可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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3話 ♯11「本当の度胸試し」

赤石と彼女、机を挟んで対峙する2人。

机の中央に置かれた札束は一際強い存在感を放ち続けている。

 

「その金といい手捌きといい、お前素人じゃねえな」

 

「やっぱり気付いてたんですね」

 

「ああ」

 

彼女の返答は素人ではないことに対してではなく、先程のデュエルのことに対してである。

 

 

 

 

 

ーーー北林と彼女のデュエル開始直後

 

 

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」

 

(残念だがお前に勝ち目は無い。何せお前のカードが丸わかりだからな)

 

既に室外に出た見張りの1人が彼女の手札を覗きこんでいる。

 

(学校だけれど、ここは敵地。何をしてくるかわからない)

 

「《ランス・リンドブルム》召喚」

 

「カードセット、もう1枚セット。エンド」

 

 

 

北林手札1枚 LP8000

モンスター 1枚  《ランス・リンドブルム》表攻

魔法罠 セット2枚

 

彼女手札3枚 LP8000

モンスター 0枚

魔法罠 0枚

 

 

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」

 

(今のところ特に不審な動きはないけど…)

 

「カードをセット」

 

(さあ、何を伏せたのかなあ?)

 

北林は見張りへと視線を移す。

 

『伏せたカードは魔法の筒。手札の3枚は機動砦のギア・ゴーレム、人喰い虫、ランス・リンドブルムだ』

 

(なるほどねえ)

 

北林は合図を受け取りほくそ笑む。

 

 

 

(あれ?わたしを見てた…いや、わたしの後ろ)

 

彼女は北林の視線の先を辿る。振り返るまでもなく北林の視線の先に存在する見張りを、その視線が意味するものを理解した。

 

(…だとしたら)

 

彼女は手札を持つ位置を見張りから見えないように調整し

 

(確かめる)

 

カードをセットする直前、そのカードと手札のカード1枚をすり替える。

 

「モンスターをセット」

 

北林は気を緩めてすり替え行為に気付かず、見張りもその立ち位置からでは確認できない。

故に見張りはすり替える前の情報を伝えてしまう。

 

『伏せたモンスターは機動砦のギア・ゴーレムだ』

 

彼女のそばで見ていたはずの瑞希と綾芽も同様に気付かないのだから、彼女の行為に男子生徒たちが気付けるはずも無かった。

 

 

 

 

(…ほう、こいつ)

 

ただ1人を除いては。

 

(!…見られた?)

 

彼女はこちらに向けられた赤石の視線に一瞬ドキッとするが、赤石が特に何かをする気は無さそうなのでそのままデュエルを進める。

 

(野暮なことはしねえよ。…北林もついてねえな)

 

赤石はほんの少し口角を上げた。

 

「ターンエンド」

 

 

 

結局彼女は先程のデュエルで3回すり替えをし、赤石以外に気付かれることなく勝利を収めた。

 

見張りは最初から最後まで裏切ってなどいなかった。見えているというアドバンテージにあぐらをかき、勝負が決してしまうまで違和感に気付かず彼女を疑わなかった北林の完敗である。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「さっきお前がやったのは度胸試しとスピードデュエルを混ぜた派生ルールだ」

 

赤石は先程のデュエルで使用したカードをモンスターと罠に分け束にする。

 

「使うカードは一緒ですか?」

 

「ああ。モンスターと罠、どっちか選んでシャッフルしな」

 

彼女は罠の束を選び、赤石は残ったモンスターの束をシャッフルする。ここまで流れも同じだ。

 

 

 

「よく混ぜたか」

 

「はい」

 

「それじゃあ裏側のまま両方のフィールドにセットしな」

 

「えっと、全部?」

 

「ああ」

 

彼女は罠をお互いの魔法罠ゾーンにセットする。

 

赤石も同様にモンスターをモンスターゾーンにセットしていく。

 

「これが開始時の状態だ」

 

お互いのモンスターゾーンと魔法罠ゾーンにそれぞれ5枚ずつ、計20枚のカードがセットされている。いわゆるフィールドが埋まった状態だ。

 

「それで、いくつか追加ルールがある」

 

赤石はおさらいの意も込めて先程のデュエル前と同じようにルール説明をする。

 

初期LPはスタンダードデュエルと同じく8000。

攻撃宣言する度に500LPを支払う。

罠カードを発動する度に500LPを支払う。

罠カードは相手の攻撃宣言時のみ発動できる。

 

内容は同じだ。追加されたルールは次から

 

 

 

「反転召喚は1ターンに1回までだ」

 

モンスターが5体並んでいる状態から開始されるこのデュエルでは、反転召喚は通常の召喚と同じような役割を持つ。

 

 

 

「先攻1ターン目から攻撃してもいい」

 

これもフィールドが埋まっているこのデュエルならではのルールだ。

 

 

 

「先に相手のLPを0にするか、相手フィールドのカードを0枚にした方が勝ちだ」

 

相手ターン開始時相手のデッキ0枚という勝利条件が無くなり、相手フィールドのカード0枚に変更される。つまりフィールドにあるカードが命そのものになる。

 

 

 

「デュエルの仕様上、たまに膠着状態に陥ることがある。そうなった場合はその時点でLPの多い方が勝ちとする」

 

ドローが無くなることにより、モンスターの組み合わせによってお互い動けない状態になることがあるためだ。

 

 

 

「そして最後、これが一番重要だ」

 

「セットされているカードは必要時以外は見ることが出来ない」

 

「どういうことですか?」

 

彼女は思わずきき返す。

 

「モンスターは見ずに反転召喚し、罠も見ずに発動しろってことだ」

 

「…なるほど」

 

(それでこのカード構成なんですね)

 

追加されたルールの中では、おそらく一番デュエルに影響するであろうこのルール。度胸試しと呼ばれる所以なのだろうか。

 

「以上だ。質問はあるか?」

 

「いいえ」

 

彼女は即答する。ルールは問題なく把握しているようだ。

 

「それじゃあ先攻後攻だな」

 

赤石はポケットからコインを出し、彼女に見せる。

 

「数字が刻印されている方が裏だ」

 

コイントスの結果、先攻は彼女。

 

 

 

とても高校生同士がデュエルするとは思えない緊迫した空気が流れる。

 

「さあ、来な」

 

沈黙を破る赤石の静かな一言でついに大一番のデュエルが始まった。

 

 

 

~ルール一覧~

 

お互いのモンスターゾーンと魔法罠ゾーンにそれぞれ5枚ずつ、計20枚のカードがセットされた状態でスタート。手札は無し。

初期LPはスタンダードデュエルと同じく8000。

攻撃宣言する度に500LPを支払う。

罠カードを発動する度に500LPを支払う。

罠カードは相手の攻撃宣言時のみ発動できる。

反転召喚は1ターンに1回まで。

先攻1ターン目から攻撃が可能。

モンスターは見ずに反転召喚し、罠も見ずに発動しなければならない。

膠着状態に陥った場合、その時点でLPの多い方が勝ち。

先に相手のLPを0にするか、相手フィールドのカードを0枚にした方が勝ち。

 

 

 

~カード一覧~

 

《雷仙人》

《デス・ウォンバット》

《逆ギレパンダ》

《ゴブリン突撃部隊》

《機動砦のギア・ゴーレム》

《人喰い虫》

《ステルスバード》

《ヂェミナイ・エルフ》

《ランス・リンドブルム》

《ランス・リンドブルム》

《聖なるバリア -ミラーフォース-》

《仕込みマシンガン》

《停戦協定》

《邪神の大災害》

《ドレインシールド》

《魔法の筒》

《ギフトカード》

《万能地雷グレイモヤ》

《炸裂装甲》

《炸裂装甲》

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