可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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4話 ♯2「兄との違い」

ーーー赤石とのデュエルの翌日

 

 

 

「赤石が負けたってマジか!?」

「ああ、そうみたいだぜ」

「誰に負けたんだ?」

「1年の鈴瀬って女子だってよ」

「1年の女子!?しかも鈴瀬ってあの鈴瀬か!?」

「知ってるのか?」

「知ってるも何も一時期噂になってただろ、すげえかわいい1年がいるって」

 

 

 

「すごいね、噂がもうこんなに広まってるなんて…赤石さんって何者なんだろう?」

 

瑞希は話の速さと赤石の影響力に驚く。

 

時折教室に彼女を覗きに来る生徒も現れ、教室前は異様な賑わいを見せていた。

 

「赤石さんの話をしてるのは主に上級生たちみたいですね」

 

綾芽が来訪者の傾向を分析する。

 

「授業始まるよ」

 

当の彼女はというと我関せずといった様子でいつも通り冷静なまま席についていた。

 

「相変わらずだね…れーりちゃん」

 

 

 

ーーー昼休み

 

 

 

「ねえ、杉野」

 

「な、中根か…何だよ」

 

杉野は瑞希に視線を合わせないようにしている。

 

「ききたいことがあるの」

 

「もうあいつらには、許してもらうまで謝ったぞ」

 

「…赤石さんに言われて?」

 

「あ、ああそうだ。…その、悪かった。すまん」

 

杉野は瑞希に頭を下げる

 

「もういいよ気にしてないから。っていうかききたいことはそうじゃないの」

 

「あ?違うのか?」

 

 

 

「赤石さんってどんな人なの?」

 

 

 

 

 

ーーー同日、桑鴇高校

 

 

 

「おい!桐縹のダチから聞いたんだが赤石がデュエルに負けたらしいぞ!」

「マジか!誰にだよ!?」

「同じ桐縹の1年らしい」

「後輩に負けたのかよ!どんな奴なんだ?」

「さあ?そこまでは知らん」

「なんだよ、聞いてねえのかよ」

 

 

 

「桜ちゃん!上級生が話してるのってもしかして…?」

 

「あー…たぶん兄貴のことだと思う」

 

「お兄さん何か言ってた?」

 

「いや、何も聞いてない」

 

「そうなんだ。桜ちゃんのお兄さんに会ってみたいな。どんな人なのかなー」

 

「…」

 

(兄貴、負けたのか…相手、どんな奴なんだろうな)

 

「よう赤石!兄貴負けたんだってな」

 

上級生と思われる男子生徒が桜に話しかける。

 

「…それが?何か用?」

 

「あいつも人間だったってことだな!妹のお前はどう思ってんだ?」

 

「別に。負けることだってあるだろうよ」

 

(つか、人間じゃなきゃ何なんだってんだ…)

 

桜も赤石の敗北に若干ショックを受けていたが、気にしていないような素振りで答える。

 

「またまたあ、そんなこと言って悲しんでんじゃねえの?自慢のお兄ちゃんが負けちゃったようってな!」

 

「…」

 

(…こいつ、うぜえな)

 

桜は無言で男子生徒を睨む。

 

「おーおー怖え。目付きだけじゃなくて睨むと怖えとこも兄貴そっくりだ。兄貴直伝のガン飛ばしかあ?かわいい顔が台無しだぜえ?」

 

「うるせえな、用が無えなら失せろ」

 

「おほー!妹が言うとまた一味違うねえ」

 

男子生徒はそう言うと調子が一変し、けわしい顔つきになる。

 

「けどお前は兄貴じゃねえ。力の無い奴がそんな言葉つかっても痛い目を見るだけだぜ?」

 

「…なら試してみるか?」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「赤石先輩はケンカもデュエルも半端なくつえーらしいぜ。まあ、他の先輩方から話を聞いただけで、実際にやってるとこは見たこと無いんだけどな」

 

「へえ、そうなの」

 

「見た目だけじゃなくて性格もすげえ良いらしくて、先輩方はみんな慕ってるな。詳しいことが知りたかったら先輩方からきいた方がいいぞ」

 

「うん、そうしてみる」

 

(話を聞く限り、ただの不良のリーダー格って感じじゃなさそうね)

 

 

 

ーーー

 

 

 

「桜ちゃん!」

 

「アイコは下がってな」

 

「おっと、やる気になってるとこ悪いけど、俺は女相手に殴り合いのケンカするつもりは無いんだよね」

 

男子生徒はポケットに手を入れ

 

「兄貴の負けた記念だ」

 

デッキを取り出した。

 

「!…てめえ」

 

「妹の実力を計ってやろう」

 

 

 

「おい森下(モリシタ)が赤石妹とデュエルするぞ!」

「マジか!兄貴のかたき討ちか!?」

「妹の方も強いのか?」

「初めて見るからわからん」

「つーかやっぱかわいいな!兄貴があの赤石とか信じたくねえぜ」

「目付きというか目元似てるよな」

「森下!兄貴にボコられたからって妹に仕返したぁそれでも男かあ!?」

 

ギャラリーが続々と集まる。主に上級生だ。

 

「るせー!てめえこそコイツにストーカーして兄貴に見つかってシメられて泣いてたじゃねえか!」

 

森下は飛んできた野次のひとつに言い返す。

 

「なっ!てめえ話盛ってんじゃねえ!ちょっとついていっただけだ!」

「うわあ引くわ」

「ださすぎ」

 

 

 

「まあ外野は無視して、始めようぜ」

 

森下はデッキを机に置く。

 

「待てよ、あたしそれあんまり知らないんだけど?」

 

「あん?赤石妹のくせにデュエル知らんのけ?」

 

「…何か文句あっか?」

 

「困ったなあ。どうやって白黒つけようか。うーん困ったなあ…」

 

桜はあからさまに不機嫌な顔で森下を睨む。

 

「ケンカは出来ないしなあ」

 

「…もう帰れよ。相手にするだけ無駄だわ」

 

そう言って桜が席を立った瞬間

 

 

 

「!?桜ちゃん!危ない!」

 

ドゴッ!

 

「がはっ…!う…」

 

藍子(アイコ)の叫びと同時に、森下の蹴りが桜の横っ腹に命中した。

 

「桜ちゃん!大丈夫!?」

 

藍子は桜に駆け寄る。

 

「ああ…大丈夫だ」

 

桜は横っ腹を抑えて痛みに顔を歪めている。

 

「ちょっと!殴り合いはしないんじゃなかったんですか!?」

 

「ああ、殴り『合う』つもりは無いよ。見たらわかるだろ。これでも手加減してやったんだぜ?」

 

森下は桜のもとに歩み寄り、指で顎を上げる。

 

「あんまり上級生なめんなよ?二度とその生意気な口きけなくしてやろうか?あぁ!?」

 

「ぐ…」

 

桜はじわじわとした痛みに耐えながら森下を睨む。

 

「…ちっ、赤石の妹つっても所詮はただの女の子か」

 

森下は指を離し桜がゆっくりと立ち上がる姿を眺める。

 

 

 

「…てめえ、覚悟しろよ」

 

「ほお?モロに食らっておきながらそんなセリフ吐くとはねえ」

 

(もう一度蹴ってもいいが…蹴るよりはこっちの方が効果がありそうだ)

 

森下はニヤリと笑う。

 

「男っぽい言葉遣いしやがって…ついてねえくせによ!」

 

桜が立ち上がった瞬間、森下は足で桜のスカートを思いっきりめくった。

 

「!?」

 

「おおー!」

「白だ…!」

「森下グッジョブ!」

 

「う…」

 

桜は下を向いてプルプルと震えている。

 

「お?泣くのかあ?パンツ見られたくらいでよお?」

 

 

 

「泣くわけ…ねーだろ!!」

 

桜は森下に殴りかかる。

 

「桜ちゃんやめて!落ち着いて!」

 

が、藍子に制止される。

 

「アイコ離してくれ!こいつだけは…!」

 

「おーおー感情的になっちゃって、それじゃあケンカには勝てねえぞ」

 

森下は桜を煽っていく。

 

「冷静になってってば!」

 

「離せ!1発だけでもこいつを殴らせろ!」

 

なおも殴りかかろうとする桜に藍子は意を決し

 

 

 

「お願いだからやめてよ!!桜ちゃんがこれ以上傷つくの見たくない!!!」

 

力いっぱいの声を出した。

 

「!…」

 

桜の動きは止まり、藍子は「はあ…はあ…」と息をついている。

 

「ほお?お前のダチは賢明なようだな」

 

 

 

「…森下先輩」

 

藍子は森下を強い眼差しで見つめる。

 

「あ?何だ?」

 

「私が変わりに白黒つけます」

 

藍子は懐からデッキを取り出した。

 

「あ、アイコ…!?」

 

「私が勝ったら桜ちゃんに謝って下さい」

 

「…おもしれえ。俺が勝ったらお前ら2人、逆に土下座でもしてもらおうか」

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