ーーーそれから数日後
(一通りルールは覚えたけど…)
「なーアイコ、放課後時間あるか?」
「あるよー。どうしたの?」
(戦えるかは、別問題だよな)
「デュエルに付き合って欲しい」
ーーーそして放課後
<<デュエルハウス「ナチュル」>>
「こんなとこあったのか」
藍子の提案で2人はノーレートのデュエルハウスに来ていた。
「いいとこでしょ?女子デュエリストは場代半額なの」
「場代、って何だ?」
「今私たちが座ってる席の代金のこと。ここは1時間で400円、だけど半額で200円」
藍子は得意気に答える。そういった料金設定のためか店員も客もほとんどが女性だ。
「ふーん、カラオケみたいなもんか」
「うん、そんな感じ。じゃあ早速…」
藍子はデッキを取り出す。
「ああ」
それを見て桜もデッキを取り出す。
「手加減はしないよ?」
「もちろんだ。本気で頼む」
先攻は桜
(先攻はドロー出来ないんだったよな)
桜は手札のカードのテキストを1枚1枚小声で読み通していく。
「あー…悪いな。待たせて」
「大丈夫だよー」
藍子はテキストを読む桜の様子を微笑ましく見守っている。
「…っと、《ローズ・ウィッチ》召喚」
(魔法カードはセットしても意味無いんだよな)
「ターンエンド」
「私のターン、ドロー」
(あ、揃っちゃった)
「スタンバイ、メインフェイズに入るね」
「《ワン・フォー・ワン》発動。手札の《紅姫チルビメ》をコストにデッキから《薔薇恋人》を特殊召喚」
「ああ…テキスト見ていいか?」
「どうぞー。続けるね」
「《超栄養太陽》発動。《薔薇恋人》をリリースして、デッキから《ローンファイア・ブロッサム》を特殊召喚」
「《ローンファイア・ブロッサム》の効果発動。自身をリリースして、デッキから《椿姫ティタニアル》を特殊召喚」
「おー、いきなり出てくるか」
桜はフィールドと藍子の使ったカードのテキストを交互に見ながら感心する。
「墓地の《薔薇恋人》の効果発動。このカードを除外して手札から《桜姫タレイア》を特殊召喚」
「お?おお…お」
「墓地の《ローンファイア・ブロッサム》を除外して《薔薇の刻印》発動。《ローズ・ウィッチ》のコントロールを得る」
「う!?」
「《ローズ・ウィッチ》をリリースして《姫葵マリーナ》をアドバンス召喚」
藍子のフィールドにレベル8モンスターが3体並ぶ。
「すげー…」
「全員でダイレクトアタック」
「ま、参りました」
藍子の後攻1ターンキルが決まる。
「つえーんだな、アイコは」
「今のはたまたまだよ。《ローズ・ウィッチ》ってことは桜ちゃんも植物デッキなんだね。カードはお兄さんから?」
藍子は嬉しそうだ。
「ん、まあな」
「そうなんだ、わからないことがあったら何でもきいてね」
「ああ、ありがと」
(今はまだわからないことだらけだけどな…)
その後、桜は藍子からアドバイスをもらいながら何度かデュエルをした。初勝利にはまだ遠いが、いずれ手にするであろう。
ーーー同じ頃、彼女の家
「《異次元の生還者》で《ライトロード・マジシャン ライラ》に攻撃」
「はい」
(うぅ、《マクロコスモス》が刺さります…)
「《紅蓮魔獣 ダ・イーザ》でダイレクトアタック」
「負けました…流石ですね麗梨さん」
「運が良かった」
「ずっと運が良い気がします…」
放課後、綾芽は彼女とデュエルするため彼女の家に来ていた。なお、瑞希は部活があるので今回は2人だけ。
(何度か勝利はしたけれど…麗梨さん、驚くほど隙が無い。プレイングミスも全く無くてこちらの手を読んで行動してくる…強いってこういうことなんだろうな)
綾芽はカードを整理する彼女を見つめる。
(でも、そのレベルの強い人はプロでなくてもたくさんいる…むしろ麗梨さんの強さはもっと別の部分)
「あの、麗梨さん」
「なに」
「今までに大会に出場して優勝したことってありますか?」
「ないよ。大会に出たことも」
「そう、ですか」
「うん」
綾芽は彼女の答えを予想していたような反応だ。
(なんとなくそんな気がしてました。麗梨さん程の子が表舞台に立っていたら、きっと今頃有名人ですよね)
「時間、大丈夫?」
「時間…あ」
時刻は17時半を過ぎようとしていた。外も暗くなり始める頃だ。
「じゃあ最後にもう一戦だけお願いします」
ーーー
「今日はありがとな。デュエルの楽しさがわかってきたよ」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
「けど覚えることが多くて大変だわ」
「デュエルするうちに覚えていくから大丈夫!私も最初全然わからなかったから」
「そうなのか」
デュエルハウスを後にして、2人は帰り道を歩いている。
(帰ったらごはん作らないとな。冷蔵庫には確か…ん?)
桜が夕食のことを考えてると、前方から桐縹の制服を着た男子生徒が歩いてくる。
「あ、兄貴だ」
それは桜のよく見知った顔だった。
「えっ?お兄さん?」
藍子もそれを聞いて男子生徒の顔を見る。
「おい兄貴ー」
「おお桜か。今帰りか?」
桜の声に気付いた赤石が返事をする。
「うん。帰ったらすぐごはん作るよ」
「ああ。隣にいるのは…」
「あ、紹介するよ。友達のアイコ」
桜が藍子の方を向くも、藍子はその場で固まっている。
「…アイコ?」
「さ、桜ちゃん…こ、この人が桜ちゃんのお兄さん?」
藍子は口元に手を当て目を大きく見開いている。
「うん?そうだけど…」
「あ、あのお兄さん!私のこと覚えてませんか?」
「あ?ああ…」
赤石は記憶を掘り返すがそれらしい人物は浮かばない。
「以前、男子生徒に絡まれてたところを助けて頂いた者です!」
藍子に言われ赤石は思い出す。
「…あ、あれか」
(そういやそんなこともあったな)
「え?アイコが言ってた助けてくれた人って…」
桜の驚きの表情に対し
「はい、お兄さんでした」
藍子は笑顔で答えた。