夕暮れ。宿に戻る。趙雲もすでに戻っていた。
「どうでしたかな?何か情報は。」
窓際に腰掛ける趙雲。背後から差す夕暮れの光が、悔しいが中々様になっている。
「そうですね。今後のことも含めて話し合いましょう。」
戯志才が徐庶らが集めた情報をまとめて話す。それをうんうん言いながら趙雲は聞いていた。一通り話を聞き、そして出た結論。
「では、残念だがここでお別れだな。」
あっさりとそう言い切った。
「そうですね。我々は明日の朝、ここを出る商人達に同乗させてもらって発ちます。」
そしてあっさり返した。
「おいおい、それでいいのか。」
思わず徐庶が声を出す。それをキョトンとした顔でこちらを見る3人。だが戯志才が直ぐに察した。
「元々、我々は道中でであっただけの仲なので。最初から3人で一緒に旅をしていた訳ではないのです。」
察した戯志才が少し苦笑いしながら徐庶に話した。趙雲も頷く。
「別れる理由がなく、そのまま共に旅をしてきたが、同行出来なくなってしまったになら、無理に合わせる必要はなかろうさ。」
「そもそもお兄さんも同じ様な感じじゃないですか。」
「・・・そりゃそうだ。」
程立に言われ、納得した。確かに自分も途中で出会っただけだった。自分と出会った時の様な事が前にあって、そのまま道中が一緒だったのだろう。
「で、お兄さんはどうしますか?私達と一緒に出るか、それともここに残るのか。」
程立にたずねられ、少し考える。食料は買った。路銀もまだ少しだがあるにはあるが。
「俺ももう少しここに残るかな。懐が割と寂しいしな。」
人手が減っているだろうから、日雇いの仕事も直ぐ見つかろうだろう。一層の事、賊の云々が終わるまでここに留まるのも吝かではない。
(少し気になることもあるしな。)
「そうですか。仕事の当てはあるのですか?」
戯志才に問われ、趙雲と顔を見合わせる。
「賊討伐があるなら、客将として腕を売ろうと思う。それが1番早くて楽なのでな。」
趙雲が立てかけてある槍を指先でなぞった。彼女の腕前なら先ず間違いなく手柄を立てられるであろう。
「徐庶殿はどうするおつもりで?」
「明日、街に出て日雇いしてくれるとこでも探すわ。荒事は面倒なんでな。」
そしてこの日の夜、趙雲の提案で4人は小さな宴会を開いた。そして翌朝、日が登り始めた頃に徐庶が目を覚ました時には、戯志才と程立は既に街を出た後だった。
(趙雲は・・・まだ寝てるか。よし、今のうちに出るか。)
壁に背を預けてこうべを垂れる様にしている趙雲を確認し、腰に撃剣を挿して部屋を出た。スッと静かに戸を閉める。
(・・・朝早くにお忙しい事で。)
趙雲も目を開き、小さく深呼吸。立てかけてある槍を手に部屋を出ていった。