恋姫†無双 徐伝   作:そこらの雑兵A

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第4話 望まぬ一騎討ち

(命は保障するときたか。随分お優しい江賊だ。)

 

徐庶は腰にしていた剣から手を離した。荷の中身が何かは知らないが、量は決して多くない。正直、この状況なら商業的には痛手でも、背に腹はかえられないだろう。

だが船長の考えは違った。

 

「洒落臭い、者共!やってしまえ!!」

 

三下じみた台詞と同時に剣を抜く。それに合わせて周りの水夫や男達も武器を構えた。

 

「おいおい、本気かよ!?」

 

頭を下げながら船内へと下がる。上で騒がしい音が聞こえるが、仕方がない。

 

(こっちが無事に勝ってくれることを願うしかないか。)

 

時間としては十分もしていないだろう。音が大分減ってきた。徐庶はそっと顔を覗かせる。

 

(あー・・・これはダメな奴だ。)

 

船長と呼ばれた男とあと1人。その1人も今、目の前で女に斬り殺された。

 

「終わりだな。大人しく荷を渡せば良かったものを。」

 

パッと払った刀から飛び散った血飛沫が船上に斑点を刻む。それに怯えた船長が視線を彼方此方へと走らせる。そして徐庶と目があった。

船長が腰の袋に手を突っ込み、パッと投げる。小さな粉が飛び散った。所謂目潰しなのだろう。そして徐庶の方へと走ってくる。

 

「くだらん手だな。」

 

言うや否や、チリンと鈴が鳴ると同時に振り下ろされた切っ先。そのまま船長の首を刎ねた。ゴロンと転がる頭。それを目で追う女。そうなれば必然であろう。

 

「もう1人いたのか。」

 

徐庶と目があった。瞬間、放たれる殺気。

 

(あ、これやべぇ奴だ。)

 

咄嗟に船内から飛び出し、地を転がる。振り下ろされた刃は大きな傷を船に刻んだ。

 

(どう考えても刃渡りより切り口でけぇよ!?こいつも『気』の使い手か!)

 

転がりながら地面を叩いた反動で飛び、空中で態勢を整え、着地と同時に腰の直刀を抜き、構える。

 

「ほう。」

 

その身のこなしを見て、女が思わず声を漏らした。

 

(この男、先の奴らとは比べ物にならないな。)

 

(逃してくれる雰囲気じゃねぇよな・・・ヤベェって!?)

 

女が一瞬で間合いを詰めた。横に薙ぎ払われる刀を徐庶は腰を落として躱す。

女が振り切った反動のまま姿勢を捻り、顎を蹴り上げようとする。状態を大きく後ろへそらし、やはり躱す。

クルリと回って上段から振り下ろされる鋭い一撃。右足を大きく後ろへ引いての半身で紙一重で躱す。

地面を切り裂くと同時に弾けた刀で、無理やり横への薙ぎ払い。直刀で受け止め、その衝撃に乗り、大きく後ろへと下がって距離を取った。

 

(一発が重てぇな!?)

 

(これも躱すか。)

 

一旦距離が開いた。女がより表情を厳しくし、殺気が増す。

 

(こんな所で死にたくはないからなぁ。三十六計逃げるに如かずと行きたいが・・・さて、どこまで耐えられるもんか・・・。)

 

徐庶も深呼吸。自身の中にある何かを一段階、上へと切り替えた。




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