可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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♯S-3「追加エピソード1・2」

時は前日に戻り、6月24日。午後5時半。

 

桜はいつもの様に夕食の準備をする。

 

(あとは炒めるだけだな)

 

あらかた仕込みが終わると軽く片付けをしてから部屋に戻った。

 

 

 

(へえ、こういう組み合わせもあるのか)

 

レシピ投稿サイトに投稿された料理を閲覧しながら感心する桜。時折このようなサイトを覗いてはレパートリーを増やしている。

 

(今度作ってみるか)

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

午後6時、兄の赤石が帰宅する。

 

「おかえり。遅かったな」

 

「ああ、ちょっと買い物にな」

 

「先ごはん食べる?」

 

「そうだな。桜」

 

「あ?」

 

 

 

「誕生日おめでとう」

 

「!…」

 

(あ、そっか今日…)

 

兄に言われて桜は今日が何の日であるかを思い出す。

 

「これプレゼントだ。開けてみな」

 

「あ、ありがとう…」

 

プレゼントを受け取った桜がラッピングを解く。現れたのは黒色の小さい箱。

 

(何だろう…?)

 

桜はそう思いながら箱を開けた。

 

 

 

「!…こ、これって!」

 

箱の中身を見て桜は驚きの表情を浮かべ、そのまま兄の顔を見る。

 

「あの時ずっと見てただろ。欲しいんじゃねえかと思ってな」

 

桜が驚いたその中身、それは先端に猫を象った銀色がぶら下がっているネックレス。

 

「っ…!」

 

(兄貴にも見られてたのか…!)

 

それは土曜日、藍子と赤石の3人で出かけた時にショッピングモールで見つけたネックレスだった。

 

「た、高かったんじゃねーのか…?」

 

桜は兄に問うが、

 

「さあな。ネックレス買ったことねえからよくわからん」

 

返ってきたのはファッションに疎い赤石らしい言葉。

 

「…」

 

「値段のことなら気にすんな。それより晩飯だ。食後のケーキも買ってきたからな」

 

赤石はケーキの入った箱を見せながら桜に微笑みかける。

 

「う、うん…兄貴」

 

赤石は桜の言葉を待つ。

 

 

 

「ありがとう。大切にする」

 

桜は照れ混じりに不器用な微笑みを返した。

 

 

 

ーーー

 

 

 

彼女が柴岡と勝負した日の夜、居酒屋からの帰り道でそれぞれ別れた後…

 

 

 

紫はヘズの肩を借りながらなんとか家にまで辿り着いていた。

 

「おいユカリ、鍵はどこダ?」

 

「うひろのポケットー」

 

酔っている紫が舌足らずな声で鍵の在り処を示す。

 

ヘズが後ろのポケットに手を入れた瞬間、

 

「ヘズのえっちー、おひり触らないのー」

 

と妙に上機嫌な声が飛んでくる。

 

(面倒な酔っぱらいだナ…)

 

このまま置いて帰ろうかと思ったヘズだったが、流石にそんなことはせず、紫の声は無視して鍵を取りドアを開けた。

 

 

 

「ベッドまでお願ーい」

 

家に入った途端、紫からの要望。

 

「はいヨ」

 

ヘズは肩を貸したまま渋々紫をベッドまで運ぶ。

 

「ほら、着いタ」

 

「うんー」

 

ヘズが肩から手をほどくと、紫は飛び込むようにベッドへと寝転んだ。

 

ああー、と心地良さそうな声を漏らしながら紫は寝返りを打ち、仰向けになる。

 

「!…」

 

その拍子に服が少々はだけたようで、肩からピンク色の紐が現れる。

 

(だらしないナ…酒は人を変えさせるネ)

 

「おいユカリ、見えてル」

 

ヘズは呆れながらも注意をしておく。

 

「何がー?」

 

「自分の肩を見ロ」

 

それを聞いて紫は自分の肩へと視線を落とす。

 

しばらくぼーっと見つめていた紫だったが、突如何かに気が付いたかのように挑発的な笑みを浮かべた。

 

「あーなるほどねー…興奮したー?」

 

紫の問いにヘズは布団を掴むと、

 

「ブフォ!」

 

これが返答と言わんばかりにバサッと頭から覆い被せた。

 

「酔っぱらった女を抱く趣味は無イ」

 

きっぱりと言い放ち、ヘズはベッドから背を向ける。

 

「じゃあオレは帰るからナ。鍵閉めておけヨ」

 

布団の中でもごもご、と何か喋る紫をよそにヘズは去って行こうとするが、

 

「ちょっとこらー!ヘズー!」

 

ガバッと布団をめくり上げた紫に呼び止められる。

 

「何ダ?」

 

面倒くさそうに振り向いたヘズに、

 

 

 

「サンキューな、助かった」

 

紫は笑顔を見せた。

 

「どういたしましテ。おやすミ」

 

「おやすみー」

 

ヘズは答えるように軽く手を振って去って行った。

 

 

 

結局、紫は鍵を閉めることなくそのままベッドの上で頭痛と共に朝を迎えるのであった。

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