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「今日はありがとうございました。またデュエルして下さい」
綾芽は玄関先で彼女にお礼を述べる。
「うん、またしよ。気を付けてね」
「はい!また学校で」
「ばいばい」
彼女は綾芽を見送った。
(大丈夫。いつも通りの感覚)
(楽しかった。この楽しさを見失わないように…)
(ごはん、作ろ)
ーーー
桜、藍子、赤石の3人は帰り道を歩く。
「まさか兄貴だったとはな」
「私もびっくりした!これって運命なのかな…?」
「…運命?」
桜は少し首をひねる。
「何というか、よく桜と友達になったな。無愛想ですげえ取っ付きにくかったと思うんだが」
赤石は藍子の顔を見て言う。
「無愛想で悪かったな」
「悪いとは言ってねえよ」
「うーん、確かに第一印象はそんな感じでした。でも桜ちゃんだけだったんです」
「どういう意味だ?」
藍子は赤石に当時のことを話し始めた。
ーーー4月某日(入学式から1週間後くらい)
(どいつもこいつも、もう群れてやがる)
桜は机に肘をつきながら教室を見回す。下品な笑い声を響かせる女子生徒のグループや喧しい叫び声を上げる男子生徒のグループ等、騒がしい集団がいくつも目に入った。
(あんな嘘で塗り固めたような連中とつるむくれーなら、1人の方がよっぽどマシだ)
そんな教室内ではどのグループにも属することなく孤立する2人の生徒がいた。桜と桜の3つ隣の席に座っている女子生徒だ。
(…つまんねーことしてんな)
桜は3つ隣の席を呆れるながら眺める。
「ねえねえ藍子ちゃん金貸して欲しいんだけどさあ?」
「ウチら今金欠なんだよねー?」
「ホラホラ立てよ!」
女子生徒数人がその席に座ってる生徒に金をせびっていた。
(…)
「や、やめてください!」
「やめて欲しけりゃ出すもん出しなよ」
藍子は無理やり立たされようとする。
「嫌、手引っ張らないで…!」
「椅子引け椅子!」
(…あーもう!うぜーな!)
「おい!さっきからうるせーんだよ!耳障りだから失せろ」
桜の怒声にクラス中の視線が集中した。
「…赤石、今なんつった?」
「なんかキレられたんですけどー」
女子生徒たちが藍子から桜の方へと歩み寄る。
(4月早々やっちまったか…ま、仲良くする気なんてさらさら無かったけど)
桜は自分の前に立つ女子生徒たちを不機嫌そうに見上げる。
「…何だよ?」
「放課後ちょっと付き合えよ」
「断る」
「藍子ちゃんがどうなってもいいのかなあ?」
「別に」
「はあ?」
女子生徒は想定と違う答えに眉間にしわを寄せる。
「そいつがどうなろうが知ったこっちゃねーよ。てめーらが耳障りだっただけだ」
桜は表情を変えず答える。
「…こいつ!」
女子生徒の1人が桜を殴ろうと手を振りかぶった。
「!?」
パシッ!
しかし桜は迫り来る拳を左手で受け止めると、すかさず右手でその女子生徒の頬に平手打ちを食らわせる。
「…パーじゃ足りなかったか?グーで殴って来たもんな?」
桜は平手打ちによって怯んだ女子生徒に詰め寄る。
「お、お前…!何したかわかってんだろうな!?」
別の女子生徒が桜を睨みながら問う。
「ああ!?」
「ひっ…!」
桜も睨み返す。どちらの睨みの質が上かは言うまでもない。
「おい席に付けー、授業始めるぞ」
女子生徒が桜の睨みに怯えた瞬間、チャイムが鳴り教師が入室する。
「ちっ、覚えとけよ」
女子生徒は小声で捨て台詞を吐くと、自分の席へと戻った。
ーーーその日の昼休み
昼食を食べ終えた桜はいつものように中庭の端、人気の少ない木陰で携帯電話をいじっていた。
そんな桜の前に1人の女子生徒が現れる。
「お前は…」
(こいつはさっきの…)
「栗原(クリハラ)藍子です。先程はありがとうございました」
金をせびられてた女子生徒、藍子だ。
「別に礼を言われるようなことはしてねーよ」
「あの、もし良かったらお友達にーーー」
「悪いけど友達は募集してねー。他を当たりな」
桜は藍子の言葉を遮るように言い放ち、その場を去ろうとする。
「ほ、他の人は嫌です!赤石さんと友達になりたいんです」
桜はその言葉を聞いて立ち止まる。
「断る」
が、すぐに再び歩き出した。
(…けっ、何が友達だ。浮いてる者同士仲良くやろうってか?冗談じゃねーよ)
ーーー次の日、昼休み
「赤石さーん」
藍子が桜の元へと駆け寄る。
「何だよ」
桜は若干不機嫌そうに答える。
「赤石さんて普段何してるんですか?」
「何でもいいだろうが」
桜は急ぎ足でその場を去る。
「待ってくださいー」
「ついてくんな」
藍子も追いかけるが、途中で見失ってしまった。
(ああ、見失っちゃった…でも、諦めないからね)