「おい、ルールブック渡してやれ」
若者は年配の店員を呼び寄せた。
「初めましてお嬢さん。店主の青葉(アオバ)と申します。こちらがハウスルールでございます。ご質問があれば遠慮ならさずにお聞きください」
彼女にルールブックが渡される。ルールブックといっても数ページの薄い冊子のようなものだ。
「…どうも」
彼女はそっけなく礼を言う。
(この人もグル…?)
彼女の警戒心はかなり強まっていた。そんな心境を見透かしたかのように青葉が口を開く。
「ご心配なさらずとも私は中立でございます。信用できませんかな?」
二人はお互いの目を見つめ合う。第三者からは同じように見えるが、その質は違うものである。
青葉の視線は彼女を試しているような目であるのに対し、彼女の視線はその人物が信用できるかどうかを見定める目だ。
(…いや、この人は違う。なんとなくだけどそこの2人とは別のにおいがする)
彼女は自分の目と直感を信じることにした。
「いえ…良ければ審判をお願いできますか?」
「かしこまりました。僭越ながら今回の勝負の審判兼進行役を務めさせていただきましょう」
彼女はチラっと若者の顔を覗くがその表情に特に変化は無い。
そのまま冊子を開き視線を落とした。
(どういうルールなんだろう)
そのまま約数分間目を通した。見落としの無いように何度も見返す。
(…なるほど、【スピード】の亜種)
スピードとはデッキ10枚、モンスターゾーン魔法罠ゾーン3ヶ所まで、初期手札3枚に手札上限4枚で行われる高速デュエル。
かつてのデュエルターミナルのそれと同じ種類だ。ただし【スタンダード】と呼ばれる一般的な大会公式ルールではないため、店によってそれぞれ細かな違いはある。
例えば今行われようとしてるデュエル。先行ドローあり、初期ライフ2000。ここまではいい。問題なのは使うカード。
「青葉さん、質問いいですか?」
「はい、何でしょう?」
「使用カードについては店員からの説明がありますってどういうことですか?」
「それはですな…」
青葉はポケットから5枚のカードを取り出し、裏側のままテーブルに並べる。
カードはそれぞれ違う色のスリーブに入っており、左から青・黄・緑・赤・黒色の順だ。
「使用カードにつきましては、こちらで選ばさせて頂いた20枚のカードの中からお互い15枚選んで頂きます」
「選んで頂いた15枚からメインデッキとなる10枚を選んで頂き、残りの5枚のカードはサイドデッキとして次戦以降メインデッキのカードと入れ替えることが可能です」
「こちらに並べました5枚のカードは、いわばその最初の20枚を決めるクジのようなものでございます。ご理解されましたかな?」
青葉は彼女に確認を問う。
「最初の15枚選ぶ時に選ばれなかった5枚は公開されますか?」
「いいえ。最後まで非公開情報でございます。私が責任を持って情報をお守り致します」
「わかりました。…他に質問はありません」
「では、お選び頂けますか?」
「…わたしが選んでいいの?」
彼女は若者にたずねる。青葉の説明通りならば、これから行うデュエルを大きく左右する選択肢だ。
「おう選べ選べ」
しかし、尋ねられた本人は余裕綽々といった感じである。
(最初の運試し…)
彼女は赤いスリーブに入ったカードを選択した。
「そのままめくって下さいますかな」
クルッとカードが表になる。
「ほう、【ヂェミナイ・エルフ】ですな」
最初期に出た通常モンスターカードだ。フォーマットも最初期のものとなっている。
「ならば、【レトロ】ですな。」
青葉はそう言うと店の奥の引き出しからカードの束を取り出す。
「お二方、スリーブは赤と黒がございますがどちらになさいますか?」
引き出しの前で青葉が問いかける。
「黒で頼むわ」
「わたしは、赤で」
「かしこまりました」
青葉は若者に黒スリーブに収納されたカードの束を、同じく彼女に赤スリーブの束を渡した。
「さて、お二方には同じ20枚のカードをお渡ししています。こちらが【レトロ】のカードセット表でございます。各自ご確認を」
渡された紙にはこう書かれてある。
ハウス黒蠍ルール カードセット「レトロ」
1ヂェミナイ・エルフ
2首領・ザルーグ
3疾風の暗黒騎士ガイア
4ビッグ・シールド・ガードナー
5俊足のギラザウルス
6スピア・ドラゴン
7ならず者傭兵部隊
8人造人間-サイコ・ショッカー
9ペンギン・ソルジャー
10スケルエンジェル
11サイクロン
12月の書
13地割れ
14強制転移
15死者蘇生
16硫酸のたまった落とし穴
17神の宣告
18魔法の筒
19聖なるバリア -ミラーフォース-
20激流葬
カードセットと中身が異なっていた場合、従業員に申しつけ下さい。
またリストと異なるカードセットでデュエルをした場合、反則負けとなりますのでご注意下さい。