やはり俺の部活動選択は間違っている   作:屑太郎

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 遭遇戦的な何か。




華麗など無い

 俺はびしょびしょになった普段着を昨夜宿泊した場所の近くで絞りながら、小町に心配されていた。まあ、普通の服で川に倒れるように浸かったのだから、はた目から見たらかなり不気味な光景に映るだろう。現にサッカー部二人は確実に引いていたね。

 

 そして、肝試しの時がやってきた。その前まで、協力者の擁立や先生への隠蔽に肝試し自体の準備など、いろいろ準備してきた。全ては完璧。

 ただ、それがすべて無為に帰す事が出来るのが、あの鶴見留美という小学生という事だけを除けば。

 俺は静かに待つ、微かなサインも見逃さないように集中して。

 

 結果は…………鶴見はカメラを持ってきていた。由比ヶ浜はホッとして、雪ノ下は半ば蔑みをもった俺を見てきた。ボランティアメンバーの中の総意は安堵しかなかった。

 まあ、俺も安堵しているんですけどね。

 

 18番(葉山)にそれとなく伝え、何も変わらないままに終わった肝試しは楽しいままに。

 せっせと運んだ木材をすべて焼却する儀式、ただ燃やして火を眺めるだけのクソ。キャンプファイヤーを横目で見ながら、なぜかあったマックスコーヒーを喉に流し込んだ。

 流石小町、入れといてくれたんだね!

 

 そんな感じに無理にテンションを上げていくと、雪ノ下に話しかけられた。多分、と言うか絶対今回の事だろう。

 

「比企谷君、あれでは何も変わらないわ」

「いいや、変わるさ。変えられる」

 

 現状を維持すると覚悟を決めた者と、ただ安穏として現状を受け入れる者はその意味合いが全く違う。覚悟を持て、なら次も持てるはずだから。

 

「…………もし、貴方が同じことをやられたらどうする?」

「結局は、同じ選択をしていただろうな」

「どうしてそう思うのかしら?」

「ボッチには、決める事なんて出来ない。ましてや人間関係の崩壊を自分が引き金にして起こそうなんて提案を飲むわけがない」

 

 そう答えた時、とてつもない怒気を感じた。雪ノ下が驚くほど怒ったような口調で俺に反論してきた。

 

「そう答えるのならなぜあんなことを?」

「だけど、奴が決めた奴が望んだ。そうある物なんだと、鶴見自身が決めたはずだ」

「何を言ってるの?あなたはさっき決められないと、矛盾してるわ」

「ああ」

「一応は助けようとした皆の意見を貴方は裏切ったというのかしら?」

 

 俺は何も言わなかった。どうしようもなく深い所で、その言葉はたらい回しになっていて、なおかつ熱くなる瞼を抑えるのに必死だったからだ。

 

「…………私が言うべきじゃないのは分かっているけど、貴方はただ小学生に決定権を預けただけの怠惰よ」

「俺は怠惰かもしれない、鶴見は違う」

 

 それだけは違う。

 

「怠惰はやるべき事から目を背ける事だ、奴は人としてあの選択を選んだ」

「一体彼女にとって成すべきことだと思ったのかしら?」

 

「知るか、鶴見にとってそれは人を傷つけない事だったのかもしれない、ただ精神的に自立することかもしれない、他の方法で人間関係を作ることかもしれないしまた壊す事かもしれない。自分で決着をつけるべきだと思ったのかもしれないし。結局俺らが知らない限りあいつの決意は知ることはない」

 

「それは、無責任よ…………」

「与えられた勝利より勝ち取った敗北だ、無責任でもなんでも、本人が決める必要がある。動くべき時に動かない、決めるときに決められないのは、結果がどうであれきっと後悔するから…………」

 

 

 

 もはや、帰る際は俺の精神状態はお通夜の様だったが、意外に平塚先生とアニメの話で盛り上がったから少しはストレスが軽減されたと信じたい。

 ゼータガンダムの細い盾が好きと言う所で意見が一致したのは流石だったと思う。ただ、あそこまで爛々とした目でアニメ語られてちょっと引きましたよ先生…………。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そうして3時間ほどの体感時間を経て、ついに千葉駅周辺についた。なんか長い道のりだったな…………三日だろ?

 

「こりゃあもう千葉駅で買い物していくしかないな、小町、買い物行こうぜ」

「やった!お昼お兄ちゃんのおごりね!」

 

 仕方ないと嘆息しながら、わかったわかったと投げやりに答えた。サイゼについて洗脳の如く説得すれば何ら問題はない。

 

「戸塚も一緒に行くか?」

「あ、僕はこの後テニスクラブ行くから…………ごめんね」

「そうか、大変だな。疲れ溜まってるだろうから、怪我には気を付けるんだぞ?」

「ありがと八幡、平塚先生もありがとうございました!」

「うむ、比企谷の言う通り気を付けろよ」

 

 といって、駅方面へ走っていった。流石スポーツマンは違うな…………。

 一応体力はそれなりについていると思うが、しばらく動きたくない。買い物して帰って寝たい。

 

「平塚先生、運転お疲れ様です。今回はありがとうございました、俺たちはこの辺で帰りますが、お気をつけてご帰宅してください」

「ああ、お疲れ。あと、馬鹿丁寧にあいさつをするな、気持ち悪すぎる」

「おつかれっした~」

 

 その時、背中に走る寒気に感じる事が出来なかったのは、変な解放感に取りつかれていたからだと思う。近くの道路に寄せるように止めた、黒塗りの高級車に気が付くことが出来なかった。

 ふとその高級車が目に止まり、その瞬間俺は去年の事を思い出していた。

 この時はただ、気が付いていただけで、ほんの少しの感傷に浸っただけで済んだのは、何も抱えている物を知らなかったからだろう

 

 その少しの感傷が時間を喰らい、目の前で起こる出来事をただ棒立ちになってみている事しかできなかったのだから、俺はどうにも救えない。

 

「雪乃ちゃん?迎えにきたよー!」

「姉さん…………」

「他の皆さんも初めまして、私は雪乃ちゃんの姉の雪ノ下陽乃です!よろしく!」

 

 その女を見て、俺は壊滅的な女という印象を持った。

 男の理想を体現したような、振る舞いにこちらに一瞬の目配せをして、その気にさせる方法も、すべてが男の理想そのものだったが、確実にそれは外面だ。

 中身がぐちゃぐちゃで、ひとまずは先輩とは違う壊れ方ではあることは確かだった。

 

 人が壊れている理由や、壊れ方なんて知らない方が良い、ましてや限りなく他人に近い者であるのならばなおさらだ。一緒に壊れてしまわぬように物理的に距離を取ろうとしたその時、目ざとく雪ノ下姉は此方を見つけてきた。

 頼む小町、話を合わせてくれと素早く二回見えないようにウィンクした。

 

 言葉を繰るぞと。

 

「あれ、男の子もいっしょに居るんだ。初めまして、名前は?」

「比企谷八幡です、わざわざどうも。今回は妹さんやその他と共にいい時間を過ごさせて頂きました、本日は妹さんのお出迎えでしょうか?」

 

 とっさに部活での立ち振る舞いが発動した。精神的に無理だった、先輩が蛇だとしたらこの女はただただ人だった、裏切りやルールの逸脱に限っては他の追随を許さない。

 ひとまず何をおいてもこの場から逃げる事が一番重要だった、人は時と場合によって蛇よりも狡猾になれるのだから。

 

「うん、そうだよ。少し聞きたいんだけど八幡はどうして今回のボランティアに参加したのかな?」

「雪ノ下さんに学友として誘われまして、社会経験となると思いましたので参加させて頂きました」

「ふーん…………雪乃ちゃんの彼氏だったりするの?」

 

 顔を近づけるな体の距離を縮めるな。俺は何も知らないですよと言うのと他の人間にターゲットを移す方が利口だ、だから俺が言うべきセリフは…………。

 

「いいえ、違いますよ。ただの友人です。そういう意味では先ほど別れた戸塚君の方が色々知っているかと」

「ふふふっ、面白い子だね!」

「生来から生真面目でしたので」

 

 今とても後悔している、一時とは言え戸塚を売ったようなものだ、この罪は誰に懺悔したらいいですか?ギルティ。

 

「それでは、私はこのあたりで失礼します」

 

 

 

 

 

 ひとまずは、何かその場で禍根を残していってその場から立ち去れた。

 みょうちきりんな男と人間たる女の対決は、男の逃亡で終わった。華麗さなんて求めるべくもない。

 小町からは、かなり不思議そうな目でこちらを見て俺に説明を求めてきた。

 

「どうしたのお兄ちゃん、すっごく気持ち悪かったよ?」

「あの雪ノ下の姉は?」

「人っていう意味じゃ当然かな?」

 

 顎に手を当てて思案顔でそういった。確かに、多かれ少なかれ人は人の前で取り繕うことはある、だけど、そんじょそこらの環境じゃあんな存在にならないと思うんだが?

 あとなんでそれを小町が分かったの?純粋な小町ちゃんに戻って!

 

「お兄ちゃん寄りではあるけど、もっと人の責任や重圧を押し付けられて過ごしていたらあんな風になっちゃうのかも?」

「一般家庭に生まれてよかったわ俺」

「こんな言い方悪いかもしれないけど、お兄ちゃんが雪ノ下さんの家に生まれたら、5年で勘当されるんじゃない?」

「家族内でも迫害されんの俺?」

「今でも似たような物だよ?お兄ちゃんお小遣い少ないし」

「そこは親父に感謝しなきゃな、その分小町のお小遣い多くなってるから」

「小町の家族は金と愛が重いよ…………」

 

他愛ない話をしながら、その場は小町と買い物して帰った。

 




 原作とは違う答えを出し、結局、留美ちゃんの意志によってあのことは取り消しになり、何も行動は起こりません。書いている私が言うのもおかしいですが。
 私は、もしかしたら何もしなくても、カメラと言う親からの友達の絆を求める何かがあれば、もしかしたら遠い将来か近い未来には、近しい人は出来たのではないかと思いました。
 
 原作での行動は、カメラのフラッシュ機能を使って目くらましから逃亡するという物で、私は否定から生まれた団結を壊すための行動を、友達への思いを使って助かることで鶴見をイジメた子供たちへのアンチテーゼと、それに対する皮肉的な答えを提示したかったのではないかと思いました。
 原作では、それをよしとしないまでも「他に楽しい事があれば良い」「外部から孤立させられている事が可哀そう」と結論づけ、それを解消しようと働いてあのような結果です。

 拙作の比企谷は、基本的にそれを肯定していますが、鶴見に選ばせたところが差異点になり、それと同時に選ぶということに執心させています。

 なんというか否ある所だとは思いますが、結果がどうなるかお楽しみいただければ幸いです。






ただの愚痴のような何か

 鶴見、5年たって高校2になればいい性格すると思うんですわ。

 小学生の時の型落ち小型デジカメと、適当な一眼レフ持ち歩いてしんしんと雪が降る中、町が見える丘で町の灯を二つのカメラを使いながら撮っている時に比企谷君と会えばすごいエモいと思うんですよ。

「一枚撮っても良いですか?少し絵になると思ったんです」
「写真っていいですよね、見てくれれば友達の輪が広がりますし」
「いえ、SNSなんかに投稿しませんよ。私の思い出にしますから」
「なら、ちょっと恥ずかしいですけど、コレ私のアカウントと携帯番号ですこれなら信用できるでしょ?」
「これからも私の写真見てくれますか?」

 みたいなね。
 
 そんな小説を私は読みたい。と言うか普通にカメラ少女でもいいなコレ。
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