恋姫†無双 徐伝   作:そこらの雑兵A

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第33話 汜水関の戦い その1

翌朝。軽い朝食を終えた後に、進軍を開始する。

先鋒を勤めるのは『孫』の旗印。その右翼側後方を義勇軍が追従する。当然、その中には徐庶らも含まれていた。

 

(まずは汜水関。その後に虎牢関か。道のりは長いなぁ・・・。)

 

などと暢気に歩く徐庶。相変わらず眼鏡と頭巾をかぶった状態で、支給された槍を肩にかけながら周りに目を向ける。所詮は義勇軍だ。ある程度の統率はとれているのだろうが、決して褒められた隊列では無い。必要最小限の組み分けは出来ているようで、伍を組んでいるがそれだけだ。

 

チラッと後方へと視線を向けると、大きな偃月刀を手にし、美髪を結んだ女性。この隊を率いている将である関羽だ。

 

「お、なんですか、主は関将軍に興味ありですか?個人的には趙将軍の方が好みですがね。」

 

邢道栄がニヤつきながら声をかける。徐庶が無言でその頭を叩いた。それからしばらくして、大きな関所が見えてくる。汜水関だ。そこに見える旗印は『張』と『胡』、そして『華』。

 

「将軍が3人か。不幸中の幸いは呂布がいないことだな。」

 

呂布。字は奉先。おそらく、ある程度見聞のある人物なら誰もが聞いた事のある名だ。董卓軍、いや、連合軍を含めても、間違いなく最強の人物であろう。その旗印が無いという事は、ここには居ないはずだ。

 

早速先鋒の孫策軍が汜水関の前へと隊を進める。矢が届かないギリギリの所で何やら声を上げているようだが、効果は無いようだ。董卓軍としては、諸勢力が一同に会しているこの場、態々打って出る力押しは愚の骨頂。孫策軍としては、なんとか外へと誘き出したいのだろうが。

 

「こりゃ長引きそうだな。」

 

徐庶が肩にかけていた槍を地面に突き刺して腕を組む。隣で伍を率いていた陳応もこちらへと歩いてきた。

 

「なんとか引きずり出す手はないんですか?」

 

「んー・・・無い事も無いが、割に合わん。それよりも、だ。」

 

陳応の問いに答えつつ、徐庶が周りを見渡す。正面の汜水関。それを挟む様に左右には山。登ろうと思えば登れるが、正直キツい。だが、下ろうと思えばどうだろうか。

 

「・・・奇襲か?」

 

あり得ないとは言えない。援軍の見込めない籠城は下策だ。だが、今回の場合は相手が連合軍。何もせずとも不和は生まれるだろう。時間を稼げば稼ぐだけ、董卓軍が有利になる。もっとも、そのためには相手の気勢を削ぐ必要があるからだ。

 

徐庶は周りを警戒するがその日は杞憂に終わり、何もなく終わった。日が沈み、そして夜が明ける。その日も、同様に孫策軍が前に出て、挑発を繰り返すが効果はない。二日目も多少の矢を撃ち合うだけで終わった。

 

そしてその夜。いくつか簡易的に建てられた天幕があるが、そこから少し離れた所で立っていた徐庶。そこに歩み寄ってくるのは公孫賛と趙雲だ。

 

「やぁ、元気そうだな。」

 

「そちらも。」

 

軽く手を上げる公孫賛に、徐庶が笑みを浮かべながら頭を下げた。

 

「趙雲に話は聞いていたんだけど、意外だな。貴方程の者が一兵卒なんて。桃香、劉備に推薦しようか?」

 

「ありがたい話ですが、少々込み入った理由がありまして。」

 

「ん、じゃあ余り細かいことは聞かぬ事にしよう。で、だ。ここに来たのは貴方の意見を聞きたくて来たんだ。何か気になる事でもあれば教えてほしいんだけど。」

 

公孫賛の問いに、趙雲の方へと視線を向ける。すると、少しだけ考え、趙雲が口を開いた。

 

「ふむ、私が敵将側なら、ひたすら守るのは性に合わん。だが、兵力差は如何ともしがたい。出来ることいえば、夜襲をかける位だが・・・。」

 

「昨日の夜はそれがなかった。という事は、ひたすら籠り続けるしかないか。」

 

趙雲の意見に、公孫賛も頷く。確かにそうだろう。それに関しては徐庶も同意見だ。

 

「だが、夜襲にせよ奇襲にせよ、重要なのはその機を逃さないこと。正面に陣取られてしまった今となっては難しいでしょうね。つまり、既に一つ目の機は過ぎました。」

 

それは初日か、それよりも前。連合軍が汜水関に着く前でなければならない。

 

「では、もうその心配はないと?」

 

そう問う公孫賛に徐庶が首を振る。

 

「二つ目の機。それは、相手側に弛みが発生し始める時。もし俺が敵側なら―――。」

 

 

 

 

 

「今日も成果なし、ね。どうするの?あれ使う?」

 

天幕の中。手にした徳利から杯に注ぎながら、孫策が机の横に置いてある木簡へと目を向ける。それは、甘寧らが見つけた汜水関の横へ出る抜け道。幅が狭く僅かな人数しか通れないが、試す価値はあるかもしれない。

 

「いや、あと二日待つ。」

 

周瑜がそう言いながら、杯を受け取り煽った。その横で豊満な胸部を支える様に腕んを組んで立っていた女性、黄蓋が、ほぅと言葉を漏らす。

 

「なにか理由があるようじゃの。」

 

「そうですね。理由は二つ。まず、あの道を使うのは少々、危険度と成果の割が合わないというのが一つ。」

 

黄蓋の問いに、指を二本立て、その一つを折る。

 

「そして、もう一つが最大の理由ですが、敵はおそらく―――」

 

 

 

 

 

天幕の外。夜風が曹操の金髪を軽く揺らす。腕を組み、視線を向ける先には汜水関とその前に陣取る孫策軍。その曹操の下に歩み寄る二人の将。

 

「いかがしますか?華琳様。」

 

「私が出ましょう!そうすればあの程度の門、すぐに打ち破ってみせます!」

 

夏侯淵が曹操にたずねた。その隣に立つ、前髪を大きく後ろの方へまとめた女性、夏侯惇が胸を張って声を上げ、前へ一歩踏み出す。曹操は笑みを浮かべながら手を挙げ、夏侯惇を下がらせた。

 

「もう一日、待ちましょう。孫策の所には明後日にでも足を運ぶわ。あまりここで時間を費やしても面白くないものね。」

 

「明後日、ですか?」

 

キョトンとした目で、夏侯淵を見ながら夏侯惇が首を傾げる。夏侯淵も、困惑気味に首を振った。

 

「理由は簡単よ。この戦い、―――」

 

 

 

 

 

「「「明日動く。」」」

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