季節は廻り7月、いつの間にかやってきた熱気をただただ自身の身で受けている日々がやってきた。と思ったら嬉しい嬉しい夏季休校、夏休みという素晴らしかった期間に入っていた。
あれ?いつの間にこんなに暑くなっているんだろう?という状態は、中学まで夏休みはクーラー風の奴隷になっていた俺にとって2回目ぐらいの感覚で非常に慣れない。
それでなくても、この時期から選手の熱中症対策に気を配らなければならないし、クエン酸をレモン汁から摂取させていたが傷みやすくなるため、先日理科の先生から実験で使うクエン酸を少量貰ってきた所だ。これで痛むことはなく、クエン酸を摂取させることができる。去年の残りがあったのだが中身が心もとなくなってきたのでこうした方法を取った。
さあ、実験を(お前らの体で)始めよう。よっしゃ、勝利の法則は決まった気がする。
という訳で、俺は基本的に高校に入ってから夏休みは休めるものではなく、むしろ休みの方が印象に残っている。撮り貯めたプリ○ュア見てたりな。
因みにさっぱりと忘れていたが、サッカー部の大会はかなり長い期間行う。というかとある全国的な大会がリーグ戦で行い、そこに加えて普通の全国大会なども入ってくるため、酷いときは一週間ほどもスパン開けずに試合をすることになる、まあ、大体予選に出るくらいで長引くこともないと思う、さほど強くないしな。
これを聞けば、どれだけサッカー部が多いか如実にわかると思われる、全部トーナメントにしてくれよ、一瞬で終わるからこの学校。
とはいっても、なぜか惰性で続けるこの練習、目の前で走り回っているのを見て、なんでこいつらこんなに躍起になってるのだろうかと、腐った目を持った俺は思っている訳なんですよ。
そこの所どう思いますか一色さん?
「暑いです…………」
「分かる。だけど余計に暑くなるから止めろ、俺たちの代はまだ恵まれているんだぞ」
と頭上にあるこのテントを見る。先輩の話だと先輩がマネージャーになった時は上のテントは用意されていなかったのだ。そう考えたらぞっとするね、死んだ魚から干物にレベルアップする所だった。死んでるのには変わりないが、旨味が段違いさ!
「今日で二回目ですよその話」
「暑いと呟いたのは3回目だ、んぐっんぐっ。はぁ、氷がなけりゃ死んでるぞこれ」
もう死ぬ、動いてないけど死ぬ。俺モヤシじゃん?モヤシって萌やしとも読めるじゃん?なら俺萌えキャラじゃん?萌えキャラに肉体労働させるとかマジありえないんだけど?
やべえ、思考回路が暑さでバグって来た。
「こっちも死にそうなんでそれ下さい」
「あ?飲みかけだ馬鹿野郎ドリンク追加で作ってくるわ」
「あー、先輩絶対そういって次の練習の準備押し付けるでしょ」
ち、バレたか。もう暑くてそんなことも考えられなくなっていると思ったんだがな。実際俺忘れてたし。
いや、違うから葉山とこいつをくっつけようとしているだけだし?この腐った目のキューピットさんに任せなさい。普通の矢しか持ってないけど、なんだ?シザーハ○ズか?
「俺涼しい所行きたい、具体的にはクーラーの前に行きたい」
「いいですねそれ、私はシャワー浴びたいです」
打ち水の効果はついさっき無くなったし、気持ち涼しい位の効果しかなかったな。今度早起き止めよ。
「「はぁ…………休みが欲しい…………」」
これはとある休みを渇望する部活ソルジャーが心に残った蹂躙された休日の話である。
◆ ◆ ◆
お盆という物がある。その日は先祖の霊が家に来る日で迎えるために休みなのだが、今では慣例となって学校の先生でも休むことがある。塾などがあれば、そんなものは蹂躙されつくすのだが(ここだけは)幸いなことに普通に休みだ。
まあ今は違うんだけどな。
今は大会が終わった後の微妙な期間で、何故か知らないが部活は休みになっている。ええ、待ちに待った休みですよ、小町も特に何もしていないようで、遊びに行くにも便利な時間だと携帯ゲームをやりながら思っていた。
待ってくれ、このままだとまた無為に時間を過ごしてしまう、俺の手から離れてくれとまあ離れないんですけど。
このせっかく休日になって外出したいが家でダラダラしてしまう現象を、誰か名付けてください。
冷えた空気の下に寝そべって、冷えてきたら毛布をかぶる。なんと無駄な事をしてるのかと背徳感と優越感でさらに地球の重力に引き寄せられる。
というより最初から外に出る気はない。一言いいたいのが、なんでこんな夏休みを休みとして満喫できないのかと…………去年も思ったなこれ。結局一年やそこらで未だ進歩はしてないのだ。
一つため息をついて、携帯ゲームに戻ろうとした時、部屋の扉が開いた。小町が入ってきて俺を見るなり顔をしかめた。そんな態度取られると少なからず傷つくぞ。
「はぁ…………お兄ちゃんは部活に入っても基本出不精だねぇ」
「不変って言え、なんか価値がありそうだろ?」
例えそれが、変わらぬクソだとしても。だって金とか昔は変わらないものってだけで価値があったんだぜ?
「何言ってるの全くこのゴミィちゃんは。それはそれとして、小町ちょっとお出かけしたいな~って」
「金は無い」
正確には気持ちよく使える金は無い。エ○本とともに封印した(高校生としては)多額の金の出所を思えば…………この爆弾を処理したい。
「お兄ちゃん、それ彼女が出来た時もそういうつもり?」
「おう」
「狂ってるよ!もう少しオブラートに包もうよ!」
「いや、違うぞ小町。仮定が狂ってるから答えが狂ってるのであって俺は悪くねえ、むしろ彼女と同じ対応を妹にもできる俺を褒めて欲しいくらいだ」
「えー、なんか小町的にポイント低い…………」
「俺に彼女なんてできる訳ないだろ、で、俺は何すればいいんだ?」
大体小町が俺に構ってくる時はお願い事か、それとなく会話しながら相談事を持ちかけてくるのだ。いや、俺ならどうする?という問いを投げかけてくるあたり、俺が取らない選択を取れば、なんだかんだ上手く行っているのだろう。
そう考えたら俺、小町の高性能な他山の石なんじゃ…………。
「…………うん、妙な所で勘が良いと彼女は出来なくなるんだね」
「嘘だろ」
「小町は千葉に行きたいのです!」
千葉県民にとって、千葉に行くは大体千葉駅を指す。何か欲しいものでもあるのか、ただ金は無いから俺が小町の為に何も買えないのだが。
「別にいいぞ、ちょうど暇してた所だ」
「本当!?じゃあ動きやすい格好に着替えてきて?」
「お?おう」
と言って俺は自室に戻り、着替えた…………身支度に時間がかかるのは小町だけなのだろうか?着替え終わってリビングでスマホをいじっていると、大きな荷物を持った小町がやってきた。それを疑問に思いながらも千葉駅に向かった。はずだった。
「おお、まさか本当に来るとはな」
「謀ったな小町」
連れられた目の前には、雪ノ下と交流を持った原因、平塚女史そして見た先に笑っている小町。なぜだ、何故だ小町お前も裏切ったのか。
「小町、お前千葉に行くって」
「ん?なんだお前聞いていなかったのか?今から行くのは千葉村だぞ?」
…………。Why?
「平塚先生はなんでここに?」
「奉仕部として林間学校のボランティアとして参加するからなのだが…………雪ノ下から聞いていなかったのか?」
「え?」
とこの状況に呆けていると、後ろから声がかかった。雪ノ下と由比ヶ浜と…………戸塚!?
「小町さん、お兄さんを連れてきてくれてありがとう」
「いえいえ!どういたしまして!」
「お前らいつの間に…………」
ふと、いつか行ったららぽの出来事を思い出す。あの時に連絡先交換していたんですか、正コミュ力の化け物小町の異名を取れるぞ。
「はちまーん」
「あ、戸塚。戸塚もボランティアに?」
「うん、そうだよ。八幡も来るなんて、少し楽しみだな」
良し、行こう。じゃねえ、とりあえず説明だなんでこんなことしなきゃいけねえんだ。
「おい、雪ノ下」
「何かしら?」
「なんで俺を呼び出した?」
「私たちだけでは手に余ると思ったからよ」
半ば呆れたように聞くと実に謎な答えが返ってきた。
「よくもまあ俺に頼めたな」
「実は、貴方の仕事を見て、能力に足る部分はあると思ったわ。それに、友達なのでしょう?」
いつかの賭けに負けた時の言葉がここに来て俺を蝕んできたのかと思うと頭を抱えた。悪戯が決まった悪ガキのような笑顔をみて、思わず見惚れたのは黙っておこう。
それより、なんで俺だ?断る理由を探した。
「え、八幡は来ないの?」
行きまぁす。いや、戸塚立っての願いでも行かんぞ。
「私からもお願い、一緒に来てくれないかしら?」
雪ノ下の言葉で、俺のマネージャースイッチが入った。プライベートで入ることはないと思ってたが既に学校行事だ、さて文句を言うだけ言ってやろう。思いっきり歯ぎしりをするように言ってやった。
「おい、いいか雪ノ下!百歩譲って俺を誘うのはいい、俺を謀ったのもまだいい、小町を巻き込んだこともはらわた煮えくり返ると思うがまだ許せる!だけど、頼んでおいて詳細なデータも寄越さず協力しろとはどういう了見だ?旅のしおりから先生たちの下調べの資料まで何から何まで用意はしてるんだろうな?ああ?」
やるなら徹底的にと決まっている。流石に、俺の記憶上の林間学校じゃあ、ボランティアはそこまで出張ってなかったから、そこまで最初はやることはないと思うが…………。ええい、俺の記憶が約に立つか馬鹿野郎。
「…………そこまでやる気があったとはな。此方が貰った資料は全て君に回そう」
試合会場の下調べや相手校の動きを打ち合わせするのは大会前に最低限俺はしておかなければ、不測の事態に対応できないだろ。どこかで迷ったりするやつもいるから。べーべー言いながら遅刻してきた時は心の中でぶん殴っていたな、まあスタメンじゃなかったから良いんだけど。
深くため息をついて、俺は渋々と車に乗り込んだ。
蹂躙される休みの一節に過ぎなかった。そしてそれはさらに加速していった。
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