ガンダムSEED DESTINY -レクイエムは誰が為に-   作:西のファントム

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PHASE-03「運命と出会う」

ガルナハン基地を攻略したミネルバは、美しい港町"ディオキア"にあるザフト軍基地へと到着した。

 

上陸許可を得るや否や、クルーたちは一目散に基地の一角に集まった。

それというのも、この日ディオキア基地でラクス・クラインの慰問コンサートが行われるからだった。

 

「みーなさぁーん!ラクス・クラインでぇーすっ!」

 

プラントきっての歌姫の登場に殆どの兵士たちが熱狂する中、彼女の正体を知るアスランだけは、コンサートを楽しむどころではなく、そわそわと身をよじっていた。

 

(天真爛漫なキャラクター性も、扇情的な衣装も、以前のラクスとは明らかに違うものだ。もし別人だとバレたら、議長はどうするつもりなんだろうか…)

 

コンサートが終わる頃には、アスランの制服は嫌な汗でべっとりと濡れていた。

 

***

 

予備の制服に着替えたアスランは、デュランダルからの要請を受け、シンとルナマリアを連れ立って、ザフト軍基地の宿舎にあるテラスを訪れた。

 

「失礼します」

 

「久しぶりだね、アスラン」

 

デュランダルは椅子から立ち上がり、アスランたちを出迎えた。

先にテーブルについていたレイとタリアを含めれば、ミネルバの中心人物が一堂に会したことになる。

 

「それから、君たちは…」

 

「ルナマリア・ホークであります」

 

「シン・アスカです!」

 

「ああ、君のことはよく憶えているよ、シン」

 

「え…?」

 

思いがけない言葉に目を丸くするシンを見て、デュランダルは微笑んだ。

 

「君の活躍の知らせは、私の元にも届いている。特にガルナハンでは、大活躍だったそうだね」

 

「い、いえ…あれはザラ隊長の作戦が凄かっただけで…」

 

インパルスが作戦の核を担ったのは事実だが、作戦を立てたのはアスランだし、レイやルナマリアだって敵の大群を押さえてくれていた。

自分だけがこんな賛辞を受けていいのだろうか。

そんなシンの気持ちを察してか、アスランがシンの肩を叩いて言った。

 

「あの役目は、おまえだからこそ任せることができたんだ。誇っていい」

 

デュランダルも頷き、改めてシンの活躍を褒め称えた。

 

「実践はアーモリーワンが初めてだったというのに、本当に大したものだよ。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

デュランダルとアスランから手放しの賛辞を受け、シンは小躍りしそうになるのを必死に堪えていた。

その後、デュランダルの話は今現在の戦況の説明へと向かい、シンはデュランダルにひとつの問いを投げかけられる。

 

「シン、なぜ戦争が無くならないのか…考えてみたことはあるかな?」

 

「え…それは…ユニウスセブンのときみたいなやつらや、ブルーコスモスみたいな自分勝手な連中がいるから…」

 

「ふむ」

 

「…違いますか?」

 

シンは、自分の答えにいまひとつ自信を持てずにいた。

今までこんな根源的なことを訊かれたこともなかったし、考えてもみなかったのだ。

 

「もちろん、それもある。憎いとか怖いとか、自分と違う考えを許せないとか、そういった理由で戦いが起こることも少なくない。だが…それよりも、もっと救いようのない理由が、戦争にはあるのだよ」

 

「救いようのない理由…で、ありますか?」

 

デュランダルは静かに頷き、話を続けた。

 

「戦争の中では、MSを中心に多くの兵器が消費される。そして、次から次へとまた新しい兵器が造られる…そのひとつひとつの値段を考えてみてくれたまえ」

 

「…それって!?」

 

「そう、戦争を産業と考え、利用する者たちがいるのだよ。死の商人"ロゴス"。ブルーコスモスの母体でもある」

 

シンは愕然とした。金儲けのために何千、何万という人間の血を貪るなど、想像を超えた狂気だ。

憎しみや怖れから戦争をするという方が、まだ理解できるというものだ。

 

「今回の戦争の裏にも、間違いなく彼らがいるだろう。なんとかできればいいのだがね…」

 

***

 

デュランダルの計らいで、ミネルバのパイロットたちはそのままザフト軍宿舎に一泊することとなった。

軍の宿舎といっても、内装は最高級ホテルにも引けをとらないほど豪華なものだ。

ルナマリアは年相応にはしゃいでいたが、シンはそんな気分にはなれなかった。

デュランダルの口から語られた、戦争を裏で操る存在ロゴス。それがシンの心に暗く影を落としていた。

死の商人ロゴス。そんな奴らのくだらない金儲けのために妹と両親が殺されたのだと思うと、怒りで全身の血が沸騰しそうなほどだった。

 

不意にドアを叩く音が鳴り、シンは我に返った。時計に目をやると、時刻は午後七時を回っていた。

レイとルナマリアあたりが夕食の誘いにでも来たのだろうかと思い、シンはドアを開けた。

 

「あれ、隊長…?」

 

「シ、シン!説明は後でする!とにかく匿ってくれ!!」

 

返事を待たず、シンを押しのけて部屋へと侵入したアスランは、そのまま地面を這い、ベッドの下へと潜り込んでいく。

 

「ちょっと!なにやってんですか、あんたは!」

 

「説明は後だと言った!誰か来たら、俺の居場所は知らないと言ってくれ!」

 

アスランはすっかりベッドの下に隠れてしまい、シンは状況を飲み込めずに茫然とするほかなかった。

 

「…いつまでそうやってる気なんです?ここに誰か来るとしたら、レイかルナぐらいのもんですよ。まさか、二人から逃げてるわけでもないでしょう」

 

「油断するなシン!それと、俺はここにいないものだと思え!」

 

「はあ」

 

上司の奇行は放っておいて、食事にでも行こうかとドアノブに手を伸ばしたとき、再びドアがノックされた。

 

「今開けます。って、え…?」

 

「こんにちは、兵士さん☆」

 

訪ねてきたのは、思いがけない人物だった。

愛らしい桃色の髪、星形の髪飾り、艶めかしいハイレグの衣装。プラントの歌姫、ラクス・クラインその人である。

とはいえ、オーブの出身故にプラントの有名人に疎いシンが「どなたでしたっけ?」と尋ねたのも、仕方のないことだった。

 

「あなた、私のこと知らないの!?嘘でしょう!?」

 

信じられない、と不満気に頬を膨らませる少女に、シンは戸惑いつつ問いかける。

 

「それで、俺に…あーいや、自分になにか用でありますか?」

 

「あら、わたくしったら…忘れるところでしたわ。あなた、ミネルバの方でしょう?アスランがどこにいったか、ご存知ありませんか?」

 

ああ、なるほど。うちの隊長は、この少女から逃げ回っていたのだ。

シンはようやく、この異様な状況のワケを理解した。

 

「自分は知らないであります」

 

「そう、それは残念ですわ」

 

「用件は以上でありますか?自分はお腹が空いたので、失礼するであります」

 

「うーん…」

 

「まだ、なにか?」

 

「じゃあ、あなたでいいわ」

 

少女は悪戯っぽく笑い、シンの袖を引っ張って、ずんずんと歩き始めた。

 

「え、ちょっと!?」

 

「お腹が空いてるんでしょう?席はもうとってあるから」

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