やはり俺の部活動選択は間違っている   作:屑太郎

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やはり俺の部活動選択は間違っている

 きっかけは些細なことだった。数々のボッチエピソードが黒歴史になり、アイアンメイデンのように我が身を削りながら外界から身を守る。このような中二病的詩から卒業してすぐ、俺が話したいきっかけは高校一年生入学式までさかのぼる。準備を終えてぴっしりとした制服を着ながら小町の作った朝食を食っていた。何事もない家族との歓談の中。

「お兄ちゃん、今日入学式だっけ?」

「ああ」

 

「うわ、いつもより三割増しで目が腐ってるよ」

「うわとはなんだ、まあ入学式滅びろとは思ってる。正確には入学式直後の自己紹介滅びろ」

 あれほど無駄な時間はない。大体自己紹介じゃ好きなものを話させる、その時に異常なまたは読書と答えるやつのボッチ率は異常、ソースは小学校の俺と中学校の俺。

「うーん、高校で何かやりたいことないの?」

「部活だけはやらん」

「なんで?」

「確実に部活内でボッチになる」

「絶対の自信を感じる…………」

 

「まあ、俺がサッカー部とかのマネージャーとかなる未来を知っていたら大爆笑するわ」

 

 などと話していると、少しというかかなり早い時間ではあったが、少し浮足だっていた俺は朝食を食べた後すぐに家を出た、ただ小町だけが俺を見送ってくれた。俺も小町もこの後車に轢かれるということは予測できなかっただろう。

 

 そこから一年後…………。

 

「……………滅びろ」

 

 グラウンドを見ながらそう呟いていた。グラウンドには五角形と六角形のあん畜生を追いかける多くの人間と、それの応援と称して黄色い声を存分に振りまいている女子。あるプレイヤーがシュートを決めると上がる歓声、削れる俺の感性。

 とまあ俺はサッカー部のマネージャーになっていた。

 どういう事だ、と死んだ眼で粉のスポーツドリンクを作りながら思った。もう死ね、一時のノリで入りそしてここまで続けてしまっている俺。

 

「はあ、もう体もフルオートで動くようになっちまって、社畜…………いや部畜だな、はあ」

 

 もうため息の数は数えきれない。今一番頭を悩ませている原因、あの黄色い声。音で敵を撃退する軍の装備が紹介されていたことがあるが、それ以上に女子の黄色い声を聞かせれば効果は抜群だと思うのは俺だけか。俺だけですね。

 で、声以外に問題なのが。

 

「あいつら全員サッカー部のマネージャーなんだよなぁ」

 

 加えて、全てのマネージャー業は俺が請け負っている。まあ、サルの様な甲高い声を出して応援するのが仕事ともいえる、俺が同じことをやれば勝てる試合も勝てなくなるからだ。眼が腐った男が黄色い声を出す?なめるな、オー○リーの若林レベルで目が死んでる。

 さらに、進学校であるにも関わらず頭が悪い。俺はそんなに人の悪口を言わないタイプだと自負している、人を悪く言う事それは人に期待をして居ることの現れである。人間何もないところから悪は発生しない自分と反対の意見もしくは存在を感じると人はなぜだかそれを裏切りととらえてしまう、ソースは俺。

 つまり、俺は基本的に他人に期待を持つことを放棄しているからだ。部活に入った一年でもそんな思考回路は変わることはなかった。

 

 部活で覚えることはガチガチの縦社会を意識に刷り込む事だけだとこの一年間の中で実感した、ほぼ無い物として扱われている俺を認識するのは顧問ぐらいしかいない。その顧問も俺をさぼっている物だと思っていやがる、この間顧問が俺を呼びつけて「比企谷、お前さぼってるだろ?別に出ないならやめていいぞ」と吐き捨てるように言ったので、その場でメールアドレスを交換し写真送付しながらさぼった報告をした。

 したらものの一週間も足らずに部内での人間関係はぐちゃぐちゃ、無駄とも思える量の何もしてない応援マネージャー達に責任を押し付け合いギスギスしたことがある。こっそりとその様子をほくそえんでいた俺は「ざまあみろ」と一言だけ送り復帰した。

 と、こんなこともあったにも関わらず女子マネはあんな感じだし、特に変わることはなかったただ顧問ぐらいは把握してほしかったし、新年度に向けて部活の人数を整理してたら気が付いたってアンタ入部届受理したんじゃないのかよ。それ以前は幻のシックスメンってか。

 

「っと、いけないいけない。」

 

 愚痴た思考を捨て、俺は部室の冷蔵庫の中身を確認した。瓶に日付をラベリングしたレモンのはちみつ漬けを確認する、特に古くなっている物はなかったのでそのまま放置した。

 これは以前の先輩から教わった。ただ最初こそ何となくでやっていたけど、最近では自主的にやるようにしている。

 

「っべー、うちの女子マネマジ気が利くわ~、マジパねえ。」

「戸部どうしたんだ?」

 

「いや、冷蔵庫にレモンのはちみつ漬け置いてあるんだよ、っべー、マジッベー」

 

「あー、なんかたまにスポーツドリンクの味が違うと思ったらこれ入れてたのか、すごいな」

「うそだろ葉山」

「なんだなんだ?」

 

「なんかもう、女子の手作りの物食べるとかまじ青春してるって感じ?まじっべーわ」

 

 

 という会話を偶然にも聞いてしまった時、もう笑いをこらえずにはいられなかった。あなたの青春、目の腐った男子高校生が作ってますよ。食品CMのキャッチコピーがこれだったら売り上げが減る。売り上げが減らないのは納豆のCMぐらいだ。DHAだけでなく納豆キナーゼも豊富そうだときたら、やるじゃないか俺の目。

 それからは、ほくそえむために毎回レモンのはちみつ漬けだけは作っている。お前の青春!気が付いた時には手遅れなんだよッ!ふはははッ!虚しい。

 

 「あー、そろそろだな。」

 

 こころから元気をひねり出すように呟き、ちょうどいい時間にベンチにスポドリを置く、一応はちみつ漬け入りの物などもある。先輩情報から、そんなに甘くない方がいい、とスポドリの容量を半分くらいにして食塩を入れるだけでも良いらしい。一応複数バリエーションを加えることにより、味や温度に飽きないように工夫している。

 

「最近ボール拾いは自主的にやってくれてるからな」

 

 選手が。

 

「練習試合するぞー、チーム分けこれで」

 

 遠くの方から監督の声が聞こえて来る、内容的に練習試合の開始。俺にとっては腐った目でスコアを記録していく作業に過ぎない。それじゃ俺の目は通常運転じゃないか。

 

 シュートを打つ、歓声が上がる。

 一点入る

 沸き立つ

 

 いろんな意味で俺が沸き立つ。憎悪にも似た何かをため息で逃がしながら、ボールを磨く。

 そうこうしているうちに、練習が終わり解散の流れになっていた。

 円陣のように集合し、明日の練習のメニューを調整していく。その間にグラウンド整備しながらその話を聞いたメモ書きを冷蔵庫の外に張る。

 

 これで帰れると思うことなかれ、奴らはこれで着替えて終わりだが周期的に奴らのユニフォーム、ビブスその他もろもろの洗濯も行わなければいけない。

 母ちゃん小町、俺今度から洗濯物分けておくから。

 

 七不思議のひとつ、俺が目の前でユニフォームを回収しているのにも関わらず誰一人として俺を認識していない。俺がボール持ったら誰も気が付かないんじゃないか?後は…………7つ目語ったら俺自身が七不思議になっちゃうじゃんやめとこ。

 

 取り留めがなさ過ぎてクレ豚のきりもみ回転レベルで思考があっちこっちに行っている間に、俺以外のサッカー部員が居なくなっていた。一仕事を終えて一息つこうと部室に足を伸ばした。取り出したりますのはサッカー部七不思議の2つ目、急に現れるマックスコーヒーをごくごくと飲み干す。

 キンキンに冷えてやがるッ!それをのどを鳴らしながら一口、二口、三口と飲んでいく。食道から胃にかけて甘さでコーティングするように冷たさが巡っていき、溺れたように息を大きく早く吐いた。

 

「ぶはっ…………っかー!このために生きてるな」

 

 マックスコーヒーはどのように飲んでも旨いのだ。バイ八幡。因みにこの冷蔵庫にはマックスコーヒーを練乳+出来るように練乳を備え付けてある。あえてもう一度言う、マックスコーヒーはどのように飲んでも旨いのだ。

 全ての部室の窓を開け放ち、青春(ドブ)の匂い(主に男子高校生の汗によって構成されている)を逃がし、まだ冬の寒さが部屋を横切るのを感じる。そして部屋の残酷ともいえる汚さを見て、白んだ息を吐いた。

 

「もう一仕事だな……………」

 

 部屋の隅にあるゴミ箱にマックスコーヒーの空き缶を投げた、投げたそれはゴミ箱のふちに当たって零れた。本日の空き缶シュート占いは凶ということで残った仕事を早めに片づけることにした。

 

「あーさみっ」

 

 てきぱきと部室の中を片付けて、部室周りの掃除をしていた。確か再来週は練習試合だったな、あとで打ち合わせの電話しておこう。

 

 

 持ってきている荷物はもう捨てたし、身軽な体を引きずりながら俺は我が家に帰っていくのであった。

 

 こんなことをほぼ毎日繰り返している、なんの見返りも消失したこの日々を他人が見たとしたらと仮定する時がある。そんなときは胸を張ってこういうだろう。

 

 やはり俺の部活動選択は間違っている。

 

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