扉を開けた彼女へと一斉に視線が向けられる。
「何だお前?」
「おいおい見張りは何してんだ?」
彼女は部屋を見渡す。
(男子生徒が5人。先生はいない、そして…)
「れ、れーりちゃん…!?」
「瑞希…」
瑞希は目元に涙を溜めていた。
「こいつ誰だ?1年か?」
「あ、俺知ってる。1年の鈴瀬だろ?1年にすげーかわいい子がいるって話題になってたあれ」
「あーそんなこともあったな」
「…」
彼女は答えない。
数秒後、2人の男子生徒が慌てて入室する。
「す、すまん!不意を突かれた」
「おいコラ!どういうつもりだ!」
男子生徒は入室するなり彼女に詰め寄る。
「やめろ」
準備室の奥にいる1人の男子生徒が落ち着いた声で詰め寄った男子生徒を止める。
「赤石(アカイシ)、でもよ…!」
「いいからそいつから離れろ」
「…ちっ!」
男子生徒は彼女から離れた。
「麗梨さん!」
遅れて綾芽も慌てて入室する。
「何だ?仲間もいたのか」
「この女に気を取られてたんだよこいつ」
「お前もだろ!」
「騒ぐな、静かにしろ」
赤石と呼ばれた男子生徒が静止を促した。
「ここに来るってことは相応の理由があるってことだ」
赤石は彼女の目を見て言う。
「…この子、瑞希はわたしの大切な友達。瑞希に何したの?」
「見ての通りデュエルしてただけだ。それ以外は何もしてねえよ」
「デュエル?」
「ああ」
赤石は彼女にここまでの経緯を話した。
彼女のクラスではいじめが起きていた。主犯格は杉野(スギノ)という男子生徒。
クラスメイトの大半はいじめの矛先が自分に向くことを恐れ見て見ぬふりをしていた。
しかし反抗する者もいた。瑞希は数少ないその内の1人だ。
瑞希は杉野に対しいじめをやめるように何度も注意した。
杉野は瑞希を鬱陶しく感じていたが、女子生徒であるということから手を出さず無視していた。昨日までは
ーーー放課後
「おい、中根」
杉野が瑞希を呼ぶ。
「何?」
「お前よくここまで俺に楯突いてくるよな。飽きねぇのか?」
「あなたがくっだらないいじめをやめないからでしょ!」
「…やめてやってもいいぜ」
「えっ?」
思わぬ発言に瑞希はきょとんとする。
「やめてやってもいいが条件がある。今から準備室に行け」
「…どういうこと?意味わかんない。何か企んでるの?」
「行けばわかる。まあ、別に行かなくてもいいぜ?その方が俺もいつも通りにやれるし」
杉野は余裕を見せる。
(あからさまに怪しい。けど、いじめをやめるというのなら…!)
「…わかったわ。行けばいいんでしょ。ちゃんと約束守ってよね!」
「ああ」
瑞希は準備室へと向かう。
(ヘッ、あいつには一度痛い目を見てもらわんとな)
杉野は瑞希の後姿を見ながらにやりとした表情を浮かべた。
「よう、お前が中根か?」
椅子に座った男子生徒が入室した瑞希に話しかける。
(この人たち、上級生?)
「…そうだけど?」
「おっと、お前1年だろ?3年の俺らには敬語使って欲しいよなあ?」
準備室には男子生徒が7人。全て3年生だ。
「杉野から話は聞いてるぜ?俺は北林(キタバヤシ)っていうんだ。まあ座れや」
瑞希は無言で椅子に座る。話しかけた男子生徒、北林とは机を挟んで丁度対面の位置だ。
「まさか本当に来るとは、正義感の強い子だねえ。俺そういう子大好き」
(何これ…よくわかんないけど、こういう言い方する人、私は嫌い!)
「そういうのはいいですから早く本題に入って下さい。時間の無駄です」
瑞希は毅然とした態度で返す。
「なあ、今の状況わかってる?男7人に女1人だよ?あんまり機嫌損ねない方がいいよ?」
北林が呆れたような表情で問う。
「言っとくが何もしねえって思ってるなら…それは大間違いだからな?」
別の男子生徒の1人が瑞希の顔に近付き威圧する。
(お、脅しには屈しないんだから!)
瑞希は表情を変えまいと堪える。
「…まあいい、本題に入る」
「俺との勝負に勝ったら杉野にはこれから先大人しくするように言ってやるよ」
「だがもし負けたら…今日1日俺らに従ってもらおうか」
北林から条件が提示される。
「従う?」
「言葉通りさ。どんな命令でも従ってもらう」
男子生徒たちはニヤニヤと笑みを浮かべている。