やはり俺の部活動選択は間違っている   作:屑太郎

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危うし、文化祭実行委員会の会議

 

 (個人的に)衝撃的だったあの雪ノ下の話を聞いた後、結局その日は協力の取り付けだけで終わった。顔を合わせてそれだけ、それに俺と雪ノ下以外は個人でクラスの働きはある。あ、材木座も。

 

 前に、情けは人の為ならずとは言ったが、結局の所。自分の価値が下がらない限り、一人で何もかも出来る限り必要ないし、頭を下げてまで協力を申し出る訳が無い。

 

 つまり、何が言いたいかと言えば、雪ノ下とあの時口では雪ノ下の為と言っていた18番(葉山)は、何か雪ノ下自体に何か降りかかると予感しているのではないかという事だ。

 今の時点でただの疑いのような物で、全く確証はない。

 

 俺だけの妄想であれば良いと思っていたのだが、その妄想の域を飛び出て来てしまった。

 

 とある日の、文実の会議にて、会議室に先んじて行って無人の会議室で記録雑務の係を全うしていると、不意に妙な気配を感じた。じっとりと頭の天辺からつま先まで俺を品定めするような不快感が背中の辺りに充満していくのが分かってしまう。

 

 誰か入ってきても問題はないが、いつもこうしている俺が今日だけ注目されるという点が異常というだけ。やっと俺の働きが認められた、なんて思う訳もなく胸中にあるのは一つまみの不快感と大海のような不安だけだ。

 

 だが、そんなことでソワソワしていたらまた妙に目をつけられるのはこれまでの経験測から分かっている「うわ、なんか比企谷動いたんだけど。動ききもくてマジ笑えないんだけど」もはや、脊髄反射で気持ち悪がられるのだからG位の知名度あっても良いんじゃないだろうか。

 

 まあ、そろそろ終わるし、画面を閉じて少しトイレ行ってこよう。と、画面を閉じようとしたとき、後ろから閉じる手を防がれた。防いだその手の主を見た。

 背後から壁ドンされている所にさらに振り向いてしまったそこには、微妙に見慣れた顔の趣があるめちゃくちゃな美人が視界一杯に広がっていた。

 

「比企谷君すごいねー」

 

 ここまで近くに顔があれば、嫌でも顔を思い出す。雪ノ下雪乃の姉、雪ノ下陽乃だった。

 失敗したのは、そのまま思考がフリーズしてそのままその顔を見続けた事だった。特に喜色は生まれず、何故ここに居るのか気色悪さしか生まれなかった。

 そのまま、俺は目の前に居る人間に向かって何故にここに居るのかと疑問を口にし、雪ノ下さんはそれを答えた。

 

「ああ、ステージ発表の有志団体として登録しに来たのよ」

「なるほど、じゃあ俺が預かっておきますよ。記入用紙はどうしましたか?」

 

 ただの仕事としてそう言った。親切心とかではなくさっさと帰って欲しかったからだ。しかし、その意図を的確にくみ取って、整った顔を笑顔に変えてこう言った。

 

「もう、邪険にしないの。おねーさん傷ついちゃうぞ?」

「そうですか」

 

 俺は肩を竦めて、じゃあ勝手にしてくれと言う様に、手持ち無沙汰を隠すためPCに向き直った。

 

「へえ、無視しちゃうんだ」

「察しが悪いんで、何か用事があるなら簡潔に言ってください。可能であればやりますし」

 

 これで興味を無くしてくれるはずだ。ああいう手合いは、ひとまずは面白いか面白くないかで俺を判断して、これは確実に面白くない反応なはずだ。

 

「へえ、じゃあ個人的なお願いごと、いいかな?」

「簡単な奴なら一個だけ。あんまり難しいと断ります」

「うーん、これから少しお話をしようと思うんだけどさ、それに口出ししないでもらえるかな?」

 

 出来るかどうか問う様にそう言った。なぜ?なんのために?話とは?と疑問は尽きなかったが、それでも自らの保身のためにここは、はいと答えた。

 

「ありがとう!それにしても、よくこんな事務仕事出来るね。私だったら飽きちゃうよ」

「仕事なんで」

 

 と言って、キーボードを再び叩いた。記録雑務はこなれてしまえばあとはボタン一つで何とか出来る。それに今は手持ち無沙汰ですし?あと少しのデータ入力で終わるはずだったが、雪ノ下さんに声を掛けられた。

 

「……………あなたの先輩の事。もっと知りたくない?」

 

 処理が重くなったように手が止まった。

 先輩の事は俺の中で、もはやタブー。いや、そもそも禁忌などではなく、因果応報の類。他人の傷口を見るような居たたまれないあの事を。やっぱり身勝手ながらも思い出したくない、と思ってしまう。

 

 そこまで考えて思考を全て捨てた。その動揺を取り繕うことも遅いのかもしれないが。思い出したくないと思っていても、ただ俺の中の先輩を利用されることだけは腹が立つ。

 ただ、反撃も何も出来る気がしないので、負け犬のようにその場を去ろうと、席を立った。

 

「いいえ。それじゃあ、失礼します」

「もう終わり?」

「ええ」

「結構早い……え!?なんでマクロ組んでるの!?馬鹿じゃない!?」

 

 後ろからなんか聞こえた気がするが、それを無視して俺はトイレに逃げた。

 

 いや、本当にトイレ行きたかったからね?

 

 顔洗おう、鏡見ないように水だけで顔を洗おう。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 鏡に映っている俺はとても恐ろしい顔をしている。

 昔、鏡の前で笑顔の練習をすれば潰れたヒキガエルのような顔になり、中二病が発症した際にポーズの練習をすれば人形劇の仇役。

 

 どれもこれも腐った目のせいだと信じたい。例えば目だけでも、鏡に見えているあの金髪イケメンのように――――。

 

「うおわっ!?」

「あ、驚かせたかな?」

「音もなく後ろに立ってるんじゃねえよ18番!」

「ッ!?ゴメンゴメン、驚かせるつもりは無かったんだ」

 

 テンパって背番号で呼んじゃったが、まあそこはいいだろう。

 

「そうか、じゃあな」

「今日、いつもと違うことは無かったか」

「雪ノ下姉が顔を出してた…………」

 

 これ以上18番と話すこともない。18番にとっての俺の価値はその程度だから。と、会話を切り上げ、再び会議室に戻った。

 

 

 

 少し休憩している間に会議室には人が集まってきていた。少し空気が緊張している所を見ると、どうやらいまだに雪ノ下姉は居る様だ。

 

 会議室に入ると、委員長と雪ノ下姉が何か話していて、それを不機嫌そうな雪ノ下が見ているという、一触即発な空気だ。…………え?誰か給食費盗んだ?そのくらいの空気なんだけど。

 などと思っていて聞き耳を立ててみると、どうやらただの世間話の様だ。

 

 だが、組織は司令塔無くして動けない。そして現在頭に据えられているこの委員長。何かの傀儡であればよかったのだが、傀儡というより奔放な子供。気分とノリで行動するその様は年中渋谷のハロウィンピーポーの脳内でも表しているのではないかと思う程だ。

 

 そして、その一言は。死の行進曲を奏でる事になる。

 

「あのー、少し考えたんですけど」

 

 よく考えてください。

 

「実行委員は自分たちも楽しまなきゃ他人を楽しませられないっていうか、自分たちが楽しんでこその文化祭かなって思って」

 

 ハロウィンの暴徒たちは自分楽しむだけでしたよ。

 

「クラスの方も滞っている所もあるだろうし、少しこちらの仕事のペースを落とそうと思うんですけど」

 

 と言った瞬間、副委員長がさんせーと言い放ち。俺は頭の中でこれからの作業の進行を計算する。

 

 結論。死んだ。

 

 

 

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