徐庶が城へと戻ってきた。雨は上がり、日も真上を過ぎて傾き始めていた。
(ふぅ・・・あとはこれをここの太守に売るか。)
先の斥候で得た情報。賊達のおおよその数と陣。場所も大体わかった。あとはそれに対応する策でもあれば完璧だ。
(まあ、策まで考えてやる義理は無い。)
懐から出した木の板。適当に置いてあった椅子に腰掛け、書いてある内容をもう一度確認。一部読みにくかったりわかりにくい所を手直ししていく。
それが終わった頃には日が傾きかけていた。
(あ、やべぇ・・・日雇いの仕事してねぇや。ま、いっか。)
適当に出店で夕食を済まして宿屋へと戻る。その宿屋の前には兵士が4人ほど立っていた。
(うわぁ・・・面倒臭い予感しかしない。)
目を合わせないように中へと入ろうとするが。
「失礼。貴殿の名前と、何か身分を証明するものを見せて欲しいのだが。」
やはり予想通り呼び止められてしまった。面倒なことになりそうだ。
「あー、名前は単福。身分を証明するものは部屋にあるんだが、取ってきても良いか?」
「わかった。私が同行する。お前達はここで待て。」
兵士の1人が付いてくる。階段を上がり、二階の部屋まで来た。
「ここだ。ちょっと待っててくれよ。」
部屋に入ったら荷物を持ち、窓を開けて飛び降りる。後はひたすら走って追手を巻く。そのままこの街を出るべきか。
そこまで考え、扉に手をかけた。
「この部屋という事は、貴方が趙将軍の同行者ですね。将軍が政庁でお待ちです。」
その言葉を受けて徐庶は思わず顔を覆って俯いた。
(趙雲の奴、俺を巻き込みやがったな!)
「一応聞きたい。拒否権は?」
「? 趙将軍の御仲間なのでしょう?既に給金を将軍が受け取っておりますが。」
「よし、わかった。案内してくれ。とりあえず一回ぶん殴りに行くわ。」
「おお、徐庶殿。遅かったではあr「よし、歯ぁ食いしばれ!」
兵士に案内され、政庁へと来た徐庶。門をくぐって直ぐの広場にいた趙雲へ問答無用に殴りかかった。
趙雲はそれを掌で受け止め、あっけらかんと笑った。
「まあ、良いではないか。扱いとしてはあくまで客将、ここでちょちょいと手柄を立てれば直ぐに路銀が稼げる。悪い話ではあるまい?」
溜息を吐きながら徐庶が手を引く。
「良い話でもねぇよ、このやろう。しかし、いきなり将軍呼びとは恐れ入った。何をやったんだ?」
「なに、容易いことさ。」
趙雲がクイっと顎で指す。そこには数十名程の兵がうつ伏せで息を切らしていた。
「ちょうど太守の公孫瓚殿が到着していたのでな。腕を買って欲しいと声をかけた所、その腕前を見せろという事で軽く捻ってやった。」
(兵士に同情するわ。)
思わず苦笑いしてしまった徐庶。気を取り直して懐から木簡を取り出した。
「とりあえず、ここでは俺を徐庶と呼ぶな。単福と呼んでくれ。早速だが、ここに賊の陣容とおおよその兵数や地形についての覚書がある。まずはこれをその公孫瓚殿に渡してこい。その後で、ここにいる将軍級の奴らを集めさせろ。日が沈みきる前に軍議を開いてもらう。」
木簡を趙雲に押し付けながら徐庶が一気にまくし立てた。
「っと、だがその前に公孫瓚殿に合わせてくれ。ここの奴らが俺の言う事を素直に聞くとは思えんから、先にいくつか伝えとかないと面倒が起こるからな。あとお前が受け取った給金の半分寄越せ。」
そしてそのまま建物の入り口へと進む。趙雲がポカンとした顔で徐庶を見ていた。それに気付いて足を止めて振り返る。
「・・・なんだよ。」
「いや・・・徐、じゃなかった。単福殿、貴殿は私が思っていた以上の傑物なのかもしれんな。」
「やめてくれ、柄じゃない。」
面倒臭そうに溜息を吐きながら頭をかいた。