なるべくしない様に注意はしてるんですがまだまだ未熟ですねorz
司馬徽はいつもの様に、自室で墨をすっていた。目の前には何も書かれていない書簡と、紙を束ねて製本された物がいくつか。
筆を取り、スラスラと竹簡へと写本していく。その作業中、扉の向こうから呼ぶ声がした。
「先生、よろしいでしょうか?」
筆を置き、応えるとスッと扉が開き、白い髪と眉の少年が入って来た。
「先生にお客様です。入口の方に待たせてますが、どういたします?」
ニコッと微笑みながら首をかしげた。それを見て何か察した司馬徽も微笑み立ち上がった。
「わかりました。すぐに行きますよ。」
「お久しぶりです、先生。」
そこには、一頭の馬にいくつか荷物を背負わせ、少し泥や土で汚れた徐庶が立っていた。
「ええ、お久しぶり。元気そうね侠懐。」
微笑み、互いに軽く頭を下げる。
「保存のきく食料や、いくつか気になった新しい書物を持って来ました。良ければ使ってください。」
「」オミヤゲダヨ〜
「あらまぁ。わざわざありがとう。季常、お願いしても良いかしら?」
「はい、お任せください。」
手にしていた水と手拭の入った桶を置き、季常と呼ばれた少年が笑顔で手綱を引いていった。
「ありがとうございます。」
案内された部屋で、手拭いを首にかけたまま出されたお茶を手に取った。
「それで、ここに寄ったのは近況報告?」
「はい。とりあえず予定の3、4割程ですかね。」
徐庶の答えに、お茶を手にしたまま僅かに驚いた。
「あなたの割には少し遅いわね。何かあったの?」
「ははっ・・・まあ、色々。」
乾いた笑いで目をそらす。何かトラブルがあったのだろう。察した司馬徽もそれを見て苦笑いした。その後、他愛の無い話をしたところで、司馬徽が手を叩いた。
「あ、そうだ。そろそろ時間だしちょうど良いわ。侠懐、せっかくだし授業していかない?」
ニコッと微笑む司馬徽に、徐庶はゲッと顔をしかめた。
「そう言うのは朱里の方が向いてるんでしょうけど・・・。」
「残念。朱里も雛里も、もうすでに卒業して旅立っていて、ここにはいないわよ?」
「ですよねー。」
満面の笑みのままの司馬徽に、徐庶も苦笑いするしかなかった。
「と言うわけで、何人かは初めまして。徐、元直です。」
驚いた表情の生徒達がいる教室で、困った様な笑顔で前に立つ徐庶。その隣では司馬徽が微笑む。
「えー・・・それで、今日は何する?」
そう話を振られた生徒たちが顔を見合わせざわめく。完全にノープランで始まってしまった授業は初っ端から問題に直面した。
(あれ?普通ならここで色々聞かれる筈なんだけど。)
困ってチラッと司馬徽を見るが、相変わらず微笑むだけだ。すると、1人の少年が手を挙げた。
「馬良と申します。元直殿は、彼方此方を見聞していると聞きました。是非、天下の情勢についてをお聞かせ下さい。」
ニコッと微笑みながら中々えげつない質問をサラッとしてきた。
「一通り見て聞いてきた事でも話すか?そんじゃあ先ずは地図と駒を。」
言うや否や、生徒達が立ち上がり、ある者は机を動かし、ある者は地図と駒を取りに行き、ある者は筆や簡を用意した。
「えー、それじゃあ先ずは各地の勢力の中でも、規模の大きい所から。」
机の上に広げられた地図。その上に駒を置いて行き、簡に名前を書いていく。その間に、司馬徽はそっと部屋を出て行った。
「先ずはここ、荊州北部。知っての通り、劉表殿を中心に割とよくまとまっているな。」
他の州に比べれば圧倒的に賊などの問題点が少ない所だ。
「ここに関しては、態々詳しく話す必要はないな。そんで、隣は益州。ここも安定しているな。と言うより、立地的に他所から入りにくいって言うのが一番だろうけど。」
『劉焉』と書かれた簡を置きながら言うと、周りもウンウンと頷いた。
「そこから北。こっちの方は俺はまだ行ってないんだけど董卓、馬騰、韓遂あたりが異民族討伐で手柄を挙げてたよな。」
「・・・近頃では、その馬騰の娘さんがかなりの腕前だと言われてます。」
近くにいた女の子が言うのに徐庶は頷き、簡を置いた。
「西涼の錦と言われるほどだからな。それで、次は兗州、陳留郡の曹操。ここに戻ってくる少し前だが、司隷河内へ賊討伐に来ていた。近いうちに一気に名を上げるだろうな。」
徐庶の話に、周りがざわめいた。『曹家』の噂はいくつか出回っているが、他州へ出陣すると言う話はまだなかったからだ。
「で、その曹操と隣接するのが四代に渡り、三公を務めた袁家。その袁紹だが・・・名君ではなくとも暗君でも無しってとこか?」
「ハッキリしませんね。」
首を傾げる徐庶に馬良が言うが、徐庶は苦笑いするだけだった。
「金が有るからか、領内での金回りはかなり良い。治安も、賊がどうこう言っているわりには良い方だ。ただそれだけだったからな。正直ようわからん。」
話だけを聞けば、中々良いのだろうが確かに何かこれと言って、事を成した訳ではない。確かに判断に困るレベルだ。
「その隣、公孫瓚はかなりの勇の者らしいですね。」
「そうなのか?」
簡を置きながら言う馬良に、徐庶が首をかしげた。それを見て馬良がニコッと微笑む。
「ええ。なんせ、僅か半日で賊の砦を陥落させたそうで。知勇に優れた方なのでしょう。」
「あー・・・ナルホド、タシカニソウダナー。」
そっと目をそらし、本人が知らぬところで株が上がってしまった公孫瓚に内心謝った。軽く頭をかき、直ぐに地図上に目を戻す。
「そこから南、徐州では、陶謙が最近ようやく領内をまとめ終わって、賊の討伐に出たらしいな。」
「・・・青州、徐州がどうやら賊の量が多い州と聞いてます。」
先ほどの女の子がいい、そっと簡を置いた。その簡には『黄巾』と書かれていた。
「らしいな。そしてその賊達は皆、黄色い頭巾やら布やらを巻いてるらしい。良く知ってるな。」
「・・・恐縮です。」///
顔を少し赤らめ、スッと馬良の背に隠れてしまった。昔の頃の諸葛亮と似ている雰囲気に、思わず笑みがこぼれてしまった。
「で、そこからか更に南の揚州。ここは群雄割拠ってほどじゃないけど、いろんな所が揉めてるよなぁ。そんなかで一個飛び出ているのが江東の虎こと、孫堅だな。」
「先日病にかかり、今は伏しているそうですよ。」
「・・・本当か?」
「本当です。」
思わず聞き返してしまった徐庶。馬良はそれに笑みのまま頷いた。
「どんなに優れた勇将でも病には勝てないか。」
ふと周瑜や諸葛瑾らが思い浮かぶ。だが、態々見舞いに行ったり手を貸してやるほどの義理はない。
「こればかりはどうしようもないな。」
小さく息を吐き、また地図へと目を戻した。
「今の所、大きな勢力となりそうなのはこれぐらいか。じゃあ、最近の情勢の変化と、これからの展望について、皆で話し合おうか。」
そう行って徐庶は、立てかけてあった少し長めの指し棒を手に取った。
馬良は男の娘(!?)。