眠り姫と過ごす日々   作:みかん箱@黒歴史

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急展開です。まだ序章段階ですので巻きで行っています…。もしかしたら後から補填が入るかも?そんな感じで3話(間幕入れたら4話)です。


夕日の綺麗な日

しばらく雨が降り続き、久々の晴れの日。道端の紫陽花が綺麗に咲いている。

夢乃を背負ったままだと言うことを忘れそうになる程に、久々の夕陽は…ただ、幻想的だった。

 

「…こーちゃん。」

 

いつの間にか起きていた夢乃の声で、一気に現実へ引き戻される。

 

「お、おお、起きたのか。おはよう。」

「…。」

 

返事は無かった。

突然背中が軽くなり、ストンと言う小気味の良い音がした。

振り向けば、夢乃が立っていた。眠そうに両目をこすりながら…でも確かに両足で、地面を踏みしめていた。

 

「…夢乃?」

 

俺は目を疑った。そこに居るのは、本当に彼女なのか…。

俺の知らない「白雪 夢乃」がそこに居た。少なくとも…そう感じてしまった。

夕陽に照らされた、美しい少女…。何処か儚さすら感じる、そんな彼女。

いや、知っている。確かに俺は、この少女を見た事がある。

答えは、図らずとも示された。

 

「…あの日…みたい…だね?」

 

そう言って微笑む少女。

“あの日”、沈む夕焼けを共に眺めた、あの時の少女。

俺がずっと逃げている、少女。夕陽を背に彼女は微笑みを浮かべている。

名画の一ページを抜き取ったかのような、非現実的光景。

先程まで浸っていた幻想が霞む程のその光景に、ただ魅入っていた。

 

「…。」

 

沈黙。

俺は認めたくない現実と、目の前にある懐かしい非現実に板挟みになっていた。

彼女は、進もうとしている。

そして、俺にも進んで欲しいと、そう言っているような気がした。

いつまでも、“あの日”のままでは居られないのだと…。そう伝えようとしている。そんな感じがした。

 

「…こーちゃん…待ってる…から…。」

 

そう、一言の後。彼女は自身の足で歩き始めた。

俺はそれを、呆然と眺めることしかできない…。

ただ、彼女の待ってると言う言葉。その意味だけは理解出来た。そして、同時にそれは俺の停滞を、彼女が見破っていたと言うことになる。

成る程、彼女はずっと待っていたのだ。本当の意味で、ずっと、あの日から。俺が怖がって居るのも、俺が逃げているのも、全部承知のうえで、待っていたのだ。

ああ、そうか。ならば仕方がない。

惚れた女にそこまでされて、いつまでも留まっていられる筈がない。

動き出さなければいけないのだろう。

歩き出さなければ、ここで立ち止まれば、きっと彼女の隣を歩く権利も無くなってしまうのだろう。

俺は歩き始めた。そして走った。

彼女に追いついて。この一言…二言だけ、伝える。

 

「迎えに行く。待ってろ。」

 

彼女は足を止めて、こちらを振り返る。

寝ぼけ眼では無い、久しぶりに見るその笑顔。

彼女は、一度だけニッコリと頷いて、その後は何も言わなかった。

家はすぐそこだと言うのに、突然背中にしがみついて来て背負えと要求する。

仕方なく背負ってやると、自分で動いた反動なのかすぐに寝てしまった。

家まで連れて行っても、起きる気配すらない。

仕方なく白雪家の合鍵を使って家に入った。

正直に言うとあまり使いたくはないのだが、彼女の両親が多々留守にしている関係でしょっちゅう使う羽目になっている。

ご近所さん達もいつも目にする光景のため何も言ってこない…。

俺は夢乃の部屋に入って、彼女をベットに寝かす。女子の部屋にしてはえらく殺風景な部屋。今更彼女に少女趣味など出来ても怖いだけだが…。

 

「そういや、あの時も…こんな感じだったな…。」

 

『しばらく、一緒にいて?』

あの日の光景がフラッシュバックする。

いい加減にちゃんと思い出してみるのもいいかもしれないな…ずっと逃げてたあの過去のことを。でないと一生夢乃に向き合えない。

…待っていると彼女は言った。なら俺は迎えに行かなければならない。

約束を守る為に…約束を忘れてはいないと、そう伝える為に。

あの日の少女の涙。あの日の少女の温もり。あの日の少女の…笑顔。

覚えているとも…。忘れるはずが無い。

夕陽を見る度に、鮮烈に思い出すあの光景。

 

「俺達、背が伸びたな。」

 

あの幼かった少女は、いつの間にか綺麗になっていた。

あの幼かった少年は、いつの間にか大きくなっていた。

あの日のままではいられない。あの日のままでいいわけが無い。

俺は夢乃の頭を撫でてから、彼女を起こさぬようそっと部屋を出る。

 

「ふう…それにしても待ってる…か。」

 

俺は明日の授業を思い出す。ノートは康助に写させて貰うとして…。

そこでふと…。

 

「あ…明日保健じゃん…。よりによって一単元の授業かよ…。」

 

だが、休まないと言う選択肢は無い。つまり明日以外の木曜は…休めない…。自身が学生であるということに、初めて不自由を覚えた気がする…。

重い気を引きずりながら、親に明日は絶対に休まなければならないと言う事を伝えた。

叱られるよりも、生暖かい目で見られる方が辛いという事を教わった。




どうも、著者の蜜柑箱です。大分間隔が空いてしまいました…すいません。
今回は前々から出ている“あの日”に康助が向き合うための回です。急展開過ぎてついていけねえ…と言う方もいらっしゃるかも知れませんがどうか生暖かく見守って頂けると…。
最後に、ここまで読んでくださった方。有難うございます!少しずつでも閲覧が増えていくのは作者として望外の喜びです!拙い部分も多くありますが、よろしければこれからもよろしくお願い致します。
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