可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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4話 ♯6「桜と藍子・1」

ーーー

 

 

 

「今日はありがとうございました。またデュエルして下さい」

 

綾芽は玄関先で彼女にお礼を述べる。

 

「うん、またしよ。気を付けてね」

 

「はい!また学校で」

 

「ばいばい」

 

彼女は綾芽を見送った。

 

 

 

(大丈夫。いつも通りの感覚)

 

(楽しかった。この楽しさを見失わないように…)

 

(ごはん、作ろ)

 

 

 

ーーー

 

 

 

桜、藍子、赤石の3人は帰り道を歩く。

 

「まさか兄貴だったとはな」

 

「私もびっくりした!これって運命なのかな…?」

 

「…運命?」

 

桜は少し首をひねる。

 

「何というか、よく桜と友達になったな。無愛想ですげえ取っ付きにくかったと思うんだが」

 

赤石は藍子の顔を見て言う。

 

「無愛想で悪かったな」

 

「悪いとは言ってねえよ」

 

「うーん、確かに第一印象はそんな感じでした。でも桜ちゃんだけだったんです」

 

「どういう意味だ?」

 

藍子は赤石に当時のことを話し始めた。

 

 

 

 

 

ーーー4月某日(入学式から1週間後くらい)

 

 

 

(どいつもこいつも、もう群れてやがる)

 

桜は机に肘をつきながら教室を見回す。下品な笑い声を響かせる女子生徒のグループや喧しい叫び声を上げる男子生徒のグループ等、騒がしい集団がいくつも目に入った。

 

(あんな嘘で塗り固めたような連中とつるむくれーなら、1人の方がよっぽどマシだ)

 

そんな教室内ではどのグループにも属することなく孤立する2人の生徒がいた。桜と桜の3つ隣の席に座っている女子生徒だ。

 

 

 

(…つまんねーことしてんな)

 

桜は3つ隣の席を呆れるながら眺める。

 

「ねえねえ藍子ちゃん金貸して欲しいんだけどさあ?」

 

「ウチら今金欠なんだよねー?」

 

「ホラホラ立てよ!」

 

女子生徒数人がその席に座ってる生徒に金をせびっていた。

 

(…)

 

「や、やめてください!」

 

「やめて欲しけりゃ出すもん出しなよ」

 

藍子は無理やり立たされようとする。

 

「嫌、手引っ張らないで…!」

 

「椅子引け椅子!」

 

 

 

(…あーもう!うぜーな!)

 

「おい!さっきからうるせーんだよ!耳障りだから失せろ」

 

桜の怒声にクラス中の視線が集中した。

 

「…赤石、今なんつった?」

 

「なんかキレられたんですけどー」

 

女子生徒たちが藍子から桜の方へと歩み寄る。

 

(4月早々やっちまったか…ま、仲良くする気なんてさらさら無かったけど)

 

 

 

桜は自分の前に立つ女子生徒たちを不機嫌そうに見上げる。

 

「…何だよ?」

 

「放課後ちょっと付き合えよ」

 

「断る」

 

「藍子ちゃんがどうなってもいいのかなあ?」

 

「別に」

 

「はあ?」

 

女子生徒は想定と違う答えに眉間にしわを寄せる。

 

「そいつがどうなろうが知ったこっちゃねーよ。てめーらが耳障りだっただけだ」

 

桜は表情を変えず答える。

 

「…こいつ!」

 

女子生徒の1人が桜を殴ろうと手を振りかぶった。

 

 

 

「!?」

 

パシッ!

 

しかし桜は迫り来る拳を左手で受け止めると、すかさず右手でその女子生徒の頬に平手打ちを食らわせる。

 

「…パーじゃ足りなかったか?グーで殴って来たもんな?」

 

桜は平手打ちによって怯んだ女子生徒に詰め寄る。

 

「お、お前…!何したかわかってんだろうな!?」

 

別の女子生徒が桜を睨みながら問う。

 

「ああ!?」

 

「ひっ…!」

 

桜も睨み返す。どちらの睨みの質が上かは言うまでもない。

 

「おい席に付けー、授業始めるぞ」

 

女子生徒が桜の睨みに怯えた瞬間、チャイムが鳴り教師が入室する。

 

「ちっ、覚えとけよ」

 

女子生徒は小声で捨て台詞を吐くと、自分の席へと戻った。

 

 

 

ーーーその日の昼休み

 

 

 

昼食を食べ終えた桜はいつものように中庭の端、人気の少ない木陰で携帯電話をいじっていた。

 

そんな桜の前に1人の女子生徒が現れる。

 

「お前は…」

 

(こいつはさっきの…)

 

「栗原(クリハラ)藍子です。先程はありがとうございました」

 

金をせびられてた女子生徒、藍子だ。

 

「別に礼を言われるようなことはしてねーよ」

 

「あの、もし良かったらお友達にーーー」

 

「悪いけど友達は募集してねー。他を当たりな」

 

桜は藍子の言葉を遮るように言い放ち、その場を去ろうとする。

 

「ほ、他の人は嫌です!赤石さんと友達になりたいんです」

 

桜はその言葉を聞いて立ち止まる。

 

「断る」

 

が、すぐに再び歩き出した。

 

(…けっ、何が友達だ。浮いてる者同士仲良くやろうってか?冗談じゃねーよ)

 

 

 

ーーー次の日、昼休み

 

 

 

「赤石さーん」

 

藍子が桜の元へと駆け寄る。

 

「何だよ」

 

桜は若干不機嫌そうに答える。

 

「赤石さんて普段何してるんですか?」

 

「何でもいいだろうが」

 

桜は急ぎ足でその場を去る。

 

「待ってくださいー」

 

「ついてくんな」

 

藍子も追いかけるが、途中で見失ってしまった。

 

(ああ、見失っちゃった…でも、諦めないからね)

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