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わがまま、という言葉がある。わがままとは、自己中心的に他人のことを歯牙にもかけず、自分のしたいようにすることであり、俺の人生に最も足りないと思う要素でもある。近年ではもっぱら悪い意味として通っていることもあり、基本、わがままなと形容される物で好意的なものは存在しないと思われる。女性に対してわがままボディなどといわれるくらいだろうか?
だが落ち着いて考えて欲しい、この言葉で得をしているのは完全に言われた側ではなく言った側だ、まあどちらがか一方損しているという意味じゃ変わらないのが現状だ。
そんなあらゆる人を不幸にするわがままだが、漢字にすると【我儘】このようになる。我という漢字は分かる、だがこの現国4位である俺でも薄らぼんやりとしか書けない、儘という字。お前なんなん?儘単体の意味は「成り行きに任せること」とある。
使用例としてガノタ界隈ではあまりにも有名な『ええい、ままよ!』だ。このように儘単体ではそこまで悪い意味合いは無い。シャアはやっぱりカッコいいから。しかし我という漢字を付けると、もっと言えば自分また誰かの主観を加えることによって、マイナスイメージな言葉になってしまう。つまりシャアはバブみを感じている人である。
……………このように人間は自分の意識次第でイメージはプラスマイナスにも傾ける事ができるのだ。
「え~テニスじゃんあーしらも遊んでいい?」
「優美子、練習の邪魔しちゃ悪いだろ?」
「でも楽しそうじゃん交ぜてよ」
でもどうしたって目の前のこいつらだけはマイナスに過ぎないと思うのだが?金髪ダブル縦ドリルさん、そのボディそのままに我儘ブレイン何とかしてくれ…………。
こんな事のあらましは簡単、俺たちと奉仕部でお昼に練習していたら、金髪ダブル縦ドリルとなんか知らないやつ×3と
一言言わせろ、お前ら誰だよ。あとそこのサッカー部二人、遊んでんな練習しろ。別にしなくていいけど。
なんて言葉が言える訳もなく。俺はただ一人口を閉じた。それとなく様子を見ていると、戸塚はぽかんとした顔(かわいい)をして、由比ヶ浜はオロオロし始めて(なんか最近奉仕部に入部したらしい)そして雪ノ下は能面のような顔をしていた。
だけど、俺は真の恐怖は笑顔に潜んでいることを知っている、先輩に比べたら子猫みたいなもんだ。まあ、けどこういう手合いには無視が一番だろ。
「結衣~あーしらも混ぜてよ」
「でもテニス部以外の人は」「結衣だってテニス部以外の人じゃん?何言ってるの?」
「まあまあ優美子、練習の邪魔をしちゃ悪いよ?」
由比ヶ浜さん?何呼び水になっているんですかね?ここでいい顔したら、部外者入れたってことで昼休み中の練習に許可が下りなくなってしまうかもしれない。そう考えたらますますこいつらを放置している理由が無くなってきた。しかしどうする?……………いや、別にどうにもできるな。
「あー、すみません。ちょっといいですか?」
「なにあんた?」
「
「でもうちらには関係なくない?」
こうかはいまひとつのようだ。頭が空かなんかか、だがリア充なんてそんな物だ。生きているリアルが違うから充実させてしまう、それでこんな啖呵切ったところで奴らはすぐ忘れるさ。
「じゃあ、勝負しましょう」
「!?」
「なにそれ、おもしろそうじゃん!」
やっほい乗ってきた。
「どうせ、貴方たち素人なんでルールは簡単にしますか」
「は?あーしはテニスやったことあるし」
「どこら辺まで行ったんですか?」
「県選抜!どうよ隼人、すごいっしょ?」
絡め手以外の何物でもないが、ここでこれをやらなければマネ魂が廃る。
「俺が負けたらここを明け渡す、勝ったら県選抜の人、テニス部に入部してもらう」
「罰ゲームとか、あるとあーし燃えるタイプなんだよね」
「まあ、どうでもいいが。ルールはサーブ一回交代で2本先取か相手の試合放棄それ以外での勝利は認めない以上でいいか?」
「…………ちょっと、こっちに有利なルールだけどそれでいいの?」
優美子さんとやらが、そんな事を言ってきた。怒ってる怒ってる、冷静に人の怒りを見れるようになってから大丈夫大丈夫俺がまともに戦う訳がないだろ?まあ、俺がボッチでそんな事知っている奴ここにはいないんだけど。
「早く終わらせたいんでね、弱いやつにそんな時間をかけなくてもいいだろ」
「なに?マジむかつくんだけど」
「むかついてるのはこっちだよ、ほら、サーブやるよ」
「あーしの事マジなめてるし!一瞬で終わらせてやる」
激情は目を曇らせるのだな、と思いながら、俺は雪ノ下に言った。火に油を注ぐためでもある。
「戸塚の練習、別コートでやっといて。全く面倒だ」
「分かったわ、戸塚君こっちに」
「絶対勝つ!」
たぶん、これが最後の仕事だな。そう確信しながら俺は、ラケットとボールを渡した。ラケットには何も細工はしていない。
俺が勝つためには、こうするしかない。布石を確認するため、俺はスマホを耳に当てた。
「行くよ」
そう言うとボールが高く上がり奇麗なフォームで球を打ち抜いた。女性の体から出ているスピードとは思えないほどだったが、問題はなかった、だって俺はこれから何もしない。
本人もサーブとして会心の出来だったのだろう、それをスルーされた彼女の顔はなんとも間抜けな顔をしていた。未知の物への無関心は
あと俺はボールを拾って佇んでいればいい。
そうすると何秒たってもサーブをする気配を見せない俺に対して怒り始めた。
「ちょっと!早くサーブするし!」
「なんで?」
「ルールで決まっているからだし!何言ってるの意味わかんないんだけど!」
「ルールならさっき言っただろ?『ルールはサーブ一回交代で2本先取か相手の試合放棄それ以外での勝利は認めない』了承しているからこうなってるんだよな?」
今勝てぬのなら勝利条件を変えればいい。卑怯?何とでもいうがいい、そもそも何かを起こそうとするのに他人を巻き込むんじゃない。
「ま、あとはこのままお前が逃げるまで待てばいいってだけだ。あと既に指定校貰ってるから少しは融通が利くぞ」
これにてザ・エンドってね?
「もう良い帰る!」
「じゃあ、勝ちで良いか?」
「はぁ!?」
「この場合相手の試合放棄で俺の勝ちになるけど?」
なんか隣のコートから冷たい視線を感じるんですけど。まあ仕方ないな、フリで良いからキレておくか?呆れて物も言えないとは言え腹に据えかねてる所はあるし。
「ふざけんなし!」
「別にふざけてない、俺はただ数ある自分の勝てる方法を選んでいるだけだ。言いたいことはそれだけか?帰るなら入部の手続きに契約を確認させたいんだけど」
「…………」
勝手に言っていくことにした。
「うちのテニス部なんだが高校で始めた奴も多く、顧問の厚木も指導に熱心って訳じゃなく実に弱い。体力、技術共に不足している上で、そっちの戸塚が部全体の底上げをしようとしている。そこで、非常に申し訳ないんだが技術面でのコーチをしてもらいたい、どんな些細なことでもいい、中学時代にやってた練習方法とか戦略定石等々、本やネットでの知識より実体験としての練習を教えてもらいたい。さっきの暴言は謝る、こっちとしてもなりふり構っていられないんだ頼む」
といって深く頭を下げた。何言ってるんだと俺でも思うが、何が何でも伝えなければ始まらない。伝えるだけ伝えてダメだったら次に行けばいい、折れる心も持ってないし。
「あーあ、飽きちゃった。あーし戻るわ」
といって、気まずい雰囲気を残したまま消えていった。
「さて、練習に戻ろう」
「お見事、といっていいのかわからないけど、流れるように嘘をつくのね最低よ。何が嘘をつきたくないよ、詐欺師さながら」
「言葉を使うなら清廉を捨てる覚悟を持てby俺、それに今はテニス部のマネージャーなんだ、一つの嘘でうまくいくならそれでいいだろ」
それに、あれは完全に相手の頭が空だったし。対話や会話より戦がお望みらしい。
どうやらさっきの金髪縦ドリルは由比ヶ浜と同じクラスのようだし、何なら俺はこのまま早退すればなんの問題もない、帰っても千葉テ○ビ見るしかないから問題行動を起こす要因もない。早退最高だわ。
まあ、やつらが求めるならそうやって振舞ってもいいんだが。
「戸塚、明日俺の最終日なんだが、どうするつもりだ?」
「え?ああ、うん。もうそんなになるんだね。これからはテニス部で頑張っていこうと思うよ」
「おう、じゃあ後はあの……………えっと。金髪縦ドリル……………さん」
「本当に覚えてないんだね…………三浦さんだよ?」
「おう、その三浦さんが来た時にはちゃんと教えてもらえるようにお願いしとけよ。練習再開だな」
幕間に近いあって良いか悪いか、変な試合を持ち込んではいたが。これで、もしかしたら県選抜の人にお願いができるかもしれないと思えばまだ収穫はあった方だろ。
こうして、あとは大きな波乱もなく時間だけが過ぎ去っていった。
◆ ◆ ◆
結論から言って、割と実力の向上は果たされて居たりする。まあ、そこに俺の力は何ら必要なく、戸塚が非常に頑張ってくれてただけなんだが。というと戸塚が恥ずかしそうにこう言った。
「いやいや、あれだけ熱心にサポートしてくれたら僕も頑張らなきゃって思ったんだ」
もうマネージャー冥利に尽きますよこれ。生き方には反するがもうマネージャーって人のありがとうを餌に頑張ってる節はあるんじゃないかと思う。
「それとね、比企谷君にお願いがあるんだけど……………」
「なんだ?」
「これから八幡って呼んでいい?」
「いくらでも呼べ、いや呼んでください」
これから戸塚に八幡って呼んでもらうために頑張るのも良いんじゃないかと一瞬思いかけたが「じゃあな」といってサッカー部の仕事に戻った。
まあ、戻ってからは…………。
「ああ、サボり先輩?こんなところで何してるんですか?」
一色さん、めちゃめちゃ怒ってる状態なんですが、般若見えたよ般若。ふっふっふ、だが、大天使トツカエルの加護を受けた俺の、今のマネ力じゃ太刀打ちできまい。般若と天使の一大抗争が繰り広げられたが、トツカエルが勝ったようだ。
「この2週間本当に辛かったんですからね!」
「悪かったよ、俺がいない間よくやってくれた。連絡はこなかったけど、何か問題はなかったか?」
「怪我人問題行動共に無かったですよ、私が大変だったぐらいです」
唇を尖らせながら、むくれたようにそういう一色は実にあざとい。戸塚を見習ってくれ、あの天然氷のような透き通った可愛さを、だが男だ。
「明日の休日練習休むか?全部やっとくし」
「いーやーでーすー!」
「なんか葉山狙いとはいえ休め、化粧で隠しているがクマ出てるぞ」
「えっ」
「はい、先生カマかけました、もう何なら今日休め」
「なんでそこまで休ませたいんですか?」
「仕事を続けるのは美徳ではあるが、それで体調崩して休むなら本末転倒だろ?」
「大丈夫です!昨日少しラインしすぎちゃっただけですから、先輩と違って友達多いんで」
「さらっと心抉ってくるな。大体大丈夫なように見えないんだが?」
「どこがですか?」
「姿勢が全体的に猫背になってるし、手が荒れてる、足が筋肉痛か何かで動きづらそうにしてる。あと全体的にむくんでる」
疲労で姿勢保持が出来ず、忙しくてクマを消すために化粧はしたがハンドクリームをつける余裕もなかったんだろう。あと純粋に睡眠不足。マネ力極めればこのぐらいは余裕だ。
「何ですか?私の事見すぎじゃないですか?セクハラです!」
「ひでえ、そんなにやりたきゃ別にいいけど。体調崩したらいや崩す前に言え、崩して休むようなことあったらお前んちに看病しに行ってくれる」
なんか自分で言ってて俺にとっても一色にとっても恐ろしすぎる罰ゲームだわ。
「なんですかそれ?気遣いが出来る俺スゲーアピールですか?先輩のは気遣い通りすぎて最早キ○ガイなんで無理ですごめんなさい」
「何を馬鹿な、脅し文句として最適だったから使っただけだ、腐り目男が家に来る前に体調管理しっかりしとけよ」
と俺は吐き捨てて仕事に戻った。俺がいつも仕事していると思っているのか?全く勘違い甚だしい。かなりちょこちょこサボってるわ。
そんなちょこちょことサボってる一コマがこちら。
「比企谷君、先日はありがとう」
「おっと、雪ノ下から礼なんて、今日は槍が降るのかな?」
「依頼を持ってきてくれたお礼よ紅茶でも飲んできなさい」
「ちゃんと飲むから毒は入れてくれるなよ?」
「アツアツの紅茶を頭から浴びたいなんて、そんなに紅茶が好きなのね知らなかったわ」
「ごめんなさい」
「いいのよ、ほら」
といって机に出された、紙コップに注がれた紅茶を息で覚ましながら飲んだ。そういえばサッカー部では買ってきたスポーツドリンクしか出していないが、お茶を出すとしたらなんのお茶が最適なんだろうか?麦茶、紅茶、緑茶、なんとなく麦茶のイメージはあるが…………帰ったら調べないとな。
「飲んでる間位は、仕事のことは忘れなさい。息抜きに来ているのでしょう?」
「…………ありがとな」
「槍が降るかしら?」
「ごめんなさい」
俺が謝るとおかしくてたまらないようにクスクスと笑っていた。その笑顔に少し惹かれたのはここだけの内緒にしておこう。
◇ ◇ ◇
こうしてどうでもいい試合と、かなり重要な負け戦は幕を閉じた。ここから、俺と先輩との絆のような物がずれていく、居た自分と居なくなった自分がせめぎあい、再びどうしようもなく俺を揺さぶっていくのだが……………。
青春において重要な、それでいて学校生活にとっての幕間のような場所を舞台にした道化は。俺は最後にきっとこういうのだろう。
やはり俺の部活動選択は間違っている。