可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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7話 ♯8「世間ってやっぱり狭い」

ーーー

 

 

 

「椎名、今からカラオケ行くんだけどお前も来いよ」

 

「あ?ああ」

 

放課後になって間も無く、クラスメイトから誘いを受ける。断る理由も無いので行くことにした。

 

 

 

「それでさー」

 

「マジ?ヤバイうけるー!」

 

「キャハハハ!」

 

カラオケに行く道中、クラスメイトたちは甲高い声をあげながら楽しそうに盛り上がる。

 

話の内容はどうってことないくだらないものだ。何がそんなに面白いのかウチには解りかねる。

 

「椎名もそう思うよな?」

 

不意に流れ弾が来た。

 

「あ?そうだな」

 

何の話か全然聞いてなかったが、とりあえず同意しておく。

 

「だよねーキャハハハ」

 

だから何がそんなに面白いんだ。中学の時からつるんでる奴もいるが、誰ひとり何ひとつ成長してないように見える。ウチもそのひとりかもしれないが。

 

「つーかさあ、有り得ないよねー」

 

まあ、桑鴇に進学する奴らのレベルなんてこんなものだろう。わかってたことだ。

 

 

 

ーーー

 

 

 

藍子が彼女との再会をひとしきり喜んだ後、4人はファーストフード店に来ていた。

 

「会うのは卒業式以来だね!」

 

「うん。ちょっと懐かしい」

 

「レイリと藍子ちゃんが中学の同級生だったとはな」

 

「レイちゃんとは同級生で親友です!」

 

藍子は誇らしげにはっきりと言い切る。

 

「私としては修せんぱいがレイちゃんと一緒に歩いてたことに驚きました。もしかしてそういう仲でしたり…?」

 

「い、いやレイリとはそんなんじゃねえよ」

 

赤石は咄嗟に否定する。彼女はというといつものように動じることなく話を聞いている。

 

「まだ違うんですね」

 

「まだ、って何だよ…」

 

(でも、名前で呼び捨てって親密な感じがします。まずは私もそこからかな?)

 

藍子はほんのちょっぴり彼女に対抗心を抱いた。

 

 

 

(鈴瀬麗梨…確か兄貴に負けたっていうのは)

 

彼女の噂は既に桑鴇高校にまで広まっていた。赤石を負かした桐縹の1年生、から情報が始まり数日もしないうちにそれが彼女だと知れ渡った。

 

(ん?待てよ、土曜日の兄貴の服装から考えると)

 

桜の中で線が繋がっていく。

 

「なあ、鈴瀬」

 

静観を貫いていた桜が口を開いた。

 

「何でしょう?」

 

「…」

 

彼女の名を呼んだものの桜は言葉を発さず観察するようにじっと見据える。

 

(ただ顔が良いだけじゃない。この引き込まれそうな目、その目から何事にも揺れ動かなさそうな強い意思を感じる。たぶんだけど、兄貴と同じ…修羅場を潜り抜けてきた人間だ)

 

(あ、以前アイコが言っていた中学時代の友達ってこの子か。ミステリアスな雰囲気の子…なるほど、一言で表すとそうだな)

 

彼女も言葉を発さない。桜が自分を観察してることをわかってる上で、ただ桜を見つめ返す。

 

「えっと…どうしたの?」

 

そんな2人の状況を困惑しながら窺っていた藍子が口を開いた。

 

「…いや、何でもない」

 

桜は視線をテーブルに戻し、先程注文したドリンクを啜る。

 

(まあ、そういう奴でもなきゃ兄貴のパートナーなんて務まらねーか…それにしてもすごい偶然だな)

 

桜はその目で理解した。土曜日に赤石が誰と一緒に戦ったのかを。

 

 

 

「品定め、されてました」

 

「ぶふっ!」

 

彼女が悩ましげに放った言葉に桜は飲みかけのドリンクを噴く。

 

「そんな言い方するんじゃねーよ!どんな奴か見てただけだ」

 

「ふふっ、確かに品定めだね。あ、口から垂れてるよ」

 

藍子はハンカチを取り出し桜の口元を拭う。

 

「それで、品定めの結果は?」

 

赤石が自分の近くまで飛んできた飛沫を拭いながら問う。

 

「強い自分を持ってる。兄貴と同類、敵にまわしたくない」

 

「同類か。桜からはそう見えたか」

 

桜の答えに赤石は穏やかな表情を見せる。

 

「あくまでぱっと見た印象だけどな。実際のところはどうなんだ?」

 

桜は藍子に向けて尋ねる。

 

「んーだいたい桜ちゃんの感じた通りだと思うよ。でもやっぱり私たちと同じ普通の女の子かなって思う!」

 

「どうも普通の女の子です」

 

(普通の女の子はそんなオーラまとってねーよ…)

 

彼女の言葉に桜は心の中でツッコミを入れた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

カラオケボックス。閉ざされた空間に自由気ままな轟音が響き渡る。

 

「君を~愛してるぅ~」

 

大きな音を聞いても別にイライラするということはない。こういうのに付き合わされたおかげで喧しいのは耐性がついた。

 

「あぁ~君だけを~」

 

しかし音痴だなこいつ、別の意味で耐えられん。

 

「お前音外し過ぎだろー!」

 

そら野次も飛ぶわ。

 

「うるせー!」

 

お前がうるせーよ。マイク持ったまま叫ぶな。

 

「ラ~ラララ~」

 

早く終わんねーかな。

 

 

 

「あーすっきりした」

 

音痴が終了し、ウチの番になる。

 

「お、次は椎名か。良い歌声が聞けるな、音痴な誰かとは違って」

 

「俺椎名の歌聞くの初めてだわ」

 

なんか期待されてるけど、別に大したもんじゃねーよ。

 

 

 

「どうして~私は恋をして~」

 

「おお、バラードど真ん中」

 

「なんか意外ー!」

 

「椎名からこんな歌声が出るなんて…」

 

外野がうるさいが、構わず歌に集中する。

 

 

 

「ふぅ」

 

歌い終えて、一息つく。曲が終わって騒がしい部屋が静まり返った。

 

「すげえ…」

 

「こいつはやべえな」

 

まあ、語彙力は置いといて褒められるのは悪い気しない。

 

「な?椎名歌上手いだろ?」

 

何でお前が得意気になってんだ。

 

「椎名ー、次私とデュエットしよー!」

 

「断る」

 

「ええー!」

 

音痴とは組みたくねえ。

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