IS 最強は最強です   作:ネコ削ぎ

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改めて4

 入学式は新しい学生生活のスタートを飾る儀式であるのだが、IS学園には入学式がない。

 三年間という短い時間の中で一般教養とISの専門知識を習得させなければならない都合上、入学式の時間すら惜しいのだ。

 月終昨と新には関係ない話だけど。

 二人としてはIS学園に入学式がないことも無事に合格できたこともどうでもよかったりする。そもそも受かることは分かっていた。勉強できるし。

 問題は楽しみにしていた織斑千冬との試合がとある事態によって中止になったことだ。昨が運命を呪って憤死しそうになるほどの衝撃だったのを覚えている。

 そして昨と新はせっかくだからと、試験を中止にさせた原因である織斑一夏の顔でも直で拝んであげましょうか、と一年一組へと向かうことにした。

 

「ほう。ほうほうほう。あれが織斑一夏くんですか」

「ふむ。ふむふむふむ。あれが織斑一夏さんですか」

 

 IS学園の一学年の教室のある廊下で、昨と新は数多の女子たちと同じように世界で初めて発見されたISを起動させられる男子を見に来ていた。

 評価。イケメンでイケメンでイケメン。

 顔は十分に整っている。カッコいい系の顔をしているし、背は高い方だし、スポーツでもやっていたのか体型も悪くはない。

 優良のハンコを押してもいい。

 でも好みじゃありませんね。

 昨の好みは男子男子している男子ではなく男子男子していない男子。ちょっと具体的に言うと地元の色白モヤシっ子の彼だ。それもお互いに意識してたりする。

 外面はグッドな一夏だが果たして中身はどうか。女子校に放り込まれたイケメン男子が中身までイケメンの確率は何パーセントある。

 結論。一目見て分かるわけがない。

 当たり前の話だ。

 昨は一人頷く。

 それにしても多い。

 周りを見渡せば廊下が女子で詰まっている。

 目当ては一夏だ。

 既に織斑千冬の弟であると情報が巡り巡っているのだから、世界最強の弟と世界初のISを起動させる男子の二つの称号を持つ一夏を見に来るのは必然。

 そういう意味では昨も新も周りと全く同じだ。

 違いがあるとすれば熱がない。

 周りは日本に初めてやってきたパンダを見ているかのように一挙一動に視線が向かっている。

 対して昨と新は既に飽き飽きしていた。関心もゼロに近い。

 

「残念です。あの人の弟さんだから期待したんですけど。違うみたいです」

「ええ。びびっと来ません。完全に違いますね」

「……一組は織斑さんが担任ですよ」

「すごく羨ましいですね。私たち三組なんですけど。こちらの担任なんて新田かんろなんですけど。甘そうな名前なんですけど。甘露煮ですか」

「言わないであげてくださいよ。言わぬが花です。沈黙は金なんです。取らぬ狸の皮算用です」

「昨。ちょっと違います」

「き、気にしない気にしない」

 

 じと目で見てくる新から昨は顔を背ける。

 

「ポニーテールの子が抜け駆けした」

「こっちくるわ」

 

 周りが騒がしくなる。

 見れば、胸に凶器を仕込んだポニーテールの女子が一夏に声をかけて二人して廊下へとやってくる。

 廊下へと出た一夏とポニーテール女子を囲むようにして距離を開ける見物客。見方を変えればこれから決闘でも始まりそうだと昨はうずうずした。

 

「ひ、久しぶりだな」

 

 緊張している。

 ポニーテール女子はなんと話せばいいのか口を何度か開閉させて、ようやく絞り出した言葉はありきたりなものだった。

 残念。決闘じゃありませんね。

 そんなわけないのにちょっと期待していた昨は、自分の考えに苦笑する。

 

「そういえば、剣道大会優勝おめでとう」

 

 一夏がしれっと褒めて、ポニーテール女子が顔を真っ赤にさせて吠える。

 

「なんで新聞など読んでいる!!」

 

 理不尽に怒るポニーテール女子。

 それだけで昨は察した。

 きっと新聞に嫌な思い出があるのだろうと。

 冗談。目の前のポニーテールが恋心を一夏に対して抱いている。

 しかし、素直になれず攻撃的な言葉でしか反応できないのだろう。

 恋する乙女は大変なのだ。

 ちなみに昨も恋する乙女。しかし、ストレートにアタックをしているので誤解は生まれていない。

 

「すげーな。どんな返しだよ」

 

 こそこそとあれやこれやと二人の関係について想像している女子に混ざって、一人の女子が呆れたように呟いていた。

 同感、と昨は内心で思った。あれでは伝わらないですよ。

 

「おほん。変わらないようで何よりだ一夏」

「ああ。箒も何も変わってないな」

「……か、変わって……ない? 変わってないだと」

 

 昨も新も顔を手で覆った。

 それは悪手だ。

 恋する女子にそれを言っちゃ不味い。

 教室から顔を出していた女子もあちゃーと頭を掻きむしっている。

 ポニーテールな箒は小学校の時に離れ離れになって以来の一夏との再会。高校生にもなって身体は女らしくなり、特に胸の成長は著しいのだが、まさかの変わってない発言。

 もしも同じようなシチュエーションだったら。

 イフを想像した昨は衝撃を受けて崩れ落ちそうになった。新が支えてくれたので安心。

 

「昨……案の定自分に当てはめましたね」

「ごめん。ショックで立ち直れなさそう」

「あくまで想像の話でしょう。現実見て。昨の些細な変化にも気がつける素敵な人でしょう。恋人のいない私への当てつけですかね?」

「それも想像にお任せします」

「イラっ!!」

「そういう新も入学前に良い仲になった人いませんでしたか」

「まだなってません。まだ友達ステージ」

「とか言って。昨日はお楽しみでしたね」

「……はい。とても楽しかったです」

「リア充いえーい」

「リア充イエーイ」

 

 双子ハイタッチ。

 目の前で女心破砕している男子と破砕されて怒りに顔を真っ赤にしている女子は無視。

 あっちも無視。そもそも双子のリア充に気がついていない。気がついているのは、教室から顔を出している鏡ナギ一人だけだった。気づいた瞬間に舌打ちしたのは内緒だ。実は昨にバレているのも内緒だ。

 

「やっぱ知り合いがいてくれると安心するな」

「……そ、そうか。知り合いか。知り合いなのか」

 

 一夏としては純粋な気持ちで話しているのだけど、結果は鋭い刃物となって箒を傷つけていく。

 なぜか今のシチュエーションを自分に当てはめて崩れ落ちそうになる昨。好きな人に知り合い程度の認識しか持たれないことが辛い。辛くて、今すぐ直接あって自分がどう思われているか聞きたくなった。

 

「昨。勝手に傷ついてないで戻りましょう。そろそろ予鈴が鳴りますよ」

「うん。後で電話します。声が聴きたくなりました」

「はいはい分かりましたから戻りましょう」

 

 その後、昨は恋人と短くも幸せな電話タイムを堪能したのは言うに及ばず。

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