当面の目標は週に1〜2程。
ここからは、ひたすら一方的だった。一方的に女が攻撃をし続けた。だが徐庶はそれを躱し、受け流し、防ぎ、そしてまた躱す。
(こいつ・・・!)
女が苛立ち始める。
徐庶は元々撃剣の使い手である。普通の剣よりも少し短めの剣。その小回りの良さを最大限に発揮し、防御に徹していた。
それだけではない。回避の中でわざと隙を作っているのだ。当然優れた戦士である程、その隙を逃さず攻撃を加える。だが、来るとわかっている攻撃ならば当然受けれるし、躱せる。
(けど、これ以上躱し続けるのは体力的にキツイんだが!?)
呼吸が乱れ始めた。振るわれる刀が頬をかすめ、服の裾を切り裂く。
これ以上は長く持たないだろう。内心焦り始めたところで銅鑼の音が聞こえた。互いに剣を止め、距離を取る。
(あれは・・・都尉か県尉か知らんが助かったな。)
徐庶が相手に悟られない様に安堵する。逆に相手の女は少し悔しそうな表情をした。
「ここまでか。仕留められなかったのは口惜しい・・・いや、寧ろ良かったのかもしれん。大人しく捕らえられろ。」
そう女が言った。そこで徐庶は首をかしげる。
「なんで俺が捕まるんだ。」
「なに?貴様、この状況で白ばくれる気か。」
若干驚き、女が周りの死体を指す。ここで徐庶は察した。
「もしかして、お前らじゃなくてこいつらの方がが江賊だったのか?」
「なん・・・だと・・・?」
「俺は向こうの港で途中まで乗せてくれって頼んだだけだ。こいつらの仲間じゃねーよ。」
先の銅鑼を合図に女は殺気を引っ込めていた為、こちらも敵意がない事の証として、そう言いながら徐庶は剣を納刀し、地面に置いた。
襲われる心配がない以上、どうやらもう抵抗する意味は無さそうだ。
「・・・一応武器は預からせてもらう。」
バツが悪いのか、微妙な表情で女は徐庶が置いた剣を手に取った。
徐庶はそのままその場に座り込む。一気に全身の気が抜けた様だ。
「はー・・・キッツ・・・。」
部下であろう者たちに指示を出しながら、女は徐庶の方を見る。
「貴様、その服の中の物も全て外せ。」
「・・・やっぱり?」
羽織っていた上着を脱ぐ。その内側には小さな直刀、いわゆるナイフの様な物が数本。ズボンの中にもやはり数本。
取り出した刃物を一枚の布でまとめて差し出した。
「これで全部だ。嘘じゃないぞ。」
それを受け取る女の後ろ。部下の者たちが死体を一箇所にまとめていると、先程の銅鑼を鳴らしていた船が接舷してきた。その船の旗印には『孫』。
(おいおい、江東の虎かよ。)
意外な大物に冷や汗を流す。その船から2人、金属の爪のついた板で船をつなぐ様に作られた橋の上を歩いて移って来た。
1人は眼鏡をかけ、長い髪を靡かせる女性。その背後に立つのは、自身の妹弟子の背を少し高くし、身体の起伏を大きくした女性だった。
ここの徐庶は武力70後半ぐらい。