可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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7話 ♯4「迷って現れて」

ーーー

 

 

 

やがて2日目の夜を迎えた。

 

夕食を終え、これから入浴の時間。浴場の構造や環境を考えても、携帯電話を忍ばせて撮ろうと思えば撮れる。シャッター音にもまず気付かれない。でも…

 

「…」

 

脱衣所で携帯電話を見つめる。迷った末、浴場には持ち込まないことにした。

 

ここは見つかった時のリスクが大きすぎる。わざわざ浴場でなくても部屋で撮ればいい。裸は撮れないけれど、過激という意味ならそれに限らないはず…

 

私が下した決断は従うわけでもなく、翻るわけでもなく先送り。今はそうするしかなかった。

 

 

 

(どうしよう…)

 

部屋に戻ってからも何か動くということはなく、悟られないように時折彼女の方をチラチラ見るだけ。話すことも、もちろん撮ることもできなかった。

 

脅しに屈するの?と言っておきながら私自身も揺れているのだから情けない。

 

そんな私の心情をよそに彼女が立ち上がる。

 

「先生のところに行ってくるね」

 

「うん…」

 

彼女はそう言い残し部屋を出た。

 

 

 

ーーー

 

 

 

彼女たちの泊まっているホテルは山道の途中にあり、夜になると周辺一帯は一気に暗くなる。徒歩5分圏内はともかくそれ以上歩く場合は懐中電灯が必須だ。

 

そんな場所だからか夜に外出する人は少なく、自然と教師たちの見張りも緩くなっていた。

 

 

 

ホテルから少し離れた山道のはずれ、何人かの生徒が話している。

 

「なあ、撮ってくると思うか?」

 

「さあな、結構圧力はかけたんだけどな」

 

「おいおい、うちらの考えた作戦無駄にするなよ?」

 

「大丈夫だって、俺らも結構上手く演技したしさ。ところで椎名は?」

 

「部屋にいるよ。わざわざ行くまでもないってさ」

 

話してる生徒の内訳は、今日彼女と同じ班だった男子生徒3人と椎名たちの班から椎名を除いた女子生徒2人の計5人だ。

 

「なんだそりゃ」

 

「まー椎名抜きでもいいじゃん」

 

「ってかそろそろ送ってくれないかな、もう夜も遅くなってきたし」

 

「あいつの弱みになるような物じゃないと意味ねーからな?あんたたちもそっちの方が欲しいだろ?」

 

「こればっかりは運だな。角度や画質の問題もあるし」

 

「いい画像だったらしばらく使わせてもらおうかなあ」

 

 

 

ーーー

 

 

 

彼女が部屋を出てから20分以上が経過した。

 

「…」

 

(胸騒ぎがする…先生のところに行ってくるって言ってたけど、どうなんだろう…というかこんな時間に先生に呼び出されるっておかしいよね?)

 

私の中の嫌な予感は時間とともに膨れていく。

 

(確認してみよう。確か部屋番号は…)

 

そして急かされるように部屋を出た。

 

 

 

(この部屋だよね)

 

ドアの前に立ち、ノックする。

 

「誰だ?」

 

「栗原です。少し訊きたいことがあって」

 

「開いてるから勝手に入れ」

 

「はい」

 

了承の返事を得て部屋に入る。

 

 

 

「椎名さん…」

 

「何の用だ?」

 

「鈴瀬さん知りませんか?もう20分以上部屋を出てったきり帰ってこないんです」

 

「知らねーよ」

 

「そうですか…」

 

(椎名さんのところじゃなかった…)

 

部屋を見回す。今この部屋にいるのは2人だけのようだ。

 

「あの、他の2人は?」

 

「さあな」

 

そっけなく答える椎名。その様子から同班の2人に関心が無いように見える。

 

「さあな、って…本当に知らないんですか?」

 

私は語気を強めて問う。

 

「鈴瀬は知らねーけど…」

 

椎名に強い視線をぶつける。直接関係は無かったとしても何か知ってるはず。

 

「あいつらならホテルの外だ」

 

「外…!?」

 

「ああ。…何だよ?」

 

私は尚も力強く椎名に視線をぶつける。

 

「椎名さん、お願いがあります」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「おい、まだかよ」

 

「おかしいな…」

 

「ちょっとまずくね」

 

生徒たちに焦りや怒りが見え始める。時間的にもそろそろホテルに戻らなければ教師に気付かれてしまうだろう。

 

「どうする?お前栗原のアドレス知ってるか?」

 

「いや知らん、俺のアドレス渡しただけだし」

 

「もう戻ってウチらが栗原のところ行くわ」

 

女子生徒がホテルへと戻ろうとした時、

 

 

 

「そういうことだったんですね」

 

暗い木の陰から声と共に彼女が姿を現した。

 

「鈴瀬!?」

 

「お前、いつからいたんだ!?」

 

彼女はゆっくりと生徒たちに近付く。

 

「うちらの話、どこまで聞いてた?」

 

「あなたたちの話を完全に理解できるくらいには」

 

そして生徒たちの顔を視界に捉えると、立ち止まった。

 

「なあ、俺たちやばくね…?」

 

「何でここがばれたんだ…!?」

 

怯えながら彼女を見る男子生徒たちとは対照的に、女子生徒の1人が笑いながら言った。

 

「ハハハ、何びびってんだよ。むしろ今、この状況でやばいのは鈴瀬の方じゃないの」

 

この女子生徒の言葉で男子生徒たちから怯えが消える。

 

「暗い夜道に女が1人、あんたたちにとってはいいエサじゃない?」

 

「俺らは獣かい」

 

「獣だろ。画像欲しがってたし」

 

男子生徒の1人が彼女ににじり寄る。

 

「でもそうだな。どうせ全部聞かれてんだ、行くとこまで行けばいいんじゃね?」

 

「鈴瀬、逃げるなら今のうちだぞ?」

 

徐々に彼女との距離を縮める男子生徒たち、しかし彼女は逃げも隠れもしない。

 

「…」

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