翌朝。軽い朝食をいただき、部屋を出た。周瑜も諸葛瑾も仕事が忙しいのか、侍女から言伝で見送りの言葉をもらった。
そして門へと差し掛かる。
「・・・俺の無罪は証明されたよな?」
そこに立っていたのは甘寧だった。壁に寄りかかり、腕を組んでいる。その表情は読めない。
「公瑾殿から話は聞いた。本当に仕官する気は無いのか?」
「まだまだ見聞の旅の途中なのでな。あいにく、誰かを君主として仕える気は無いんだ。」
微笑みながらいう徐庶に、甘寧は目を閉じ小さく息を吐いた。そして城内へと歩き出す。
そのまま立っている徐庶の隣で止まった。
「次に会うときは、敵で無い事を祈っている。」
そう言い残し、歩いていった。
(・・・おお、怖い。下手すりゃ次に出会った時に首斬られるんじゃないか?)
思わず苦笑いをしながら場外へと出ていった。次の目的地はとりあえず北上しながら考える。
その結果である。
「迷った。さっきの道右だったかなぁ・・・。」
道中で道が分かれていた。荊州を出る時に買った地図の範囲にギリギリ入っている道だが、地図には分かれ道などなかった。
どっちか迷い、なんとなくで左を選んだ結果がこれである。段々と道が細くなり、既に今は獣道状態だった。
辛うじて歩くことができる程度。一応人が通った様な形跡はある。
それからしばらく歩くと、人の声が聞こえた。
(3人?女の声だ。もしかして迷い仲間か?)
丁度道形に進むと声の方だ。そのまま近付くと、すぐに3人の女性が見えた。
先が二又になった赤い槍を肩にかけ笑う者。頭に何かのせて何故か眠そうな者。そしてその2人に少しイラついた様な眼鏡をかけた者。
「おっと。稟があまり大声で怒鳴るから人が来たぞ。」
「怒鳴らせたのは誰のせいですか。」
稟と呼ばれた女性がため息と共に徐庶を見る。
「申し訳ない、旅の方。実は幽州の方に行きたいのだが迷ってしまいまして。」
「ああ、奇遇だな。俺も北に行きたいんだが迷ってしまってな。」
僅かな沈黙。そして互いに溜息を吐いた。
「情報を整理しよう。俺は揚州方面から北上してきた。そちらさんは?」
徐庶がしゃがみ、懐から取り出した小刀で地面に大雑把な大陸を書く。それを見た稟と呼ばれた少女もしゃがみ、徐庶が差し出した小刀を受け取った。
「私達は徐州から来ました。」
地図に線を引き、徐州、揚州そして豫州を書き込む。
「ふむふむ、そちらの武芸者はともかく、2人は健脚ではなさそうだが・・・。」
「御心配には及びません。これでも旅は長いので。」
徐庶の心配を表情を変えることなく答えた。その雰囲気は、どちらかといえば徐庶が苦手な部類だった。
「そりゃ失礼。という事は、おそらく豫州の沛県には入っていると思うから。」
「おおよそこの辺りですね。」
互いに目を合わせて頷く。2人の意見が一致した。
「そんじゃあ、せっかくなので旅のお供という事で。」