ギャルゲーという物をご存じであろうか?
いわゆる美少女ゲームもしくは恋愛シュミレーションと呼ばれる物であり、女の子を相手に疑似恋愛を行える物である。
作中での彼、彼女らは当然と言えば当然なのだが、ドラマティックにロマンティックな日々を過ごして、友や彼女たちと泣いて笑って喜怒哀楽を共有し、画面の向こうの主人公にもそれが届くような物語を紡いでいる。
そんなギャルゲーであるが、語りたいのはそこではない。語りたくない訳ではないが、確実に長くなる。
ここでは俺のギャルゲー遍歴の発生について語らさせて頂く。
最初のギャルゲーの出会いは、俺が中学校1年生の夏休み期間までさかのぼる。夏休み期間ものすごく暇で、今でこそこのようになっているがまだまだ汚れを知らぬ少年の心を忘れていなかったため、妙に向上心がある、いわゆる意識高い系のなりかけ、というより意識斜め下系であった。
具体的に何をしたのかというと、気になるものすべてにおいて関わろうとし始めた。
ギャルゲーもその一つだった。
夏休みの中盤も差し掛かったころ、
今となっては自業自得だ馬鹿野郎と笑い飛ばせるが、当時の俺はZ軸が足りない彼女たちを認識しつつ、自身をそこに投影させていた。ゲームはゲーム一緒にするな、という教訓を得た俺はそれからゲームをゲームとして楽しむようになってきた。
そして、いきなりではあるが俺の好きな作品を紹介させていただく。神のみぞ知るセカイだ。
その中で、あまりにも有名な言葉を引用させていただく。
『争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない』
相撲は同じ土俵に立たないと勝負にならないと言い換えてもいいかもしれない。もっと詳しく言えば俺がサッカー部のマネージャーをやっていれば全ての争いは発生しないということだ。つまり、ライバルはどこにもいない。
たまに、ヤンキー漫画などを見て、少しあこがれることがある。子供っぽいプライド、意地や矜持を持ってライバルやほかの人間達を繋いでいく行為は俺にはできないことであることは確実にわかっている。
所詮ない物ねだりだということは分かっている。
という訳で、サッカー部のマネージャーに数人1年生が入ったようです。
その件に当たって一言。これは、サッカー部女子マネージャー(2年生)のお言葉だ。
「なになに?緊張してる?ダイジョーブだよ私らマジプロマネジって感じだし、何でも聞いて(笑)」
どの口が言えるのだろうか。
マネージャーが全員そんな感じで一年生マネージャーに話しかけてきている、頭に何が詰まっているのだろうか?面白すぎてデュフッって笑って気味悪がられただろうが。
通常運転だったことに気が付いて心が痛かった。いや振りでも心痛めとかないとやべえ奴じゃん?
マグロは常に泳がないと死んでしまうらしい、ならば彼女たちは頭にお花畑を咲かせておかなければならないらしい。因みに、選手として入ってきた男は割といいやつだった、どうあがこうと俺のことを認識しないがピュアな瞳で練習に打ち込んでいる。
ピュアに俺をスルーした時は俺の心もさすがに
なんでこんなことやってるんだっけと、迷いそうになったが、友達である雪ノ下雪乃との会話を思い出した。
「サッカー部の…………マネージャー?」
「すげえ不思議そうな顔するな。似合わねえって解ってるから」
「いえ、下僕のように働いているのが目に見えているわ」
「下僕っておい」
「ただ、誰の下僕になるかは自分で決めるような人だと思っていたから」
「ああ、まあなんだ成り行きだったんだよ。割と大変だぜ?」
サッカー部マネジの応援以外の仕事をすべて一人で請け負っていること、それを他人に認識されていないことを軽口を交えながら話していた。すると、ようやっと口を開いたというように、雪ノ下がしゃべった。
「…………なんのために貴方はマネージャーをやっているのかしら?」
「だから成り行き」「いえ、今まで続けている理由よ、報酬と言い換えてもいいわ。あなたの話から貴方自身の報酬が見えてこないのよ」
「報酬か」
「何となくではだめよ、きちんとした説明をお願い」
「どうして?」
と聞いてしまった、そしたら意地の悪い笑顔を浮かべながら俺に言った。
「私たちは、友達なのでしょう?」
「おっけ、なら答えは前払いだったから。…………だな」
酸っぱい思い出を繰り返させてそう言った。
繰り返しと言えば、人間は残っている記憶にいい思い出と悪い思い出があるとしたなら、覚えている比率は悪い思い出の方が多いらしい。それは悪い思い出の方が教訓として残るからみたいなことをテレビで見た。そして繰り返し繰り返し悪い思い出がアホの様に自身に降り注いでいくのを自らの身をもって感じていると、退化してくれと言いたくなる。
過去に戻れるなら過去の自分を殺したい気分は、誰にだってあるはず。
「カッコつけないで頂戴、気持ち悪いわ」
「ストレートだなおい。てか違いますぅ、カッコつけてませんし、カッコつけてると思ったならカッコついているだけですぅ、自然発生したんですぅ」
「自然発酵の間違いではないのかしら?」
「ブフッ」
面白かった。ちなみに腐敗と発酵の違いって人間に益があるかないかの違いだけであり、腐っていることには変わりないが発酵と返してくれて嬉しい。と言ったら即刻腐敗に切り替わるんだろうが。
◆ ◆ ◆
という感じで、今俺は部活の最中に奉仕部の部室でゆっくりと羽を伸ばして休んでいた。そうこうしていると、少しこの奉仕部の部室に近づいて来る足音が聞こえてきた。ミーアキャットの様にソワソワしながらあたりを見回していると、さらに足音がやってくる。
「同年代ぐらいの女子?身長は低めで体重は平均よりちょっと重めか?」
「何を言っているのかしら?」
「足音で大体判別できるだろ?」
本気で気持ち悪そうな顔をしていたからそれ以上何も言えなくなった。因みにマネジ業のたまもの、別の作業をしながら試合運びを聞くためだ。もう少し出来る人材が居ればこんな事する必要がない。実際に先輩がいるときはそうだった。
そして、最終的にこの教室の前で足音は止まり、控えめなノックの音が響いた。
「どうぞー」
「貴方部員じゃないのだけれど…………」
聞き流しながら部室の来訪者を見た。確かに同年代の女子で身長低め、追加項目として童顔で一部がかなり成長しているピンク髪の女子。全体的な印象としてかわいい女子以外には思いつかない。これが狙ってやっているのなら良い結婚詐欺師になりそうだ。
「し、失礼しまーす」
「あ、どうぞこちらに」
「あれ?なんでここにヒッキーが居るの!?」
「どちら様で?」
思わず言った冷たい声に自分でも驚きながらも彼女を見たらしどろもどろになっていた。なんかごめんなさい。と思っていたら思いついたようにこちらに指をさしながらこう言った。
「てか、ヒッキーと私同じクラスじゃん!」
「ああ、クラスの顔と名前何も覚えてなかったわ」
雪ノ下が「徹底しているわね…………」とでも言いたげな顔をしながら俺を見ていた。なら俺の妹の名前知ってるか?知らないだろ?同じ地球に住んでいるのに。という思いを込めて視線を送ったが、確実に届かない。
「ほら、座って。で、この奉仕部に何を頼みに来たんだ?」
「ちょっと…………まあ、良いわ。私はJ組の雪ノ下雪乃よ。貴女は?」
「あっF組の由比ヶ浜結衣です」
そこからの俺は速かった、既に席を立ち二人きりにする一言を言うだけで、円満に彼女らがゆっくりとお話できる空間を作り上げる。
「俺用事あるから」
直ぐに俺は家庭科室を借りに行ったのだった。