恋姫†無双 徐伝   作:そこらの雑兵A

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第21話 『曹』 Side 徐

「凄いやっちゃなぁ・・・。」

 

弓を肩に掛けながら見下ろす先。柵を飛び越え、内側から東の方を眺める男。

理論を掲げるだけでなく、先頭に立って行動。そして実際に結果を出した。

 

(あの兄さんがおらんかったら、もっと被害が出とったやろな。)

 

東の方に目をやると『曹』の旗印。援軍だ。ホッと胸をなでおろし視線を戻すと、先程の男が膝から崩れ落ちた。

 

「!?」

 

慌てて櫓からおり、駆け寄った。助け起こそうと手を伸ばす。

 

「ちょ、兄さん大丈夫かいな!?どっかやられたんか!?」

 

「・・・さっき買った干し肉どっかに落とした。」

 

手を伸ばしたまま顔から地面に突っ込んだ。

 

 

 

「すまん、驚かせた。」

 

立ち上がり、砂を叩く。曹操軍が東の門に向かっているのが見えた。

 

「ホンマやで。でも無事でよかったわ。」

 

女性がホッと胸を撫で下ろす。

柵の向こう側から馬が寄ってきた。先程まで徐庶が乗っていた馬だ。

 

「」タダイマー

 

「よしよし。向こうの扉、開けれるか?」

 

「ああ、大丈夫や。」

 

馬と並行しながら扉がある方へと歩く。

 

「ウチは李典や。よろしゅうな。ちなみに最初に兄さんが出会った娘は楽進や。」

 

「俺は・・・徐福だ。よろしくな。」

 

扉を開き、馬を入れた。頭を徐庶に押し付けてくる。徐庶は笑顔で頭を撫でた。

 

「」ホメテー

 

「よしよし。よく戻ってきてくれた。」

 

「しかし、ホンマ助かったで。兄さんのおかげや。もしかしてどっかの軍師様とかやったり?」

 

李典も笑顔で徐庶の馬を撫でながら徐庶にたずねた。それに徐庶は苦笑いする。

 

「やめてくれ。釣り糸を垂らしてなければ、老人に靴を履かせてもない。俺はただの旅人だ。とりあえず、援軍も来たみたいだし、もう大丈夫だな。」

 

もっとも、数は少ない。おそらく先遣隊だろう。パッと見た数では、まだ賊軍の方が数は多い。

 

(どれ程の精鋭かはわからんが、軍が動いたならこれ以上付き合ってやる必要はないしな。)

 

「あとはそっちの指示に従ってくれ。俺は宿屋に戻るわ。」

 

そう言って馬を引いて城内へと入っていった。驚き李典が後ろから追いかける。

 

(確かに、曹操軍が来てくれたんや。これ以上、旅人の兄さんを巻き込むわけにはいかんわな。でも・・・。)

 

旅人でありながら、あれだけの行動力。彼程の者が居てくれればどれ程心強いだろうか。そう思い、思わず声をかけようと手を伸ばす。

 

「悪いな。面倒は嫌いなんだ。」

 

李典の表情で察した徐庶は一言残し、宿屋へと戻った。

 

 

 

そして宿屋。馬を預けて部屋へと戻る。

 

(とは言ったものの、すぐにこの街からは出れないだろうなぁ・・・。)

 

ため息を漏らす。賊軍が来ている以上、すぐには外に出れない。それに、旅の路銀はまだまだ大丈夫だが、食料は少し心許ない。

 

「義理は果たしたし、あとは危うきに近寄らずってな。」

 

窓を開けて外を見る。大きな通りと街の中央にある広場が見えた。そこに並ぶ『曹』の旗がなびいていた。


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