可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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9話 ♯6「昼食のお誘い」

ーーー

 

 

 

綾芽が彼女の家を去って数分後、彼女の携帯電話にメールが着信する。

 

from藍子

「おはよーレイちゃん!もうお昼ごはん食べた?」

 

to麗梨

「まだ」

 

from藍子

「今から一緒にどうかな?レイちゃんと行ってみたいお店があるの!ちょっと遠いけど…」

 

藍子からの昼食のお誘い。彼女は迷わず返信した。

 

to麗梨

「行く、連れてって」

 

from藍子

「じゃあ12時半に桐縹駅に来てね!」

 

to麗梨

「うん」

 

 

 

ーーー

 

 

 

12時半、桐縹駅前で彼女と藍子は合流し、軽く挨拶を交わすと電車に乗って目的の店へと向かった。

 

途中、藍子が彼女に話しかける。

 

「先月オープンしたばかりでね、パンケーキが美味しいって評判なの」

 

「楽しみね」

 

「うん!私も楽しみ。そういえばレイちゃんって甘いもの好きだったよね?って思い出して、いつか一緒に行ってみたいって思ってたの!」

 

ニコッと彼女に笑顔を向ける藍子に対し、彼女も微笑み返す。

 

「覚えててくれて、ありがとう」

 

「えへへ」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「このお店かな」

 

電車から降り駅構内から出て数分、2人は目的の店に到着する。

 

「いらっしゃいませー」

 

入店した2人の方へと1人の店員が近付く。

 

「2名様ですか?こちらの席へ…あ?」

 

そのまま席に案内すると思いきや、店員は2人の顔を見ると怪訝そうな表情を作る。

 

その反応を受けて、藍子も店員の顔を見ると大きく目を開いた。

 

「椎名さん…!?」

 

「何だよ」

 

先程までの営業スマイルが消え無愛想になった店員、椎名。

 

「ここでバイトしてるんですか?」

 

「見りゃわかるだろ」

 

他の店員と同じく椎名は店の制服を着用している。見ての通りアルバイトをしているようだ。

 

「席案内するから」

 

「は、はい」

 

藍子と彼女は歩き出した椎名の後をついて行き、席へと座る。

 

「注文決まったらそこのボタン押して」

 

椎名はそう言い残し、店の奥へと入って行った。

 

 

 

「へえ、びっくりした…椎名さんここでバイトしてるんだね」

 

「似合ってた」

 

「うん、よく似合ってた!椎名さんの笑顔も初めて見たかも」

 

「ちょっとだけ」

 

「あはは、すぐいつもの椎名さんになってたね」

 

藍子はメニューを開く。

 

「どれにしようかなー」

 

「どれもおいしそう」

 

彼女も同様にメニューを見て考える。

 

「レイちゃん決まった?」

 

「うん、スクランブルエッグのパンケーキ」

 

「おお、ごはん系?のパンケーキだね」

 

「甘い系は、あとのお楽しみ」

 

「そうだね、私も同じのにしようかな」

 

藍子はテーブルの呼び出しボタンを押した。

 

 

 

注文を取りに来た店員も料理を運んで来た店員も、椎名とは別の店員であった。

 

椎名はというと店の奥に入ったきりそのままのようだ。

 

 

 

「ふわふわしておいしー!」

 

藍子は美味しそうにパンケーキを頬張っている。

 

「たまごとの相性も、抜群」

 

彼女も美味しそうに口へと運ぶ。

 

「ねえ、レイちゃん」

 

「なに」

 

「このあと時間あるかな?久しぶりに私の家来ない?」

 

「ある、行く」

 

「うん!」

 

藍子は嬉しそうにニッコリと笑った。

 

 

 

「ふーおいしかったねー」

 

「おいしかった」

 

「えっと、デザートどれにしよっか?」

 

食べ終えた2人はデザートのことを考える。

 

(どれもおいしそうだけど…)

 

藍子は軽くお腹に手を置く。

 

(1人分はちょっと多いかな)

 

「アイちゃん」

 

「うん?なにー?」

 

「わたし1人分食べきれない。はんぶんこしよ」

 

彼女は藍子の動作から察したのか、先取りするように提案する。

 

「!…うん、私も同じこと思ってた!いいよ、はんぶんこしよ!」

 

その後注文するメニューを決めると、藍子は再びテーブルの呼び出しボタンを押した。

 

 

 

「うーん甘くておいしー!」

 

藍子は注文したフルーツアイスパンケーキを堪能する。

 

「おいしい」

 

彼女も同じ皿の反対側から取って食べているようだ。

 

「…あ」

 

パンケーキを口に運ぶ彼女の顔を見て藍子は声を漏らす。

 

(ふふっ、レイちゃん声は冷静だけど、ほっぺた緩んでる…!)

 

「?」

 

彼女の疑問の表情に対し、

 

「ううん、何でもないよ!」

 

(レイちゃんと一緒に来て良かった!)

 

藍子はニコっと笑って返した。

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

食事を終えた2人が会計を済ませ店を出ようとした時、

 

「待て」

 

席に案内して以来、店の奥に入ったきりだった椎名が2人の前に姿を現す。

 

「!…あ、椎名さん」

 

藍子は椎名の方へと顔を向ける。その藍子に対し椎名は少し鋭い目付きで、

 

「余計なことは言うなよ」

 

と言い放ち視線を逸らす。

 

「言わないよ。それより椎名さん」

 

「何だ?」

 

「パンケーキ、すごくおいしかったよ!ね、レイちゃん」

 

椎名の態度とは対照的に藍子は笑顔で話す。

 

「うん。また食べたい」

 

「…」

 

椎名は視線を逸らしたまま何も答えない。

 

「あ、もしかしてあのパンケーキ椎名さんが作ってくれたの?」

 

「違う。ウチは片付けしてただけ」

 

視線を戻し無愛想に否定する椎名。

 

「そっか。ねえ、また食べに来てもいいかな?」

 

「…勝手にしろ」

 

椎名は少し間を置いて答え、店の奥へと戻って行こうとするが、

 

「椎名さん」

 

彼女に名を呼ばれ振り返る。

 

「次はずっと笑顔の椎名さんでお願いします」

 

彼女は椎名に見せつけるかのようにニコっと小さな微笑みを見せる。

 

「やっぱ来んな」

 

椎名はそう言い残すと、再び店の奥へと戻って行った。

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