「ドロー、スタンバイ、メイン」
(ちっ、モンスターが欲しい場面でこいつか)
(それにしても一体どうなってんだ…!?あのカードは何だ…?まさか!)
(赤石の奴、送り込みやがったかぁ!?)
柳沢は自分たちがそうしたように、赤石が隙を見て送り込んだのではないかと疑う。
「《デーモンの斧》発動、《首領・ザルーグ》に装備させる」《首領・ザルーグ》攻撃力1400→2400
(柳沢、モンスターを引かなかったカ)
(赤石君が送り込んだとしたら、既に不意打ち又佐は鈴瀬さんの手の中。そしてあの2枚のセットカード…どちらかが《神の宣告》である可能性が高イ。オレの落とし穴を無効にされればその時点で柳沢のLPが0になるのは確定的ダ。しかも巨大化がまだ見えていないとなるとこれハ…)
このタッグデュエル、3回戦にして初めてヘズから焦りが見え始める。
(…いや、待てヨ?)
しかしある事実にヘズは気付く。
「ターンエンド」
柳沢手札0枚 ヘズ手札0枚
LP900 LP4000
エ ◇ ◇ 裏 ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ウ 裏 ◇
エ=《デーモンの斧》
ウ=《首領・ザルーグ》攻撃表示
柳沢→彼女
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ 裏 ◇ ◇ 裏
LP2600 LP1500
赤石手札0枚 彼女手札2枚
《デーモンの斧》装備魔法
(1):装備モンスターの攻撃力は1000アップする。
(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた時、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。
このカードをデッキの一番上に戻す。
「ドロー、スタンバイ、メイン」
(まず鈴瀬さんは不意打ち又佐を召喚すル)
「《不意打ち又佐》召喚」
(当然召喚時にオレハ)
「罠発動するヨ」《落とし穴》発動
(それにチェーンしテ)
「ではそれにチェーンして罠発動します」《神の宣告》発動、彼女LP1500-750=750、《神の宣告》効果、《落とし穴》無効→破壊
(そして鈴瀬さんが手札かラ)
「《巨大化》発動、《不意打ち又佐》に装備します」《不意打ち又佐》攻撃力1300→2600
(やはりナ。…これは決まったカ)
ヘズは勝利を確信した。
(…あ?いやこれ、俺らの勝ちじゃねぇ!?)
柳沢もある事実に遅れて気付く。
(このあと麗梨は2回攻撃で俺のLPを0にして首領・ザルーグを倒すだろ?ヘズのセットモンスターはリバースしなかったことを考えると100%ダークシー・フロートだから、こいつに攻撃は有り得ねぇ)
(2回攻撃された後のダメージから計算すると、ヘズの残りLPは2100だ。それで麗梨がエンドしてヘズにターンが回る)
(そのヘズのターンが終わった後は…デッキ0の赤石のLPが加算されて麗梨のターンへと回る、そうなれば麗梨のLPはヘズのLPを上回って巨大化の効果が変わる!)
(そこからヘズが2ターン凌げば、順番の関係から先に麗梨のデッキが0になり勝利確定だ!さらにその2ターンも問題ない、何故ならヘズのデッキにはまだクリボーとニュートが眠ってるからな!)
(ギリギリだが、勝った!)
柳沢も勝利を確信した。
「…勝利を確信したか?」
赤石が2人の緩んだ心へ疑問を呈すように口を開く。
「あ?そりゃな。計算したらわかるぜぇ?」
「計算か…じゃあその計算に不備があるな」
「…何が言いてぇんだ、てめぇよ?負け惜しみかぁ?麗梨ちゃんもさっさと攻撃しろよ」
。
「ここまで9枚、俺の墓地に見えてるカードは全て【C】デッキのカードだってことだ」
「はぁ?」
柳沢は眉間にしわを寄せる。柳沢には赤石の言葉が理解できなかったが、
(9枚、見えてるカードは全て【C】デッキのカード…)
(………)
(……)
(…)
(…!?そうか!何故気付かなかったんダ!)
ヘズは赤石の言葉から全てを理解した。
「赤石君、そういうことカ」
「…はい」
ヘズの表情はどこか穏やかだ。
「ヘズ、どういうことだよ?」
「つまり、こういうことだ」
赤石はセットカードに手を乗せ、
「罠発動!」
声と共にカードをめくった。
《不運なリポート》発動
「なっ…!嘘、だろ…?」
柳沢は唖然とする。いまいち状況を飲み込めていない様子だ。
(やっと、たどりつきました)
「バトルフェイズ」
しかし、彼女は構わず進める。
「《不意打ち又佐》で柳沢さんに攻撃します」柳沢LP900-2600=-1700 ヘズLP4000-1700=2300
ヘズは全てをわかっている。
「柳沢のカード、《デーモンの斧》を引き継ぐヨ」
たとえ赤石の言葉より前に気付いてたとしても
「《不意打ち又佐》の効果でヘズさんの《首領・ザルーグ》に攻撃します」《首領・ザルーグ》戦闘破壊、《デーモンの斧》破壊、ヘズLP2300-200=2100
もう、どうしようもなかったということを。
「《不運なリポート》の効果、もう1回バトルフェイズ」
(あのセットモンスターは、ほぼダークシー・フロート…そうじゃなければニュート。でも、もう同じ)
《ニュート》は戦闘で破壊された時、そのモンスターの攻守を500下げる効果を持つ。しかし、そうだとしても結果は同じ。
「《不意打ち又佐》でヘズさんに攻撃します」セットモンスター《ダークシー・フロート》、《ダークシー・フロート》戦闘破壊
何故ならば、
「《不意打ち又佐》の効果でヘズさんに攻撃します」ヘズLP2100-2600=0
ちょうどピッタリ届くからだ。
「わたしたちの、勝ちです…!」
「3回戦勝者、赤石&鈴瀬ペア。これによりマッチも決着。勝者、赤石&鈴瀬ペア」
彼女はプレッシャーから解放されたからか、ふーっと息を吐き前かがみになる。
「では約束通り600万円です、お受け取り下さい」
審判だった黒服が懐から札束を6束取り出し、赤石と彼女の前に置く。
(やっぱりいざ目の前に置かれると、ちょっと身構えちゃうかも)
彼女はまだ札束に慣れないみたいだ。
「勝者ペアはお受け取り次第、速やかに退出して下さい。敗者ペアは勝者ペアの退出後、最低15分はここで待機して下さい」
黒服は退出を促す。これは勝者の身の安全を考慮した措置だ。
「わかりました」
赤石と彼女はそれぞれ3束ずつ然るべきところに仕舞うと、勝利の余韻を感じる間も無く速やかに部屋を退出した。