眠り姫と過ごす日々   作:みかん箱@黒歴史

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ずっと寝てる少女とそのお世話をする少年のいつも通りの日です。
分かりにくいところもあると思いますが生暖かい目で見守って頂けると…。


いつも通りの日

今日もまた、一日が終わろうとしている。

昨日とほとんど変化はない。

今俺の前でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている少女も、やはり変わらない。

「おい、起きろ。もう終礼終わったぞ。」

そうやって声をかけても、揺すっても、目の前の少女は起きるそぶりすら見せない。

まぁその程度で起きるなら普段から苦労しない。いつも通りの彼女に呆れ半分安心半分。

きっと明日も晴れだろう。

そんな呑気なことを考えながら、自分と彼女二人分の荷物を纏め、机に引っ付いている少女を引き剥がして立たせる。

そこまでされても気持ちよさそうに寝息を立てている少女に一種感動すら覚える。

溜息を一つ吐いて少女を背負う。

体重は軽い方な彼女だが、流石に全体重をかけられると重い。さらに二人分の荷物を持っている訳で…正直辛い…が、まぁいつも通り。

もうかれこれ小学生の頃から続いているこの光景。最初の頃はヒヤかす連中も多かったが…もう今では彼女の保護者として扱われている。

何かあるたびに彼女の回収に向かわされるので現状は現状で厄介だが…。

 

「はぁ、たまには自分で起きてくれないかな…。」

 

自然と口に出るボヤき…。

 

「…ん…起きた。」

 

背中から反応が返ってきた。

 

「…めずらしいな、おはよう夢乃。」

 

前言撤回だ、きっと明日は雨だろう。

それほどまでに、彼女が起きるというのは珍しい事だ。

 

「ん…おはよ…こーちゃん。」

 

彼女…夢乃はいかにも寝起きと言った声で返事をする。

 

「起きたなら降ろすぞ、荷物は持ってやるから自分で歩け。」

「おやすみ…。」

「おい⁉︎」

 

どうやら歩くつもりは無いらしい。

「…。」

そして既に寝息を立て始めた。

なんて奴だ…。

「はぁ…。」

珍しく楽できると思ったんだが…。そこで甘やかしてしまう俺も俺なんだろうなぁ…。

結局いつも通りになった放課後。

廊下に出ようとしたところで、またもや珍しい事が起こった。

 

「お、康助。」

「健一?忘れ物でもしたのか?」

 

ドアを開けた先に居た少年…古田健一。

中学時代からの友人で、それなりに仲は良い。人見知りの夢乃が珍しく懐いている人間の一人だ。

しかし、彼は終礼後はすぐ帰るためこの時間まで残っていることはまず無い。

 

「う〜ん、忘れ物…とは違うかな?探し物?」

「いや、訊かれても…。」

 

彼は基本しっかりしているのだが行動が要領を得ない時も多い。

「探し物なら手伝おうか?」

そう提案するが。

 

「いや、大丈夫だよ。そんな大したものじゃ無いから。それに早く夢乃ちゃん連れて返ってあげな?」

 

まぁ、確かに背中に夢乃がいるままでは手伝うにも手伝えない。むしろ邪魔になりそうだ。

 

「まぁ、そうだな…。それじゃあ帰るけどあんま遅くならないようにな?」

 

まるで教師みたいな言い方になってしまった。

 

「ははは、大丈夫だよ、また明日な。」

「ああ、また明日。」

 

そう言って廊下に出る。

窓から差し込む夕日が廊下を照らしている…俺はなんとなくこの光景が好きだ。

ただ、ゆっくり景色に浸るには荷物が重すぎる。いつかこの景色をゆっくりと過ごせる日が来ないだろうか。

夢乃が振り落とされない程度の早足で歩く。

俺たちの教室は三階にあるため、わざわざ階段を下りなければならない。正直面倒くさい。

エレベーターも一応あるのだが先生の許可無しに使用する事ができない。

そして滅多なことでは許可はもらえない。

こんな毎日大荷物の人間でも怪我してから出直してこいと突っぱねられた。ひどい話だ。

こんな生活を毎日送っていれば嫌でも体力も筋肉もつく。

いつも通りに階段を下りて昇降口に到着。

そしてまた面倒な作業。

まず二人分の靴を出して夢乃を降ろす。

適当な背もたれに寄っかからせて靴を履かせる。

さっき寝直したばかりだと言うのにここまで動かされてもやっぱり起きない。

流石は夢乃だと思う。校内中に知れ渡る眠り姫のあだ名は伊達じゃない。

靴を履かせ終わったら背負い直して玄関を出る。

出てすぐ近くのグラウンド。

野球部が今日も練習に精を出している。

そんな様子を傍目に見ながら校門へと歩く。

幸いなことに高校から家までそこまで離れていない。まあそう言う高校を選んだのだが。

ちなみに夢乃の家は俺の家の向かい。まぁ、だからこそ毎日運んでやれる訳だが…。

多量なお荷物と共に歩きながら、ぼんやりと夕日を眺める。

親同士は高校時代からの友人同士で、度々一緒にお茶をしている。

そのおかげと言っていいのかせいと言うのか…俺たちは昔から一緒に居ることが多かった。でも昔の俺は彼女のことが苦手だったように思う。

嫌いとかではない。苦手だった。

今ほどずっと寝ていた訳ではなく、むしろ昔はそれなりに元気だった。

ただ、その元気っぷりに反比例して口数だけは今と変わらずとても少くて、当時の俺にとっては恐怖の対象、不気味な未知だったのだ。

捕まえた昆虫を手に持ったまま無表情でにじり寄ってくる彼女は本当に怖かった。本当に。おかげで今でも虫は悲鳴を上げて飛び退くほど嫌いだ。まぁ昔から好きでは無かったが…。

ともかく…俺がこの少女の世話をしている姿は、幼少のあの頃からは全く想像できない。

そして俺が今、彼女に抱いている想いもまた、想像出来ないものだ。

幼馴染みだった。

恐怖の対象だった。

いつの日にか放っておけない対象になった。

いつの日にか親友になった。

そしてあの日に…

 

「…こーちゃん?…どした?…ボッとして。」

 

いつの間にか起きていた夢乃に呼びかけられて我に帰る。

いつの間にか立ち止まってしまっていた。

 

「ああ、いや、なんでもない。」

 

そう言って俺は再び歩き出す。

沈む夕日を見ていると、どうしても思い出す。

俺が彼女に寄り添えるようになったあの日のことを。

ああ、いつも通りだ。

少しだけ違う。でも、平穏で変わらない日だった。

少し感傷に浸っていたが、そのぐらい。

“あの日”は過去だ。“あの日”から、暫く続いたあの大変な日々も、何もかも全部過ぎた話だ。

今俺たちは、平穏に生きている。それだけで良い。

 

沈む夕陽。また今日も、いつものように帰路に着く。




初めまして、投稿者のみかん箱です。
最後まで読んでくださった方。本当にありがとうございました。眠り姫の変わらない日常。楽しんでいただけましたか?もしそうなら幸いです。まだまだ文章も未熟で色々と分かりにくい表現も多いと思いますが精一杯書いていきたいと思います。作者のメンタルは豆腐なのであまり強い言葉で批判されると弾け飛びますが、評価、感想。あとこうした方がいいというご意見など貰えるととても嬉しいです。
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