可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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4話 ♯8「桜と藍子・3」

「はあ!?何言ってんだお前?じゃあ何でこそこそ後ろからついて来たんだよ!」

 

「赤石のためじゃないってなら何なんだ!?」

 

女子生徒たちは予想外の言葉に驚く。

 

「赤石さんがどうとか関係無いです。財布を盗んだあなたたちが気に入らない、それだけです」

 

藍子は毅然とした態度で答えた。

 

(言っちゃった。もうどうにでもなれ)

 

「お前さあ…調子こいてんじゃねーぞ!」

 

女子生徒の怒りに任せたパンチが藍子に降りかかる。

 

「っ…!」

 

藍子は覚悟を決め目を瞑った。

 

 

 

パシン!と乾いた音が響く。

 

「…?」

 

確かに音がしたものの、自分への衝撃がまるで無い。

 

その事に対し、藍子は不思議に思いながらおそるおそる目を開けた。

 

「!」

 

「お前は…!」

 

 

 

「その通りだ。こんな奴らにお前の金をくれてやる必要はねーよ」

 

「赤石さん!?」

 

藍子が目を開けると、殴ろうとした女子生徒の手首を桜が後ろから掴んでいる姿が目に映った。

 

「いつの間に…!?」

 

「1000円すら持ってねえ、ってとこからだ。やっぱりグーじゃねーと足りなかったみてーだ、な!」

 

桜は掴んだ手首を引っ張り、自分の方へと向かせると、その女子生徒の腹部にパンチを浴びせた。

 

「うぐっ!」

 

拳からの衝撃を受けた女子生徒は腹部を抑えうずくまる。

 

その間に桜はすかさず自分の財布を取り返す。

 

「お、おい!?」

「こいつ殴りやがったよ!」

 

女子生徒の1人が桜を信じられないといった目で見る。

 

「黙れ。先に殴ろうとしたのはどっちだ?てめえらも殴られてーか?」

 

桜はそんな目に対してお構い無しに言葉を続ける。

 

「急所は外した。失せろ」

 

「ひっ…」

 

桜の怒りを込めた睨みに女子生徒たちだけでなく藍子もゾクっとする。

 

「い、行こ!」

 

女子生徒たちは慌ててその場から退散した。

 

 

 

「ケガは無いか?」

 

桜は藍子に手を差し伸べる。

 

「うん…ありがとう」

 

藍子は桜の手を掴み立ち上がる。

 

「礼を言うのはこっちの方だよ、ありがとな」

 

「あの、よくここがわかりましたね」

 

藍子がそう言うと桜は踵を返し背中を向ける。

 

「気分転換に来ただけだ。人が少ないって聞いたんだけど、騒がしかったな」

 

桜はどこか優しげな口調で話す。

 

ふふっ、と思わず藍子は笑みが零れた。

 

「…その、なんて言うか」

 

桜は口ごもったように話す。

 

「…やっぱり、寂しいな。お前の言う通りだよ」

 

「強がってみてもさ、ずっとモヤモヤしたもんが残ってんだ」

 

「あのな、寂しいからって理由じゃなくてさ、お前だから…」

 

藍子は桜の言葉を待つ。

 

「ごめん、今更こんなこと言うのも情けないかもしんないけど…」

 

桜は再び踵を返し、藍子の方へと向く。

 

「あたしと…友達になって、ください」

 

桜は不器用ながら自分の正直な思いを口にした。

 

もちろん、藍子の答えは決まっている。

 

「はい!」

 

藍子はとびきりの笑顔で答えた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ほお、そんなことがあったんだな」

 

(桜もそうだが、この子も相当強い人間らしいな)

 

「はい!それからは桜ちゃんと友達として毎日楽しく過ごしてます。今日もさっきまでデュエルしてました!」

 

藍子は元気良く話す。

 

「そうか、これからも桜と仲良くしてやって欲しい。こいつ案外寂しがり屋だから」

 

「な…!ち、ちげーよ」

 

桜は照れ隠しなのかそっぽを向く。

 

「はい、任せてください!」

 

藍子も桜の仕草を理解し、その様子を微笑ましく見る。

 

「えっと、私個人としてはお兄さんとも仲良くしたいです」

 

藍子は赤石の顔を見ながら少し抑え気味の声で言う。

 

「あ?俺と?」

 

「はい。お兄さんデュエルすごく強いって聞いてます!ぜひ1度私とデュエルしてくれないかなー…なんて」

 

「まあ、構わねえが」

 

「本当ですか!?じゃあ番号とアドレス教えていただけませんか?」

 

「ああ、携帯電話貸してくれるか?」

 

「はい!」

 

藍子は赤石に携帯電話を渡す。

 

「おーおー積極的なことで」

 

桜は控えめにニヤニヤとした表情を浮かべながら2人のやりとりを見守る。

 

「えへへ」

 

藍子は桜の言葉に照れながらも嬉しそうだ。

 

 

 

「ほら、登録したぞ」

 

赤石は携帯電話を藍子に返す。

 

「ありがとうございます!また連絡しますね」

 

「あ!そういえばお兄さん、お名前なんて言うんですか?」

 

「修哉(シュウヤ)」

 

「じゃあ修せんぱいとお呼びしますね!桜ちゃんまた明日ね」

 

「ああ、また明日」

 

藍子は2人と別れると楽しそうに家へと帰った。

 

 

 

「で、どうなんだ?」

 

「何がだ?」

 

2人は引き続き帰り道を歩いている。

 

「何が、ってアイコのことだよ。どう思ってる?」

 

「知り合ったばっかで特に何とも思ってねえよ」

 

赤石は表情を変えず答える。

 

「まあ、強いて言うなら」

 

「強いて言うなら?」

 

 

 

「お前と似てる」

 

「…そうか?」

 

「なんとなくだけどな」

 

(似てるの…かな?)

 

桜は家に着くまで藍子と似ている部分を探したものの、特にこれといった発見は無かった。

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