可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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11話 ♯10「闘った2人」

「《E・HERO アナザー・ネオス》再度召喚」

 

えっ、と琥珀は思わず声が出る。

 

デュアルデッキにおいて《E・HERO アナザー・ネオス》は重要なモンスターではあるが、それはサポート対象やコストまたは素材としてであり、自身の効果を活用する機会はまず無い。

 

「何で再度召喚したんだ?このターンの召喚権無くなっちまったぞ」

「逆転のカードが来なくて諦めたとか?」

「ま、これでもう決まったかな」

 

故に観客たちもその行為にざわつき、後ろ向きな解釈をする者も現れた。

 

「バトル、《E・HERO アナザー・ネオス》で《宝玉獣 サファイア・ペガサス》に攻撃」

 

藜霞はというと周囲の様子などお構いなしに淡々とデュエルを進める。

 

(《宝玉獣 サファイア・ペガサス》に攻撃、ということは手札に《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》を破壊できる魔法カードがあるということでしょうか?)

 

琥珀には《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》の効果で《宝玉獣 サファイア・ペガサス》を墓地に送るという選択もあったが、当然その選択は取らず。

 

そうしたところで得られるメリットはたった100のLPであり、魔法&罠ゾーンに置かれるはずの《宝玉獣 サファイア・ペガサス》が墓地に送られるデメリットの方が遥かに大きい。

 

(《虹の古代都市-レインボー・ルイン》の効果は…取っておきましょう。何かあるかもしれませんし…)

 

「受けます。《宝玉獣 サファイア・ペガサス》は破壊されますが、効果を発動して自身を魔法&罠ゾーンに置きます」琥珀LP2250-100=2150

 

それに琥珀の手札にはあのカードがあった。

 

(これで私の魔法&罠ゾーンには宝玉獣が4体…)

 

 

 

(《宝玉の氾濫》の発動条件が整いましたわ…!)

 

つまり《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》を破壊されたとしても、返しのターンで《宝玉の氾濫》というもうひとつの切り札で勝負を決めることが可能となったのである。

 

藜霞にとってはこのターン中に《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》と魔法&罠ゾーンの宝玉獣を1枚以上除去するか、あるいはLPを削り切るしか勝つ道は無い。

 

だが藜霞のフィールドには攻撃できるモンスターはもう存在せず、少なくともデュアルデッキでは後者は不可能のように思えた。

 

 

 

しかし藜霞の次の一手は、この状況をひっくり返しそれを可能にした。

 

 

 

 

 

「《超融合》発動」

 

「!?」

 

「《E・HERO アナザー・ネオス》と《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》で《レインボー・ネオス》を融合召喚」

 

(そんな…!《レインボー・ネオス》ですって…!?)

 

その何かが起こった。《超融合》によって現れたのは《レインボー・ネオス》。無意味に思えた再度召喚は、このためであった。

 

開いた口が塞がらない様子の琥珀。観客たちも一様に度肝を抜かれたのか「すげえ…」「マジかよ…」といった声が漏れるばかり。

 

(EXデッキに入っててよかったわ)

 

藜霞に貸し出されたデッキのEXデッキは全てE・HERO、または《E・HERO ネオス》が素材の融合モンスターで固められていた。

 

その中には最も召喚される機会が少ないであろう《レインボー・ネオス》も投入されており、もしEXデッキの15枚から漏れていたとしたらこの逆転は起こらなかった。

 

 

 

「バトル、《レインボー・ネオス》で攻撃」

 

琥珀の残りLPは2150。《虹の古代都市-レインボー・ルイン》の戦闘ダメージを半減する効果はこのターン未使用であったため、発動することはもちろん可能である。

 

しかし、それを発動したところで同じこと。結局は自身のLPを上回ってしまう。

 

 

 

藜霞の引いたカードはそれほどまでに大きかった。

 

「…受けます」琥珀LP2150-2250=0

 

数年ぶりとなる藜霞と琥珀のデュエルは、藜霞の勝利で決着となった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「今日は楽しかったですわ」

 

「ワタシもよ」

 

2人は少し日が落ちてきた桐縹の町を歩く。あの後ももちろん1戦だけでは終わらず、久々のデュエルを何度も楽しんだ。

 

「やはり藜霞お姉様には遠く及びませんでしたわ」

 

「でも琥珀ちゃんも強くなってたわ」

 

「ありがとうございます。あの頃と比べれば私も成長したと思います。けれど藜霞お姉様との差は縮まるどころか、むしろ広がったように感じました」

 

「プロになってからずっとカードとデュエルばっかりだったからね、まだまだ育ち盛りよ」

 

藜霞に限らずプロは一般人に比べてカードに触れる機会、デュエルに費やす時間が圧倒的に多い。その分、実力差が開いていくのは当然である。

 

しかし琥珀は、その差に悔しさどころか喜ぶような表情を見せた。

 

「私、それが嬉しくて…私が敵わない強い藜霞お姉様とたくさんデュエルできて幸せでした」

 

「大げさね、デュエルならいつでもできるわよ。電話一本で駆けつけてあげるわ」

 

「さ、さすがにそのようなことは…!」

 

琥珀は恐れ多いといった様子で慌てる。

 

「まあ、いついかなる時っていうのは難しいけど、あらかじめ言ってくれれば何とかするわ」

 

「は、はい…!お呼び立てする際はご連絡差し上げますわ」

 

「うん」

 

「ですので、藜霞お姉様もこちらにお越し下さる場合は事前の連絡をお願いしますね?」

 

「えー」

 

「えー、じゃありません!お願いしますね?」

 

琥珀の念押しに、

 

「…わかったわ」

 

藜霞はちょっぴり不服そうに答えた。

 

 

 

やがて2人は琥珀の家の前へと到着する。

 

「名残惜しいですが、メイドが待っていますので…」

 

琥珀は寂しく思いながらも藜霞に向かって微笑む。

 

「夕飯が冷めちゃうものね」

 

「はい…あの、藜霞お姉様」

 

「なに」

 

「鶸櫨記念、応援していますわ。藜霞お姉様なら必ず優勝できると信じております」

 

「あら、そう言われるとプレッシャー感じちゃうわ」

 

「あっ、ご、ごめんなさい…」

 

「冗談よ」

 

「もう…」

 

琥珀と藜霞はお互い見つめ合ったまま数秒の静寂が訪れる。

 

「優勝の知らせ、届けてあげるわ」

 

「はい、待っています」

 

藜霞が優しい笑みを浮かべると、琥珀も笑顔で返す。

 

その返事に満足した藜霞は反対側に振り返ると、帰りの道を歩いて行く。

 

(藜霞お姉様…今日のことは忘れません)

 

琥珀は一歩一歩遠ざかって行く藜霞の背中を視界から切れるまで見送った。

 

 

 

ーーー

 

 

 

夕刻、彼女の携帯電話が鳴動する。

 

「はい」

 

「ねえ、今桐縹にいるんだけど、ご飯一緒にどう?」

 

通話の相手は先程まで琥珀と一緒だった藜霞。

 

「はい、ご一緒します。食べたいもの、ありますか?」

 

「そうね、定食系の気分だわ」

 

「わかりました。30分後に桐縹駅でいいですか?」

 

「いいわ。じゃあまた30分後に」

 

「はい」

 

通話が終了すると、彼女は準備をして待ち合わせ場所へと向かった。

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