「こっちは揃ってるぜ。問題ない」
「こちらも大丈夫です」
(確かにレトロかも)
お互いカードの確認を終える。
「では、15枚お選び下さいませ。制限時間は5分でございます」
青葉は机のデジタルタイマーをセットした。
(この中から15枚、何を選ぶ…?)
(相手も同じカードリストの中から15枚選ぶわけだから、相手の選ぶカードも想定しなきゃいけない)
(そしてそれに対応できるようにこっちも選ばないといけない)
(いやそれは正しいのかな…?対応って言ったって、たった20枚しかないし…どう選んでも10枚は同じカードを使うわけだから、相手を考慮せずに選んだ方がいいのかも)
~1分経過~
(どうしよう…5分しかないのに決まらない)
(この生活を始めてから、こういう状況に置かれることを全く想定してなかったわけじゃないけど…)
(…怖い。負けたらどうなるんだろう)
彼女の手は震え出し、目は虚ろになっていた。
「…負けた後のことを考えるのは全てが終わってからにしなさい」
彼女の横に立っていた青葉が静かに口を開く。
彼女の姿に見かねたのか。ただの気まぐれか。
どのような意図があったかにしろ、その声は確かに彼女の元に届いた。
(青葉さん…?)
彼女は青葉の顔を見るが微動だにせず立ったままだ。
(…そうね、まだ始まってもいない。こんなところで負けられないよね)
(絶対、勝たないと)
彼女の目に再び生気が宿った。
~残り7秒~
制限時間ギリギリのところで、彼女は無事15枚のカードを選び取る。
「5分経過致しました。お選びにならなかった5枚のカードを回収致します」
(間に合った。危なかった…)
ひとまずの危機的状況を脱した彼女は
(…ありがとうございます)
心の中でお礼を述べた。
「おいおい、デュエルする前に勝負が決まるなんてのは勘弁してくれよ?」
「…そうなってた方が良かったって思うよ、きっと」
「おーおー言うねぇ。それでこそやりがいがあるってもんだ」
若者はずっと余裕といった感じだ。
「では次に、メインデッキとなる10枚をお選び下さい。制限時間は5分です」
再びタイマーがセットされる。
(5分だけど、方向性はもう決まってるから焦らず…)
~5分経過~
「5分経過致しました。サイドデッキとなった5枚のカードをお預かり致します」
「それではメインデッキを交換してシャッフルを」
「待ってください」
彼女が流れに割り込む。
「何ですかな?」
「シャッフルは青葉さんがお願いします。10枚しかないデッキなので、信用できる方に混ぜて欲しいです」
彼女はそっとデッキを青葉の元に置く。
「ケッ、俺が信用できねぇのか。まぁ好きにしろ」
若者は悪態をつきながらデッキを青葉の元に置いた。
「では私がシャッフルさせて頂きましょう」
お互いのデッキをシャッフルする。淀みない慣れた手付きだ。
「シャッフルが完了致しました。デッキを然るべき位置にセットを」
「先攻、後攻を決めます。お二方、私がコイントスを行いますので表か裏どちらかの宣言を」
「表だ」
「わたしは裏で」
コインが弾かれ宙に舞う。
「コイントスの結果は…裏ですな。赤スリーブの方、先攻か後攻の選択を」
(スリーブの色で区別するんだ…)
「先攻で」
(このルールだと、たぶん先攻の方が有利なはず…)
「お二方、デッキの上から裏側のまま3枚場に。最初の手札となります」
「準備が整いました。赤スリーブの方先攻で1回戦、デュエルスタート!」
ついにデュエルが始まった。彼女にとっては今後の人生を左右しかねない重大なデュエルだ。