可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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本編
1話 ♯1「鈴瀬 麗梨」


ーーー20XX年

遊戯王OCGは既存のカードゲームの枠組を越え、かつての『麻雀』や『トランプ』等と肩を並べる程に認知され、今や知らない人など居ない大衆の娯楽と化していた。

様々なルールが存在し、定期的に大規模な大会が開かれ、プロデュエリストも多数存在する。

トッププロが一堂に集う大会での優勝者には莫大な賞金と栄誉あるキング(クイーン)オブデュエリストの称号が与えられた。

しかし、実力だけでなく運によっても大きく左右されるこのゲームは輝かしさとは裏腹に賭博の手段、対象としても一定の地位と信頼を築き上げてしまった。

かつての『それら』と同じように…

 

 

 

 

 

<<デュエルハウス「フリード」>>

 

 

「クソッ!サレンダー!もう一回や小娘!」

 

中年男がテーブルに拳を振り落とす。

ガタン!と重い音が響き、そのはずみで何枚かのカードが床に落ちる。

賑やかだった店内が静まり返り、周囲から視線が集まった。

 

「だめ。これで終わりってさっき言った」

 

対面の少女は表情を変えずに返す。

中々肝が据わっているようだ。

 

「ああ!?」

 

中年男は大声で威嚇する。

すかさず店員と思われる人物が歩み寄った。

 

「お客様、他のお客様のご迷惑になります。あまり耳障りだと出入り禁止の処置を取らざるを得なくなります」

 

店員は中年男をにらみつける。

 

「…チッ!ほらよ!」

 

威圧に屈した中年男は金を投げ、カードを回収し店を出て行った。

 

 

 

「レイリちゃん大丈夫だった?」

 

店員と思われる人物の声色が優しいトーンに変わる。

少女の名はレイリというようだ。

 

「うん。ちょっとびっくりしたけど」

 

少女はテーブルのカードを手元に集める。

 

「ずっと勝ってたよね?いくら稼いだの?」

 

「1週間は暮らせるくらい、かな」

 

「そっか。良かった」

 

「うん」

 

少女は荷物をまとめ立ち上がる。

 

「またおいでよ。みんなレイリちゃんとデュエルしたがってるからさ」

 

「…うん」

 

少女は少し時間を置いて店を後にした。

 

 

 

【デュエルハウス】。表向きは人々が集まりデュエルを行う施設だが、

かつての雀荘のようにお金をやりとりしてるハウスもそれなりに存在している。

もちろんデュエルでの賭博は現行法では認められてないが、賭けを行うハウスの数が多すぎるため、余程のことが無い限り警察は黙認しているのが実情だ。

先程のとあるハウスでの、とあるやりとり。良くある光景だ。ただ1つを除いては…

 

 

 

鈴瀬麗梨(スズノセ レイリ)。15歳。高校1年生

 

「じゃあ、この問題を…鈴瀬」

 

「6P3で120通り」

 

「正解。というわけでこの確率は~~~」

 

桐縹高校という地元の高校に通っている彼女。

 

「れーりちゃん、その卵焼きちょーだい!」

 

「いいよ」

 

整った顔立ちと、真っ直ぐ長く伸びた黒髪が印象的。

 

「れーりちゃん、一緒に帰ろ!」

 

「うん」

 

その外見と掴み所の無い言動からしばしばミステリアスやクールビューティーなどと称される。

 

「また明日ね!ばいばい!」

 

「ばいばい」

 

そんな彼女の日常が今日も終わる。

いや違う。終わったのは日中だけだ。

 

 

 

ーーー午後7時。日は沈み、辺りは暗くなる。

 

(今日はどこに行こうかな。フリードにはしばらく行けそうにないし…)

 

考えごとをしながら彼女は身づくろいを始める。

 

長い髪を短く見せるようにくくり、帽子をかぶり度の入ってない眼鏡をかける。

顔には薄く化粧が施されており、その姿は学校に通う彼女とはまるで別人のよう。

 

(せっかくだし新しいハウスでも探してみようかな)

 

 

 

ーーー午後8時。

 

気付けば1時間近く歩いていた。普段徒歩では来ないような隣町を歩く。

 

(どうしよう、見つからない。無駄足は、やだな…)

 

歩きっ放しだった彼女に疲れが見え始める。

 

(仕方ないけど、駅までに無かったら帰ろう)

 

駅に向かって歩き出して数分、路地裏を覗くと控えめな看板が目に入る。

 

(あ、デュエルハウス「黒蠍」…こんなところに一軒あった)

 

ふぅ、と一息つく。

 

(たぶん、大丈夫だよね)

 

息を整え路地裏へと歩を進めた。

 

 

 

<<デュエルハウス「黒蠍」>>

 

「あーっちくしょう!また負けた!」

 

「悪いな、ごちそうさん」

 

悔しがる男が対面の若者に金を差し出す。

この男だが今日は全くと言っていいほど良いところが無く、給料の約半分を若者に巻き上げられる始末であった。

 

「今日はもうやめだ!ついてねえ」

 

悔しがる男は荷物をまとめ店を出て行った。

 

「あぁ?」

 

店の扉の近くを歩いていた少女と目が合う。

 

「ここはガキの来るところじゃねーぞ。帰れ」

 

男は少女に吐き捨てるように言うとそのまま表通りへと向かって行った。

 

「…」

 

(うん…わたしもその通りだと思う。でも、わたしは…)

 

(…)

 

少女は意を決し扉を開けた。

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