(!…そ、それって!)
「い、嫌よ!ふざけないで下さい!そんな勝負受けられるわけないじゃないですか!」
「ほーん、やっぱり自分の身がかわいいのか」
「な…!」
「所詮お前の正義感はその程度のものだったってことか。まあそんなもんだよなハハハ」
北林は瑞希を煽っていく。
瑞希もこれが挑発の一種だと理解しているが…
「…違う。そんなことない!」
抑えられない。自らの正義感と負けず嫌いな性格が逃走を許さなかった。
「いいわ!その勝負受けてやるわよ!」
男子生徒たちはしめしめと笑みを浮かべている。
ただ1人、赤石を除いて。
「よく言った、じゃあ」
「待って!」
瑞希は北林の話を遮る。
「私が勝ったらちゃんと約束は守るんでしょうね?」
「ああもちろんだ。お前こそ守るんだろうな?」
「あ、当たり前でしょ!」
瑞希は半ば怒り気味に答える。
「安心しろ。どういう結果になろうが約束は果たす。だから勝負に集中しな」
赤石が瑞希を顔を捉えてゆっくりと口を開く。静かだが力強いその言葉で場が引き締まった。
その空気を察した瑞希は約束を反故にされるという心配が消えると同時に、この場にいる人間の中で赤石が一番上だと悟った。
「…それで、勝負って何するんですか?」
「デュエルさ」
北林はカードの束を机の上に出す。
(デュエル…!)
「できるんだろ?お前がデュエルしてるとこ何度か見たって杉野が言ってたぜ」
「まぁ、ルールは知ってます」
「そうか。ただ今からやるのはちょっとルールが変則でな」
北林はそう言うと、机に出したカードの束を横へと流しながら広げる。
「使用するカードはモンスター10枚、罠10枚の計20枚。これをお互い10枚ずつに分けて、それをデッキにしてデュエルをする。5分やるからしっかり確認して覚えな」
北林は携帯電話を取り出しタイマーを起動した。
瑞希はカードを手元に手繰り寄せて確認する。
~カード一覧~
《雷仙人》
《デス・ウォンバット》
《逆ギレパンダ》
《ゴブリン突撃部隊》
《機動砦のギア・ゴーレム》
《人喰い虫》
《ステルスバード》
《ヂェミナイ・エルフ》
《ランス・リンドブルム》
《ランス・リンドブルム》
《聖なるバリア -ミラーフォース-》
《仕込みマシンガン》
《停戦協定》
《邪神の大災害》
《ドレインシールド》
《魔法の筒》
《ギフトカード》
《万能地雷グレイモヤ》
《炸裂装甲》
《炸裂装甲》
(5分か…覚えられるかな)
(魔法カードが無いのが気になる。何か理由があったりする?)
瑞希が疑問を抱き始めた時、北林が口を開く。
「まあ基本的にはスピードデュエルと同じだ。が、いくつか追加ルールがある」
「追加ルール?」
北林は瑞希に追加ルールを説明した。まとめると、以下の通りだ。
初期LPはスタンダードデュエルと同じく8000。
攻撃宣言する度に500LPを支払う。
罠カードを発動する度に500LPを支払う。
罠カードは相手の攻撃宣言時のみ発動できる。
この支払うLPというのは当然コストであり、500LP以下の状況ではどちらも行えなくなる。
フリーチェーンの罠も同じように相手の攻撃宣言時のみ発動可能だ。
「俺らはこのルールのデュエルを『度胸試し』と呼んでいる」
「度胸試し、ね」
「…っていうかこのタイミングでルール説明しないで下さい!せっかく覚えてるんだから!」
瑞希は不平をぶつける。
「そんくらいすぐ覚えれるだろうが。ほらあと30秒」
「うそ!?」
「本当」
瑞希は慌てて何度もカードを見返す。
そして、
ピピピピッと5分経過のアラームが鳴り響いた。
「ほれ、カードを寄越せ」
(うー微妙に覚えきれてない…)
北林は瑞希からカードの束を受け取ると、モンスターと罠を分け別々の束にする。
「まずお互いのデッキ構成がモンスター5枚、罠5枚のデッキになるように分ける」
「俺はモンスターをシャッフルするからお前は罠をシャッフルしろ。シャッフルが終わったら裏のまま5枚ずつ振り分けてまたシャッフルだ。それがデッキになる」
瑞希は北林に言われた手順をこなし、モンスターと罠が混ざった束、すなわちデッキを1つ選ぶ。
「先攻後攻を決める」
じゃんけんの結果、先攻は北林。
「じゃあ始めるか」
(さあ、お楽しみの時間だ)
(ぜったい勝つ!)
瑞希にとって負けられないデュエルが始まった。