恋姫†無双 徐伝   作:そこらの雑兵A

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徐庶の外見とかは各々で想像してください。


第1話 事の始まり

産まれて初めて人を殺したのは、自分の為でなく他人の為だった。

知人の為の仇討ち。そこには間違いなく一つの正義を持っていた。

 

その後、役人に捕らえられた自分を助けてくれた友人達。

だが、自分を捕らえた役人にも、また一つの正義があった事に気がついた。

自分は「間違っていない。」だが、相手もまた「間違っていない。」

では、何が間違っていたのだろうか?

 

今の自分には答えはない。だがわかった事が1つ。

 

この世の中を動かすのは武だが、変えるならば知と仁だと。

そしてそれから数年の月日が流れた。

 

 

 

「で、偉そうな事をほざくのはこのお口かな〜?」

 

「わはひは、わふくありはひぇん!」

 

水鏡先生の私塾の入口。頬を引っ張られ、涙目になりなりながらも文句を言うのは、姓は諸葛、名は亮、字を孔明。水鏡先生曰く『伏龍』と呼ばれる少女だ。

 

その隣であわわと慌てふためいているのが姓は龐、名は統、字を士元。諸葛亮と対を成す『鳳雛』と呼ばれる少女。

 

その2人の間で諸葛亮の頬を引っ張っている男。先の2人より数年前に水鏡先生の元に来た青年だ。

 

「ったく。確かにお前の言う通りだが、少しは先輩を立てろよな。」

 

少し前屈みになって引っ張っていた手を離し、苦笑いしながら頭を撫でた。事の発端は凄く単純。先輩の人達が諸葛亮にいちゃもんをつけようと舌戦。容赦なく全て論破してしまった結果、その先輩が半ベソかいて私塾を辞めて行った。

 

「で、でも、あの人達は徐兄の事も悪く言ってました。」

 

龐統が大きな帽子のつばを両手で掴み、俯きながら言う。その言葉には僅かな怒気。

 

「俺の事はどうだって良いんだよ。所詮単家だ。だがお前らは違う。いずれこの世界を動かすかもしれないんだ。人脈は大切にしろよ。」

 

「そんな、徐兄は・・・。」

 

「どうせ州刺史か郡太守程度が限界なんだろ?」

 

何か言おうとする諸葛亮を遮り徐庶が笑った。諸葛亮が顔を赤くしながら更に言い返す。

 

「そ、それは会ったばかりの頃の話でしゅ、です!今の徐兄ならもっと、それこそ天下を動かす事も出来ます!」

 

必死になる諸葛亮。龐統も首をコクコクと縦に振る。徐庶は照れくさくなり、明後日の方向を向き頬をかきながら笑うしかなかった。

 

「悪い気はしないが、俺はお前らみたいに有能じゃねぇし、何より真面目じゃない。そんな持ち上げられてもなぁ・・・。それよりそろそろ飯にしよう。母さんが待ってる。」

 

誤魔化す様にそう言って2人の背中を軽く叩きながら帰路へとついた。

 

 

 

姓は徐、名は庶、字名は元直。この外史におけるもう1人の主人公の青年は、ここからは新たな旅を開始する事となる。




徐福って言うと、史記に出てくる不老不死の薬取りに行った人が先に思い浮かぶ。

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