可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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11話 ♯3「庇った人」

「高校生活はどう?」

 

「忙しいですが、充実してますわ」

 

「何かやってるの?」

 

「生徒会長を務めております」

 

「さすがね。琥珀ちゃんならみんなを上手くまとめられるわ」

 

「ありがとうございます」

 

私が泣き止んだあとは、いつもしていたようなとりとめのない話。

 

積もっていた話題は尽きずに次から次へ。離れていた時間を埋めるかのように続いていく。

 

 

 

気が付けば夜を迎えようとしていた。

 

「お嬢様、夕食の準備が整いました」

 

扉越しにメイドが呼びかける。

 

「今行きます」

 

「藜霞様もご一緒にいかがでしょうか?」

 

そして藜霞お姉様へのお誘い。久しぶりに藜霞お姉様と食事を共にできるかな、と淡い期待を抱いた束の間、

 

「ワタシはいいや」

 

お断りの返事。そんな気はしてましたが、やっぱり言葉にされると寂しいです。

 

「かしこまりました」

 

メイドも残念そうな声を残し、部屋から遠ざかって行く。

 

食べて行けば宜しいのに、とは言えません。藜霞お姉様の立場を考えますと、その選択は出来ないと思いますから。

 

「また今度どこか食べに行きましょ。2人で」

 

寂しそうな顔を浮かべる私に気を使うかのような藜霞お姉様の言葉。

 

「はい…!」

 

そのお気持ちだけでも私は嬉しさでいっぱいです。

 

 

 

その後私は食堂へ、藜霞お姉様は鶸櫨の宿泊しているホテルの方へと戻られました。近いうちにまた会う約束をして。

 

この日の夕食はいつもより美味しく感じました。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「別に飯くらい食っても良かったんじゃねえか?そんなに貸しを作るのが嫌かねえ」

 

「アナタを見てるとそう思うわ」

 

「そうか」

 

黒川は小さくフッ、と笑う。

 

「本当は家にお邪魔するのも躊躇したんだけど、それは避けて通れないから」

 

「もう家には行かねえのか?」

 

「今は、そのつもり。もう驚いてくれないだろうし」

 

「本当は反省してねえだろ…」

 

「してるわよ。ちょっとだけ」

 

(全く、困ったお嬢様だ)

 

黒川は呆れを含んだ笑みを浮かべた。

 

「じゃあ俺はもう出るが、お前はどうする?」

 

直後、黒川は席から立ち上がる。

 

「もうしばらく残るわ」

 

「そうか。金は俺が払っといてやる」

 

「いいの?わーい、負け分半分消えたー」

 

「言っとくが、貸しだからな」

 

「えー」

 

「来週、てっぺん取ったらチャラにしてやるよ」

 

黒川は冗談交じりにそう言い残すと店を去った。

 

 

 

(もう、チャラの難易度高すぎるわ)

 

黒川が去って間も無く、藜霞はランチを食べ終える。

 

(けど同じことね)

 

(鶸櫨記念、必ずてっぺん取って見せるわ)

 

 

 

ーーー

 

 

 

「あ、おかえり、れーりちゃん」

 

「ただいま」

 

昼休み半ば、彼女が教室に戻ってくる。

 

「何の用だったの?」

 

「一緒に、パズル解いてた」

 

「そうなんだー…なんか、すごそう」

 

(パズルを解くために数学の先生に呼び出される生徒って…)

 

綾芽は彼女に尊敬の眼差しを向ける。

 

「麗梨さん、どんなパズルだったんですか?」

 

「…むずかしかった、まだ解けてない」

 

彼女は少し硬くなった表情でそれだけ言うと昼食を再開した。

 

(葛城先生と麗梨さんでも解けないパズル…相当な難問みたいですね)

 

 

 

ーーー

 

 

 

その日の放課後。

 

帰り道の途中、赤石は普段通り公園を横切ろうとしたが、

 

「…あ?」

 

公園で繰り広げられている光景を目にして立ち止まる。

 

「ほらほーら、取り返してみろよー」

「こっちだこっち、ほいパス」

「ナイスパス!ヒュー」

 

小学生くらいの男の子数人がバスケットボールのように何かをパスで回している。

 

それらに翻弄されているのは同じく小学生くらいの1人の女の子。

 

遠目からでも大体の状況は把握できる。男子数人と女子1人の表情や動きも加えれば、自ずと出てくる答えは…

 

(…)

 

しかし、赤石は介入しようとせず、ただ遠目で見るのみ。

 

(まあ、小学生にありがちな遊びといえばそれまでだが…)

 

いじめ、とは断定はできない。案外友人同士で遊んでいるだけかもしれない、と思いながら赤石はあることに気付く。

 

(ん?あの子、確か…)

 

顔を確認しようと女の子の方へと視線を移した瞬間、パス回しされていた何かが勢いよく赤石の前を通過し、隣接する道路まで転がっていく。

 

(拾いに行くか?いや今はーーー)

 

それに続くように女の子も道路の方へと飛び出した。

 

(!…まずい!)

 

赤石からは見えていたが、転がった何かを夢中で追いかけていた女の子は気付いていなかった。

 

 

 

向かってくるトラックの存在に。

 

赤石は鞄を放り出し、全速力で女の子目がけて接近する。

 

(ぐっ!間に合え!)

 

女の子も拾い終えたタイミングでようやくトラックの存在に気付いたが、突然の迫りくる脅威に対応できるはずもなく…

 

 

 

赤石が飛び込んだ瞬間と、時ほぼ同じくしてトラックのブレーキ音が響き渡った。

 

停車したトラックから運転手が降りて、倒れ込んだ2人の元へ駆け付ける。

 

「だ、大丈夫か!?」

 

その声に反応して顔を上げたのは、女の子の方だった。

 

「は、はい!でも…!」

 

女の子は自分を庇ってくれたその人物に目を向ける。

 

「おい兄ちゃん!大丈夫か!?」

 

その人物、赤石はうつぶせで倒れたまま動かない。

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