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「は?じゃあ何か、あいつは最初からこの決着が見えてたってのか!?」
「そこまでは言ってねえ。だが、それに近い結末を狙ってたのは確かなはずだ」
彼女は当然ながら様子見だけでターンを消化していたわけではない。
自分のフィールドに《聖なるバリア -ミラーフォース-》が、赤石のフィールドに《邪神の大災害》があると仮定しての行動だ。
1枚で多大なアドバンテージが取れるこの2枚がそれぞれのフィールドにあると決め打ちしてデュエルを進めていた。
前者は外したが後者は当たり。4枚差あった罠のアドバンテージは対等になった。結果的にそうなったこと自体に意味は無かったが。
赤石も彼女の戦略は読んでいた。しかし結果はこの通りだ。
運命を司る神が最後に味方したのは彼女の方だった。突き詰めれば、ただそれだけのこと。
「おいおい、マジかよ…《邪神の大災害》が赤石のフィールドに無かったら、それだけで終わりのデュエルだったんじゃねえか…」
「あいつ本当に高1か…!?」
「つーか赤石負けとか信じらんねえよ…!運良すぎだろあいつ」
男子生徒は今更ながら赤石が負けた事実にショックを受けているようだ。
そんな男子生徒たちに赤石は、ただ一言
「運なんかじゃねえ、『度胸』で負けた」
と呟いた。
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(赤石さんもすごいけど、麗梨さんはもっと…敵わない。私なんかじゃ一生こんなデュエル出来ない…)
彼女の話を聞いた綾芽は彼女に対し尊敬と畏怖の念を抱く。
「うわぁ、すごい!れーりちゃんプロみたい…!」
同じくそれを聞いた瑞希はひたすらにすごい、といった感じで彼女を褒めていた。
「綾芽」
彼女は綾芽を呼ぶ。
「は、はい」
「友達で、いてほしい。住んでる世界が違うなんて、寂しい」
彼女は表情こそ変えないものの、その言葉から溢れ出た寂しさは綾芽にしっかりと伝わる。
「麗梨さん…」
綾芽の無力感故に出た言葉が彼女の心に残っていた。その事実を綾芽は重く受け止める。
「ごめんなさい…あのデュエルを見てたら、麗梨さんがとても遠く感じて、私なんかが友達でいいのかなって…」
綾芽は上手く頭が回らず断片的な言葉を紡ぐ。
「わたしはここにいる。綾芽の友達として、これからも」
彼女は綾芽を優しく抱きしめる。
「麗梨さん…!うぅっ…!」
綾芽は彼女の腕の中で堪えきれず涙を流した。
「綾芽」
「はい…」
「こけたのは、わざと?」
彼女は綾芽にだけ聞こえるように耳うちする。
「あ…」
綾芽は準備室に入る前のことを思い出す。
「も、もちろんわざとです。メガネが無くてもそれなりに見えますよ」
綾芽も小声で返す。
「ケガは、してない?」
「はい、大丈夫です」
「よかった」
(あそこまで派手にこける予定は無かったんだけど…恥ずかしいので秘密にしておきます)
彼女たちは帰り道を歩く。
「それじゃあ私、家こっちだから」
瑞希は2人とは別の道へ行こうとするが、
「あっ、待って中根さん」
綾芽が瑞希を呼び止める。
「瑞希でいいよ」
「えっ?」
「というか瑞希って呼んで欲しいな。私たち、その、友達でしょ」
瑞希はどこか照れくさそうだ。
「み…瑞希さん」
「あはは、私も『さん』付けなんだね」
「あ…」
「いいよいいよ!私もあやめちゃんって呼んでいい?」
「…はい、もちろん!」
「ところであやめちゃん、私に何か用だった?」
綾芽は瑞希を呼び止めた理由を思い出す。
「あ、えっと…」
「ん?」
「今度私とデュエルしませんか?…瑞希、さん」
綾芽は少し照れくさそうだ。
「…うん、もちろん!」
瑞希は笑顔で返事をした。
彼女は2人と別れ、帰り道を歩く。
日は沈み、時刻は18時を過ぎていた。
(大切なものは、ちゃんと守れた)
(デュエルとは関係ないところでも。だから…)
彼女は心の中で
(わたしの、勝ちです)
勝利宣言をした。
なお、次の日より、生徒が校内でいじめを目撃することがほとんど無くなったという。
【第3話 終】