可憐なる博徒 レイリ   作:tres

96 / 145
8話 ♯10「続行」

「ドロー!スタンバイ!メイン!」

 

(少しばかり偏った手札だが、問題あるまい)

 

「モンスターセット!カードセット!」

 

(拙者の戦術の前では瑣末なことよ!)

 

「ターンエンド!」

 

 

 

彼女手札3枚

LP4000

◇ ◇ ◇

◇ ◇ ◇

 

柴岡→彼女

 

◇ 裏 ◇

◇ 裏 ◇

LP4000

柴岡手札2枚

 

 

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」

 

彼女手札《カードガンナー》《鎖付きブーメラン》《月の書》《リミッター解除》

 

(セットカードが1枚…)

 

(姿を現すかは、5分の1か2…もしくは3かも)

 

(当たると、いいな)

 

「《カードガンナー》を召喚します」

 

「おおっと!召喚時に罠発動!《連鎖除外》」

 

 

 

 

 

(!…当たった)

 

柴岡は当然のように勢いをつけて振り下ろす。

 

そうして表になったカード、《連鎖除外》…

 

 

 

「…は!?」

 

ではなく、現実に表になったカードは…

 

 

 

 

 

罠カードですらない《ミラージュ・ドラゴン》

 

「ちょ、待て待て違う!これは…」

 

柴岡は驚いて固まった後、慌てて弁解しようとするが…

 

「違うって、何がですか?」

 

「ぐっ…!」

 

彼女の問いに詰まる。

 

「審判、柴岡さんは魔法罠ゾーンにセットできないモンスターカードをセットしておき、それを発動しました。これは反則ではありませんか?」

 

彼女は機を逸さないうちに審判にジャッジを求める。

 

 

 

(やはりナ。鈴瀬さんは気付いていたんダ)

 

(アイツのイカサマの正体ニ)

 

柴岡がしたイカサマ、それは…

 

 

 

(あのデカいスリーブには見えてる1枚だけじゃなイ。見えてないもう1枚のカードが入ってル)

 

通常、スリーブには1枚のカードだけしか入らない。2枚以上入るには入るが、そもそも入れたところで意味は無い。そのカードとして認識されるのは表の1枚だけだからだ(両面が透明なスリーブを除く)。

 

これはどれだけスリーブを重ねようと同じ。2枚以上カードが入ってるところで、見えていないカードは実戦では存在しないカードである。

 

しかし、前のカードが消えれば別。

 

 

 

(オレからは見えていタ。アイツがカードを肩の後ろまで持って行った時…)

 

(スリーブの中からカードを1枚破棄していたのヲ)

 

そう、柴岡は彼女から見えない位置で前のカードをスリーブから抜き取っていた。

 

これにより隠されていたカードが姿を現す。すなわち柴岡は状況によって都合の良い方のカードを出していたのだ。

 

 

 

(破棄した場所は服の中。だから1回戦の後トイレでカードを取り出す必要があっタ)

 

(スリーブから抜いた10枚をユカリに渡して、破棄したカードをスリーブに入れれば、そのまま2回戦のデッキの出来上がりダ)

 

(多重スリーブはおそらく2枚入ってる不自然さを消し、抜き取りやすくするためだろウ)

 

(あの派手な言動や行動もそれを出来るだけ自然に行いやすくするための芝居)

 

(イカサマがバレて黙りこくってる今が本来のアイツだナ)

 

ヘズは全て見抜いていた。いや、ヘズにしか見抜けなかった。柴岡のイカサマが見える位置にいた唯一の人間だからだ。

 

 

 

だが実はもう1人、見えない位置に居ながらも気付いた人間がいた。

 

そう、彼女である。

 

(くそ…!何故だ?何故裏が《ミラージュ・ドラゴン》になってたんだ…!?《連鎖除外》は確かに《ディメンション・ウォール》の裏に入れたはず…!)

 

(スリーブに入れる時に間違えたのか?いや、それは有り得ない!僕がこんなミスをするはずがない!)

 

(ってことは…やられたか!?こいつに!)

 

柴岡は彼女を睨む。

 

(いつだ、いつやられた…あ!)

 

 

 

(あの時かっ!3回戦が始まる前、デッキを落とした時…!そうか『あの時デッキをわざと落とした』んだ!それでカードを拾う時に入れ替えた…!)

 

(だが知っていないと入れ替えるって発想は出ない…つまりそれ以前に気付かれてたのか…!?)

 

(ぐっ…!しくじった!ほぼ確実に勝てる勝負が!一転して敗北だと…?くそっ!)

 

 

 

(イカサマ相手に真っ直ぐ戦う必要は無イ。鈴瀬さんの勝つ道はここにあル)

 

(ユカリならアイツに対し反則負けのジャッジを下すだろウ)

 

ヘズがそう予想した直後、紫の口が開いた。

 

 

 

「確かに柴岡様はルール違反をされました」

 

「うう…」

 

柴岡から弱々しい声が漏れる。

 

 

 

「しかし、それが故意であることは認められません」

 

「よって反則では無く、警告と致します」

 

「…え?」

 

柴岡は呆気にとられ紫の顔を見上げる。

 

(何ッ!?警告だト!?)

 

ヘズの予想とは違い、反則ではなく警告。それが紫の下したジャッジだった。

 

「柴岡様は《ミラージュ・ドラゴン》を墓地に送り、鈴瀬様はそのままターンを続行して下さい」

 

「…はい」

 

彼女は素直に紫の言う通りにする。彼女にとってこのジャッジは不服なはずだが、異議は唱えられない。

 

勝負中に問題等が発生した場合、審判である紫の裁量に従うことを事前に約束しているからだ。

 

(確かに故意である証拠がありません、この勝利への道は消えました。でも…)

 

(これで、同じになった)

 

 

 

(…うおおお!警告で済んだ!まだ拙者の負けではないぞ!)

 

「ただし、もう1度同じルール違反をされた場合には故意とみなし反則と致しますのでご理解下さいませ」

 

「ぐ…し、承知した」

 

浮かれて喜びの表情を見せる柴岡に紫が釘を刺す。

 

柴岡は紫の指示した通り、《ミラージュ・ドラゴン》を墓地に送る。

 

これで勝負は再開。続行ということで彼女のメインフェイズ1からとなる。

 

 

 

(どういうことだユカリ…!)

 

ヘズはこの結果に納得いっていない様子だ。

 

(フリーデュエリストのお前ならわかっているはずだロ?これは一発反則負け、レート有りのデュエルなら初期LPの4000対0での決着だト)

 

(鈴瀬さんに有利なジャッジならまだわかるが、何故アイツの有利になるようなジャッジをしたんダ?)

 

(…そういえば勝負が始まる前から妙にアイツの言うことに素直に従ってたが、まさか買収されてるとかじゃないだろうナ?)

 

ヘズは一瞬、紫に対し疑惑を抱く。が、それはすぐに切り捨てられた。

 

(いや、有り得ないナ。ユカリは買収されるくらいなら審判役を蹴るようなヤツダ。まあ、そもそも完全にアイツ寄りのジャッジってわけでもないカ)

 

(紫の警告でアイツはもうイカサマが出来なくなったしナ。これで対等ダ)

 

 

 

現在の状況

 

彼女手札3枚

LP4000

◇ ◇ ◇

◇ あ ◇

あ=《カードガンナー》攻撃表示

 

彼女メインフェイズ1

 

◇ 裏 ◇

◇ ◇ ◇

LP4000

柴岡手札2枚

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。