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一通りショッピングモールを回った3人は、お昼時ということもあってモール内のレストランに来ていた。
「どれにしようかなー」
藍子はメニューを見ながら「うーん」と悩む。
「兄貴、何頼む?」
「俺はミックスフライ定食だな、特盛りの」
「昼間っからよく食うな…」
桜は半ば呆れながら呟く。
「わー修せんぱい、たくさん食べるんですね!」
「まあ、鍛えてるからな。食わなきゃ痩せちまうんだ」
「ふえー…食べなきゃいけないって大変そうですね」
「お?わかってくれるか」
「はい!修せんぱいの体見ればわかります!」
服の上からでもわかる筋骨隆々の肉体。並々ならぬ努力の結晶であろう。高い身長も相まって維持するだけでも大変だというのは想像に難くない。
「桜ちゃんは決まった?」
「あたしはハンバーグ定食にする。アイコは?」
「うーんと、じゃあ桜ちゃんと同じので!」
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昼食を済ませた3人は次の目的地、映画館へと歩く。
「どんな映画なんだ?」
桜は道中、藍子に問う。
「恋愛映画だよー。泣けるって評判みたい!」
「ふーん…」
「あの、修せんぱいってどんな映画が好きですか?」
「ん、俺は…そうだな、アクションとかSFが好きだな」
「あ、ひょっとして恋愛系は…」
「ああ、苦手ってわけじゃねえんだ、あまり見ないってだけで。だから今日のは楽しみだよ」
「それなら良かったです!」
藍子は一瞬まずいと思ったものの、赤石の楽しみという言葉を聞いて安堵した。
映画館への道の途中、公園の前に差し掛かった時、赤石の歩みが止まる。
(この後映画か。トイレ済ませといた方がいいな)
「悪い、トイレ寄ってくる。ちょっと待っててくれ」
「あ、はい!」
赤石はそう言うと公園の公衆トイレへと入っていった。
「ねー桜ちゃん」
藍子が桜に話しかける。
「何だ?」
「今更だけどこの服どうかな?」
「いいんじゃねーか?似合ってるよ」
「うん…」
藍子は浮かない顔で頷く。
「どうしたんだよアイコ、自信持ちな」
「そう言われても…」
桜は藍子を元気付けようとするが、藍子の態度は変わらない。
(らしくねーな、本当に似合ってると思うんだけど…ん?)
どうしたものかと思いながら、桜は藍子の視線が自分の顔の下あたりに向けられていることに気付く。
「桜ちゃんが羨ましい…」
視線をそのままに藍子はぽつりと呟く。
「羨ましい?」
「胸、おっきくて羨ましい」
「!…なっ!」
「制服だと目立たなかったけど、桜ちゃん何でそんな大きいの!?ずるい!」
「し、知るか!」
(つーか、浮かない顔してた原因それかよ!)
桜は胸元を隠すように腕を組む。
「桜ちゃん見てると自信なくしちゃうよ。私、背もちっちゃければ胸も薄いし…」
自身の胸部を見下ろす藍子。
「…気にしなくていいと思うけどな」
「そうできたら楽なんだけどね…」
桜が想像してる以上に藍子は気にしているようだった。
(あー参ったな…何か言うべきなんだろうけど下手なこと言えねーし、あー…)
桜は軽く頭を掻く。
「あ、ごめんね!せっかくのお出かけなのに気分下げちゃうよね、あはは!」
そんな桜の様子を見た藍子が笑って取り繕う。
「あ、ああ…」
桜も藍子に合わせるように表情を緩めた。
「すまん、待たせたな」
「いえ!おかえりなさい」
そしてタイミング良く赤石が戻り、3人は再び映画館へと歩き始めた。
ーーー
「うっ…ぐずっ」
映画館を出てもなお、藍子は啜り泣いていた。
「そろそろ泣き止みなよ…」
藍子の様子に桜は若干困惑する。
「藍子ちゃんの気持ち、わかるな。良い映画だった」
赤石は涙こそ見せないが、映画の内容は心に響いていたようだ。
「まあ良かったけどさ、泣くほどでもないって言うか…」
桜は口ではそう言うものの、赤石は知っている。
「…フフッ」
「な、何笑ってんだ」
「何でもねえよ」
上映中、必死に声を押さえて涙を流していたのを。
「ごめんなさい、もう大丈夫です。えへへ」
泣き止んだ藍子が照れ臭そうに笑顔を作る。
「16時か…このあとは、どうする?」
桜が時刻を確認して問いかける。
「あの、近くですしカードショップに寄ってもいいですか?」
それに答えるように藍子は提案した。
ーーー
「…」
桜はストレージから取り出した1枚のカードに目を奪われている。
「ほお?《バニーラ》か」
赤石が隣で桜の手元を覗く。桜が気付かないうちに隣に居たようだ。
「なっ…!見るな!」
桜は慌てて肩を丸める。
「隠さなくてもいいだろ…」
その様子やりとりを聞いていた藍子が口を開く。
「へー、桜ちゃんウサギも好きなんだね!」
「まあ…な」
「小さい頃は猫一筋だったんだけどな。すっかり小動物全般を愛する子にーーー」
桜は話を遮るように赤石の足を無言で踏む。
「だっ…!いきなり踏むな」
「あ!そうだ桜ちゃん、新しいデッキ何にするかまだ決めてないんだよね?」
「ん?ああ」
「動物が好きなら動物デッキとかどうかな?」
「…」
藍子の提案に桜は黙りこむ。恥ずかしさのせいか素直に即答できないようだ。
「桜ちゃん?」
しかし答えは決まっている。数秒ほど迷ったふりをした末、
「…組めるなら組みたい」
控えめな声で意思を伝えた。