「ドロー、スタンバイ、メイン」
(送り込んだのがデッキトップなら、今引いたのは罠カード…伏せてくるか?)
柳沢が引いたカードを伏せるために選ぼうとしたその時、柳沢は足に何かの感触があることに気付く。
『ウゴクナ』
ヘズが足伝いにサインを送っていた。彼らもまた同じように事前に打ち合わせをしていた。
(動くな、ってことは伏せるなってことか!?何でだ、そのために寄越したんじゃねぇのか?)
柳沢はヘズの指示に疑問を覚える。
(例えバレバレのイカサマだったとしても何のカードを送ったのかはまだ闇の中、罠カードじゃないかもという疑惑を植え付けるのサ。なに、このターン動かなくても死にゃしないヨ)
(…ちっ、まあヘズのことだ、何か理由があるんだろ)
柳沢はヘズの意図を汲み取れなかったが、指示には従うことにした。
この時、柳沢の意識はヘズの指示に向いていたこともあり、警戒心が薄くなっていた。
(赤石にモンスターがいねぇし、攻めるか)
「《死者蘇生》発動、対象は俺の《サイバー・ドラゴン》だ」
そしてヘズの指示をそのカードだけという誤解をしていた。
(何っ!?動くなと伝えたはずダ!)
「罠発動だ」《激流葬》発動、《激流葬》効果、《サイバー・ドラゴン》《ランサー・デーモン》《ジェネティック・ワーウルフ》セットモンスター《ダンディライオン》破壊
「うっ…!」
(激流葬だとぉ…!?)
「《ダンディライオン》が墓地に送られたので効果を発動します」《ダンディライオン》効果、《ダンディライオン》トークン2体守備表示特殊召喚
(無警戒だったのか?こっちとしては大助かりだ)
(くっ、伝達不足だったカ…!?だとしてもそれは無警戒過ぎるゾ!)
ヘズの情報伝達ミスと柳沢の軽率なプレイングによって状況が悪化する。柳沢、ヘズ共に表情が一様に険しくなった。
「くそっ…ターンエンド」
そして柳沢は自分がそう解釈したヘズの指示通り、セットせずにターンを終了した。
柳沢手札2枚 ヘズ手札1枚
LP3000 LP4000
◇ ◇ ◇ ◇ 裏 ◇
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
柳沢→彼女
あ=《ダンディライオン》トークン表側守備 い=《ダンディライオン》トークン表側守備
◇ ◇ ◇ あ い ◇
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
LP4000 LP3000
赤石手札1枚 彼女手札3枚
《死者蘇生》通常魔法
(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
「ドロー、スタンバイ、メイン」ドローカード《自律行動ユニット》
(セットしなかった…?でも、これはチャンス)
「《自律行動ユニット》発動、赤石先輩の《サイバー・ドラゴン》を対象に装備します」彼女LP3000-1500=1500
(なっ!このタイミングで引いてくるか…!?)
柳沢に焦りが見え始める。
「バトルフェイズ、《サイバー・ドラゴン》で柳沢さんに攻撃します」柳沢LP3000-2100=900
「ターンエンド」
柳沢手札2枚 ヘズ手札1枚
LP900 LP4000
◇ ◇ ◇ ◇ 裏 ◇
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
彼女→ヘズ
あ=《ダンディライオン》トークン表側守備 い=《ダンディライオン》トークン表側守備 う=《サイバー・ドラゴン》攻撃表示
え=《自律行動ユニット》
◇ ◇ ◇ あ い う
◇ ◇ ◇ ◇ え ◇
LP4000 LP1500
赤石手札1枚 彼女手札3枚
「draw standby main」
(《自律行動ユニット》を引かれたのはまずいナ…下手な駆け引き打たずにセットさせとけば良かったカ。柳沢を守らないとこっちの勝ち目が無くなル)
『テフダ、イレカエ』
ヘズが次の行動を考えていると、不意に柳沢からサインが送られた。
(!…入れ替えだト?何を考えていル?)
『ヘンジマチ』
柳沢は続けてサインを送る。
(返事待ち、オレの手札次第ってことカ)
柳沢はヘズの手札を考慮したわけではなく、今の状況から考えて最悪自分のLPが0になる前に【A】デッキのカードを1枚でもヘズに送っておきたいという意図があった。
ヘズもここは察し良く柳沢の意図を汲み取る。
(…なるほど、俺の手札は良くなイ。替えられるのなら助かル。だがそんな隙があるかどうカ)
(いや、無いなら作ればいいナ)
『ok』
ヘズは柳沢に了承の返事をした。
「鈴瀬さん、墓地の確認いいかナ?」
「はい、どうぞ」
(ヘズが動いた…!いつでも動けるように手札を…)
柳沢は入れ替えに備える。
ヘズは彼女の墓地に手を伸ばし、墓地のカードを持ちあげると…
「oh sorry」
フィールドへと零した。
(今だ!)
赤石と彼女が零れたカードに気を取られているのを確認して、柳沢は素早く手札のカードをヘズの元へと、
バァン!!!
「うっ…!」
その瞬間だった。机を叩く大きな音が響き、柳沢の動きが止まった。
止まった理由は音だけではない。
赤石の手が、柳沢の手のすぐそばに降りかかっていたのだ。
「悪い、虫でも飛んでるかと思ったが気のせいだった」
(こ、こいつ…!)
「…ちっ、飛んでるわけねぇだろ」
言うまでもなく殺虫目的ではない。赤石はヘズの零したカードに気を取られたフリをしてその実、神経は柳沢の方に集中していた。
そして赤石の大きな右手と優れた反射神経がイカサマの架け橋を崩落させた。
(見え見えのイカサマ仕掛けやがって…2度もさせるか!)
赤石は柳沢とヘズに対し、どんなイカサマをしようが必ず阻止してやると言わんばかりに一睨みすると振り下ろした手を引いた。
(…止められたカ。それにしても凄まじい反射速度だナ。ちょっとでも遅かったらカードに当たって反則負けになるかもしれないっていうのニ…)
ヘズの思っている通り、紙一重のタイミングだった。ほんの少しでも遅ければ、審判から何を言い渡されていたかわからない。
「モンスターセット、カードセット」
(度胸あるナ。その若さで勝負の席に座るだけのことはあるようダ)
ヘズは赤石の評価を改めた。
「turn end」
柳沢手札2枚 ヘズ手札0枚
LP900 LP4000
◇ ◇ ◇ 裏 裏 ◇
◇ ◇ ◇ ◇ 裏 ◇
ヘズ→赤石
あ=《ダンディライオン》トークン表側守備 い=《ダンディライオン》トークン表側守備 う=《サイバー・ドラゴン》攻撃表示
え=《自律行動ユニット》
◇ ◇ ◇ あ い う
◇ ◇ ◇ ◇ え ◇
LP4000 LP1500
赤石手札1枚 彼女手札3枚
赤石のターンが回ってくる、実はここが1つの重要な分岐点。赤石のデッキは残り4枚、そのうちモンスターは《不意打ち又佐》の1枚だけ。
柳沢のLPは残り900でフィールドはガラ空き、赤石がここで《不意打ち又佐》を引けば【A】デッキを使っている柳沢のLPを0にできるのだ。これは即ち勝利に大きく近付くことを意味している。
確率は4分の1
(俺がここで引けば…!)
(引くな引くな引くなぁ!)
赤石と柳沢の想いが交錯する中、赤石はカードをドローした。
「ドロー…」