やはり俺の部活動選択は間違っている   作:屑太郎

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作中で未成年の飲酒描写がありますが、この作品は未成年の飲酒を助長させる目的で書かれたものではありません。

誤字報告していただきありがとうございます!実に助かりました!
お気に入り登録も900を超え、嬉しい悲鳴がこの5か月でわあ、からキャアアアアアに成りました、皆さまこれからも応援よろしくお願いします!


酔うな!俺!

 昨日、シスコンとシスコンの戦いを終えた俺の行動は早かった。まず神流川先生の過去問を捜し、見つけ次第要点をまとめて小町に出し、勉強し過ぎでハイになっている所を温かい牛乳を出して眠りにつかせ、明日の朝に朝食の用意を出来るように準備しておく。ふっふっふ、どうだ大志め貴様にここまでのシスコン力はあるまい。

 

 ……………いやいや違う、こっちじゃない。シスコン的にあいつはやべえ、俺小町の部屋に入って荒らすなんてことできねえから。大志関係であれば、その日の内に一色に連絡し、エンジェルラダーの情報を収集した。

 エンジェルラダーはホテルの最上階にあるバーの名前だ。ドレスコードが必要なほどの高級店で時給は半端なく(深夜給ということもあり)高かった。大志から話を聞く限り、そこそこ、この店に行っている事になる。働きようによるがバイト代は10~25万位は堅いだろう、つまりそれ位の何かが必要ってことになるが、一体なんだ?大志の様子を見る限り生活が困窮しているっていう訳じゃない。

 寝る前になって何にせよ、勝負は明日だ。遅刻は勿論、休むなんてことはあってはならない。布団にもぐって寝た。

 

 目が覚めた。素早く起きて準備する。小町のエプロン姿を見ながらコーヒー入り練乳を飲んだ。飯食い終わった瞬間に出て行った。「車にははねられないようにしとくよ」と冗談にならない冗談が口からこぼしてしまった。

 

 そのフラグを回収することなく校門をくぐる。上履きに履き替えて、教室に向かう。誰もいなかった。

 出来るだけ早く来ないと、大志の姉の人なりを確認できないからな。とりあえず荷物を置いて、部活棟に向かう。部活用のカメラを回収するためだ。

 …………最近休んでばかりだ、出来る所で不良債権を回収しないといけない。サッカー部の部室へ行ってゴミや清掃場所を確認し、空き教室で取った動画の編集とスコアカードの記入を急ぐ。いつもだったらこんなことやらないのだが流石に復帰した時が厳しくなりそうだからな。

 小一時間立った所でひと段落付き、そのままここの教室で仮眠を取ることにした。予想以上に一色がやってくれていたので、時間が余ってしまったのだ。

 目を閉じてそのまま少しでも眠りを貪りたい…………。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 麗らかな5月の陽気も空しく掻き消え、蒸し暑さの代名詞が足音を立ててやってくる5月下旬の事。

 もしくは、俺が入部届を出した翌日の事だった。

 

 これからの事を考えれば、平和すぎる午前中の授業を一つ一つ噛みしめ「今日グラウンドから何らかの不発弾出ねーかな」と思いながら過ごすが、無情にも時間は午後の授業を過ぎ去り、放課後がやってきた。重いため息で教室の床が靄がかかっているような気がした。

 

「あ、来た」

「うっす」

「じゃあ、始めようか。部長に挨拶だね」

 

 マジか、やめてくれ挨拶とかうっすしか言えない自信がある。現に今うっすしか言ってないだろ。なに話せばいいんだ…………。考える暇もなく、俺は部室に連行された。

 

「おじゃまー!」

「ノックを、ああそっちが今日からマネージャーの一年?」

「えっ、はい?」

「名前」

「比企谷八幡です!」

「ハハッ、面白い子が入ってきたね。俺は部長の中原幸(なかはらさち)。試合にはそんな出ないお飾り部長さ」

 

 上司の自虐ほど取り扱いにくい物はないだろ。あ、自虐だけだったら俺もよくやるわ。

 部長に挨拶をして、部室を出た。

 

「後は自分であいさつするんだよ」

「嫌です」

「そっか、ならいいや」

 

 あっさり過ぎる。

 そこから先は、ちゃんとノートの通りに練習が進んだ。良く俺もあのノートと松葉杖で追いつく事が出来たな、と自分でも驚いている所だ。でも、重いものを運んだり地味に仕事量が多く、ケガした体から油を刺し忘れた古い自転車のような音が聞こえる気がした。

 

「終わりっ!今日はどうだった?」

「疲れましたね」

「そっか、お疲れ様」

 

 屈託ない笑顔で礼を言われた。うっすしか返せなかった。

 

「私、電車通学だけど、比企谷君は?」

「自転車です」

「家は総武港駅方面だったりする?」

「まあ、そうですが」

「自転車私に久しぶりに乗せてくれない?」

 

 俺は徒歩で帰れと?と言いそうになった。

 

「別にいい…………ですよ?」

「やった!じゃあ、一緒に行こうか」

「え?」

 

 自転車に案内され、俺は後ろに座らせられて両手を先輩の腹に回して密着された。

 

「私は風になるー!」

 

 数分後、俺は出会って数日の先輩の背中と妙に良い匂いが混じったを頬で感じながらケツが痛くなりながら駅へと向かって行くことになった。

 

「今日はありがとね、全体的に気遣いが感じられたよ」

 

そんな言葉を背に受けて俺は帰宅するのだった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「せんぱい?何やってるんですかここで」

 

 肩と耳朶が甘く揺れて俺は目を覚まし、寝ぼけながら声の主に声を掛けた。

 

「一色、なんでここにいるんだ?」

「2時間目体育なんで、着替える時ここ使わせてもらっているんですよ」

 

 サッカー部としてここを使うこともあるから、一色にとって気安い部屋ではあるんだろう。だけどみだりに使えば差し押さえの可能性もあるからやめてもらいたい。使うならばれないようにな

 

「わざわざご苦労なことで」

「あ、そういえばどうして今日休むんですか?大切な用事って言ってましたけど、先輩にあるとも思えないんですけど?」

「ちょっとストーカーになってくる」

 

 幸い大志に話を聞く限り、ヤバいバイトが入っている時間帯も絞り込めた。そして今日ぐらいしかなかったからな。今日の内に首根っこ捕まえてやる。

 

「何本気で気持ち悪い事言ってるんですか?いい加減引きますよ」

「通報まで行かなきゃ儲けものだ……………それに今の状況がまずすぎる」

 

 何?学校に早く着いて遅刻扱いとか、笑い話にもならん。小学校の遠足で楽しみすぎて寝れず、結果寝過ごして遅刻ギリギリだった挙句に班行動からハブられる位な物だよこれ。

 

「じゃあな、遅刻とかすんなよ?」

「なんで涙目なんですか?」

 

 あれっ?おかしいな、前が歪んで歩けないや…………。

 

 勿論泣いてなんかない俺は、ハンカチで目ヤニを取りながら教室に戻った。途中平塚先生に遭遇し、お叱りの言葉を頂きながら教室に戻っていった。朝来た所で、川崎姉の席は確認してある。

 俺が来た時にはすでに川崎さんは座っていた。そうしてつつがなく今日の授業は終わった。

 

 俺の人間観察から今日一日で見た川崎姉の様子だったが…………不器用系ボッチの称号を(勝手に)授与しよう。

 目つきが悪く、一瞬睨みつけているような視線は、生まれつき目が釣り目気味であるのに加え、あれはきっと睡眠不足のせいだろう。触れるものすべて傷つける目をしていた。

 弁当を教室の真ん中で黙々と弁当を食べている様子を見ると、何らいじめられているとかそういう可能性は消えてきている。きっと純粋な近寄りがたさがそうしているのだ。ちらっと見た感じ弁当の中身も出来合いの物でなく一から作っているように感じた、いやっ知識無いからわからんけど。

 

 放課後尾行していると、割といい所の塾にも通っている事が分かった、そこまで地頭も悪くないようだ。昨日のサイゼで頭を抱えていた雪ノ下を思い出した。

 とまあ、ここまでで入手した情報は 1つ目は相手もボッチであり、学校でいじめられている可能性は薄い事。2つ目は塾に通っていること。そして、最後に今現在ここで働いていること…………。

 目の前のビルを見上げ、最上階を睨むように見た。幸いにしてそのビルから我が家は近く、ドレスコート用に親父の部屋のクローゼットからスーツをかっぱらって、またもや親父のワックスをパクって来れた。

 俺が親父のスーツに袖を通すと、大人というより疲弊したヤーさんみたいに見える。あとは、俺の姿が店側に止められるか止められないかが一つ賭けだった。

 

 既に午後十時は周り、未成年はアウトの時間になってきた。そもそも酒を扱う所で働くこと自体アウト臭いのだが、それは外しておこう。そして、俺は踏み入った。

 どこかから冷や汗を流しながら入店したが、拍子抜けしたようにすんなりと通してくれた。虎穴に入らずんば行きはよいよい、帰りは怖いな状態だ。

 だがしかし、塾から出てくる大志を締め上げ金をせびり、小町に土下座してお金を借りた俺に、金関係の死角はなかった。あれっ、俺既に屑ルート突入中?

 周りを見渡す…………見知ってないが追い続けた顔がカウンターの向こうでグラスを拭いていた。

 

 まずはスタートラインに立ったに過ぎない。カウンターを見て川崎姉に近い所に座る。ちらと顔を見て反応を伺ったが、何も返ってこない。

 

 

「ご注文は?」

「まっk、マティーニで」

 

 あぶねえ、ノリでマックスコーヒーを頼む所だった。ある訳ないだろ……………いや、それより未成年飲酒的にまずいんじゃね?だが、一旦注文したものを取り消すのも不自然すぎる、しかし飲まないのもまた然りだ。やべえ、しかもマティーニとかなぜか馬鹿有名でにわか臭い。

 

 ポケットからスマホを取り出して、一瞬時間を確認する。

 いつもやっていることだ、落ち着いてマネジメントすればいいだけの話。いつもは他人、今は自分で自分をやるしかない。

 思い出せ。投網漁の如く大雑把で、だが、あまりに効果的で驚異的でサイコでイカレた『先輩』のやり方を。たった一年にも満たない期間だったが、それでもあの花のような時間に今一つ願うのなら。

 

 酔うな!俺!

 

 俺は目の前に差し出された神の血を、舐めるようにして飲み切った。初めての感覚で、冷たいが熱い液体が喉を滑り落ち胃袋に溜まっていく感覚が、体を揺さぶりどうしようもなく気持ち悪かったが、耐え忍んだ。

 俺は我慢できなくなったかの様に導かれながら、財布から自分の学生証を川崎姉の前に滑るように見せた。周りに人がいないのを確認して。

 

「ッ!?」

 

 俺はあからさまに揺さぶりをかけ、川崎姉から情報を引き出す土壌を作っている。そしてそれに俺は乗る、彼女の胸中にあるビックウェーブを乗りこなせるかが、ここからの成功を左右させる。

 この行為にリスクはあるが、死なばもろともだ。俺は捕まるだろうが、こいつもどうなるか分かっているはず。それに相手から見た俺は、たとえ俺が未知であれ既知であれ、自分のリスクしか公開していない狂人だ。だが、同じ学校同じ年齢の人間が居てはいけない事、そしてたった一つの疑念が行動を制限した。

 …………職種的に、問題がないのであればこの瞬間に叩き出せばいいだけの話。それをしないということは川崎姉が決定的にこの状況を軽視していない事の現れだ。ここで学生証を回収し畳みかける。

 

「お嬢さん、いつからここで働いているんだ?」

「…………2か月前からです、カウンターを任されるようになってから、まだ日が浅いですが」

 

 大志の言葉と一致する。真実を話していた。

 

「私は、こういう所は詳しくないんでね、相当な努力をしたのでは?」

「ええ、事情がありますので」

「夏期講習とか?」

 

 努めて笑顔だ、本当に怖い表情は笑顔だと、今の俺は知っている。人を追い込むようなことしたくないが、今回は仕方ない。

 この時期の二年生は、進学を考え焦りだす時期、それで夏期講習が視野に入ってくるとなると、金を集めなくてはいけない状態にある、のは大志から聞いた。

 それに川崎姉は不器用系ボッチ、孤立が思考に影響した行動を、俺が知らないわけがない。

 1人でなんでも抱え込んでいるつもりで動き、物事を単純化し大雑把に問題を解決しようとするが、それをマンパワーで処理するあまり、自らの負荷がかかりさらに単純化とごり押しな処理を遂行し、妙な自信と自尊心で押しつぶされるだけだ。

 

「…………アンタ、何がしたいの?」

「これを今すぐ止めろとは言わない、俺があっているなら頷いてくれ」

 

 目を伏せながら口の前で手を組み、俺は川崎姉の様子を伺った。しばらくの逡巡の後、頷いた。

 

「なら、もうこれをやる必要はない」

「何をっ!」

「塾にスカラシップ制度がある」

 

 俺は本題に入った。話すことで気を付けるのは、他の人間に聞かれても問題ない内容であること、そして淡々と説明すること。

 

「明日5時前の通りの○ックで待ってる、一度家族と腹割って話してみてくれ」

 

 そこからはトントン拍子に話が進んでいった。立ち去って俺立ち合いの元、大志と話し合い(と言っても結構こじれたが)俺のフォローもあって、一応その場は今のアルバイトをやめる言質も取った。川崎姉に最後に捨て台詞を吐かれた俺は、一つ質問をした。

 

 

 

「なあ、サッカー部関連で、金になる話をされたことはないか?」

 

 

 

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