

「O Gott!!! O Gott!!!! O Gott!!!!!」

 

クラスメイトに机の上へと拘束され転がされたラウラは今、生涯で初めてアダルトビデオという物を見せられていた。

 

「Warum Gott!?!!!!???」

 

ラウラを取り囲むスマホの液晶画面、そこにはハードなプレイを交わす男女。ラウラは髪を振り乱し半狂乱になるラウラ、身体を拘束され目をつぶる事さえ許されず、スマホの液晶画面を見ることを強制されるラウラ。

 

「オラオラどうしたラウラちゃんよぉ」

 

「見ろやコラァ!これが現実だ!!」

 

「Es ist eine Lüge…Es ist eine Lüge……!!!!」

 

クラスメイトがラウラに対して行う”教育”はまさにスパルタだった。かつてドイツにおいて千冬の厳しい訓練を受けたラウラでさえ逃げ出したくなる程の、”教育”。

教材はネットですぐに拾えた、Xvideos、REDTUBE、FC2、etc………

 

全世界の男の画面の向こうの”お供”は今、凶器と化してラウラを追い詰めた。

 

「ホラホラもっと見てホラ」

 

「Squid the Nazi woman, it'll drop to sow!」

 

「よく見ろチビ助、これがSEXだ、子を成す為の神聖な儀式だ」

 

「Neinooooooooooooooooo!!!!!!!!!!」

 

ラウラは遂に気を失った、その様はまるで強姦魔に純潔を奪われた哀れな娘のよう。

 

クラスメイト達はそんなラウラの様子に満足気だ、自分たちの仕事ぶりを自画自賛する生徒達。

狂気が再び一年一組を包みつつあった。あぁ、千冬、早く戻って来い。この状況を収束できるのはお前だけだ。戻って来い。

 

 

 

 

「ラウラのやつ大丈夫かなぁ」

 

一夏は教室を去った後、屋上で風景を眺めながら時間を潰していた。本日は快晴だった、初夏の爽やかな日差しがIS学園の校舎を照らす。

 

「織斑、ここに居たか」

 

「あれ?千冬姉」

 

一夏の後を追い、屋上までやって来た千冬と真耶。雲一つない青空が二人を出迎えた。

 

「ラウラはどうなったんだ?」

 

「ラウラは…アイツらに任せた」

 

「そっか…」

 

「風が気持ちいいですねー」

 

涼しい風が三人の頬を優しく撫でた、穏やかな天気は教室内に広がる地獄のことを暫し忘れさせた。

 

「しかしラウラもとんでもない事言うよなぁ」

 

「あぁ…でもアイツなら大丈夫さ、今頃きっちりと教えてもらっているだろうからな」

 

「ラウラも困ったヤツだよなぁ俺が赤ちゃんなんて産める訳がないのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤ちゃんはコウノトリが運んで来るんだろ?千冬姉」

 

 

 

 

 

 

 

 

千冬の頭痛の種が、また一つ増えた瞬間だった。




一夏って性欲なさそう
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