可憐なる博徒 レイリ   作:tres

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8話 ♯2「一撃」

「はじめまして」

 

彼女は女の顔を見て挨拶する。女はサングラスをかけ、ミディアムストレートの髪はヘアゴムで結われている。

 

「ええ」

 

彼女の挨拶を適当に返して数秒の間の後、女が呟く。

 

「同類かしら」

 

彼女も数秒間を置いた後、答える。

 

「そうかもしれません」

 

「じゃあ白黒つける」

 

「はい」

 

女は彼女を直感的に同類と察し、彼女もそれに同調する。そんな2人の勝負が始まろうとしていた。人集りとなっていた観客たちもその行方を見守る。

 

ルールは先攻ドロー有のスタンダード。お互いにこの店の貸し出しデッキで戦う。レートは一般的なデュエルハウスと同じくらいだ。

 

なお、どちらのデッキも特定の期間までに登場したカードのみで構成されている。この情報はお互いに把握済みだ。

 

コイントスの結果、先攻は女。

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」

 

(手札、微妙ね)

 

 

 

「《E・HERO スパークマン》召喚」

 

(【E・HERO】…?)

 

「カードセット、エンド」

 

 

 

女LP8000

 

彼女LP8000

 

 

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」

 

彼女は手札を確認しながら思考を巡らす。

 

(フィールドには《E・HERO スパークマン》とセットカードが1枚…様子を見てる?手札に揃ってない?…いや、それよりも)

 

そして考えた後、

 

「カードをセット」

 

1枚…

 

 

 

「セット、セット、セット、セット」

 

(…!)

 

2枚、3枚、4枚、5枚とカードをセットし、

 

「ターンエンドです」

 

ターンを終了した。

 

 

 

女LP8000

 

彼女LP8000

 

 

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」

 

(いきなり5伏せとは面白いことするじゃないの、その上モンスターは無し、と)

 

女は彼女の表情を観察する。が、彼女はフィールドに視線を落としているだけで特に動きは無い。

 

(軽そうね、5枚ともいつでも発動できそうな感じ。あの期間までのカードなら【チェーンバーン】かしら)

 

(手札に今引いた《大嵐》があるけれど、使えないわね。いかにも一掃してみてって感じがぷんぷんして、気に入らないわ)

 

(チェーンの起点になってしまうし、それにさっき伏せた《聖なるバリア -ミラーフォース-》を巻き込んでしまうから)

 

(無視して突っ込むべきね。あのカードたちに警戒することないわ)

 

(もし妨害型や攻撃反応型の罠があったとしても大丈夫、このモンスターなら)

 

「《E・HERO ワイルドマン》召喚」

 

「はい」

 

「バトル」

 

「《E・HERO ワイルドマン》で攻撃」

 

「はい」

 

(ほら、通るもの)

 

「《E・HERO スパークマン》で攻撃」

 

「はい」

 

(確定ね、あの5枚は積み上げるためのものだわ)

 

「エンド」

 

(さあ、どう動くのかしら)

 

 

 

女LP8000

 

彼女LP4900

 

 

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」

 

(こっちを、引きました)

 

「《サイクロン》を発動します。対象はあなたのセットカードです」

 

「ええ」

 

(積み上げてくるわね)

 

女はそう予想するが、彼女は動かない。女は少し虚を衝かれたようになったが、《サイクロン》の効果通り自分のセットカードである《聖なるバリア -ミラーフォース-》を墓地に送った。

 

(チェーンしない、どういうつもり?)

 

 

 

「《二重召喚》を発動します」

 

(《二重召喚》!?…違う、【チェーンバーン】じゃないわ)

 

ここで女は気付いた、彼女のデッキが【チェーンバーン】でないことに。

 

 

 

「《デス・カンガルー》を召喚します」

 

「《融合呪印生物-地》を召喚します。《融合呪印生物-地》の効果発動。特殊召喚するのは《マスター・オブ・OZ》」

 

そして彼女にしてやられたことにも。

 

 

 

「《巨大化》を発動、《マスター・オブ・OZ》に装備します」《マスター・オブ・OZ》攻撃力4200→8400

 

「《野性解放》を発動、対象は《マスター・オブ・OZ》です」《マスター・オブ・OZ》攻撃力8400→12100

 

(読み違えたわ。この子、やるわね)

 

「バトルフェイズ、《マスター・オブ・OZ》で《E・HERO ワイルドマン》に攻撃します」

 

 

 

「…負けたわ」

 

勝敗が決すると女はサングラスの下から少し悔しそうな表情を見せた。

 

「わたしの、勝ちです」

 

女の手札があまり良くなかったというのもあるが、彼女の思い切った作戦は功を奏した。8000のLPは大きな一撃により削り取られた。

 

「おおすげえ!」

「あの姉ちゃんの連勝が止まったぞ」

「やるなあ、あの女の子」

 

周囲で観戦していた観客たちが再びざわめき出す。

 

「ねえ、デュエル経験はどのくらい?」

 

そのざわめきの中、女が問う。

 

「デュエルハウスに行くようになったのは最近です」

 

「そう」

 

「はい」

 

「時間ある?」

 

「1時間くらいは」

 

「それまで付き合って」

 

「いいですよ」

 

彼女の了承により、2人のデュエルは続行となった。

 

「えー姉ちゃん俺とデュエルしてくれないの?」

「俺はあの女の子としたいなー」

「諦めろ。2人の世界に割り込む余地無しだ」

「いいじゃんこういうのも。中々見れないし」

「どっちもかわいいし絵になるよね」

 

観客も続行するようだ。

 

 

 

ーーー

 

 

 

この後2人は6戦して3勝3敗。最初のデュエル以外はどれも拮抗した勝負内容となった。

 

「お相手していただき、ありがとうございました」

 

「ご丁寧ね、付き合ってって言ったのはこっちなのに。ねえ」

 

女は席を立とうとする彼女を呼び止める。

 

「はい」

 

「次は負けないわ」

 

女がそう言うと彼女は少し微笑み、

 

 

 

「また、デュエルしましょう」

 

と言い残し店を後にした。

 

「…」

 

女はただ店を去り行く彼女の背中を見つめていた。

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