やはり俺の部活動選択は間違っている   作:屑太郎

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炎の海でスキューバダイビング

 

 さて、今回俺が使える札を説明しておこう。

 

 と言っても今の状況で使えるのはサッカー部で培われた圧倒的情報処理能力。マクロまで使えたのは今回ばかりはかなり助けられている。

 それに関しては追随を許さなかった。

 

 ただ一人で出来る事などたかが知れている。

 

 それもそのはず圧倒的に時間が足りないからだ。

 

 ひとまず、一番の救いは雪ノ下が広報系の事をやってくれていた時に、ついでに周辺住民の協力と理解を取り付けてくれたことだった。

 正直これが未知数だったからあとはどうとでもなるのが辛い所だ。たぶん、それなりの物はできてしまうだろう。正直、俺と雪ノ下が居れば大抵何とかなる気がしてしまうのだ。

 

 ただ、どちらも円滑な対人コミュニケーションを構築するのには不向きな性格をしている。

 だから、あの委員長の発言から少し経ったこの会議室の空気を良くする方法なんて知る訳が無かった。

 

 実際デスマーチとは言ったが、ぶっちゃけそこまで物ではない。使える人間が居ればの話だが。

 

 結局、誰かが遊んでいる中でこうやって必死になって仕事しているのが気にくわないだけだ。…………あれ、そんな事言ってもいつもやっている事と全く変わらないぞ?

 

 

 最早全人類気にくわない。

 

 

「先輩?なに変な事考えてるんですか?」

「おう、一色か。どうした?」

「いや、スルーしないでくださいよ」

「変な事考えてないでーす。満足か?」

「実際何考えていたんですか?」

「今ここに来てない奴死なねーかなとか思っているだけだ」

「十分変ですよ」

 

 そこで一色は、周囲を見回してそれにしても、と言って言葉を区切った。

 

「人が居ないですね」

「悲しい事にな。で何しに来たんだ?」

「クラスの書類を出しに来たんですよ。先輩の顔見たかったわけじゃないですから」

「だろうな」

 

 と言ったら一色は大きなため息をついて、同じ一年生の女子の所に近づいていった。いや、でも結局なんで俺に話かけたのか全く分からねえ。…………まあいいか。本当に困ったりとかすれば話してくれるだろ。

 というか俺の顔を見たがる人類が果たして居るのだろうか。

 

 

 

 そうして今日の作業も終わった。終わる頃には担当している記録雑務としての残っている仕事は7割程度になっていたが。こういう物は全体の作業が進むにつれて相対的に仕事が増えていく。

 

 記録は今ある目の前の物しか記録出来ないのだから、時間がたてば必然作業が増える。

 これから、どれほどの仕事がやってくるのか頭を抱えながら帰宅することしか出来なかった。

 

 

 

 結局今の構造的に、上、つまり委員長への進言が成り立たなくなっている事に問題がある。

 

 全員いればそれだけ時間も取れるし相談事などもスムーズに行きやすいが、そもそもの体質がお山の大将なのだからどうしようもないように見える。

 

 せめて一人でも、進言出来る奴が居れば問題ないんだが。

 大きくため息をついた。

 

 …………正直、嵌めるのは事実簡単だ。現在、ハンコ作業を副委員長に丸投げしている状態にまで来てしまったためだ。

 雪ノ下姉が委員長に接触した時から、こういう言い方は良くないが調子に乗っている………一体何を言ったんだ?

 

 そんな事を思いながら、帰ろうと自転車のサドルにまたがった。そして聞きなれた声が問いかけられた。

 

「先輩」

「おっ?一色か?どうした」

「一緒に帰りませんか?相談したいことがあるんで」

 

 妙に不機嫌そうに一色がそう言った。

 

「俺の家…………いや、サイゼで良いか?」

「いきなり自分の家に連れ込むなんて彼氏面しないでくださいよ!告白ですか!?私としては前向きに検討しますがやっぱり心の準備がまだ出来ないのでごめんなさい!」

「俺相談持ちかけられてる方なんだけど?」

 

 何か訳の分からない事を言い出した。まあ、別に相談乗るのは問題ないが。

 

「近くのサイゼで俺一緒に居るのを見られる事の方が不味いだろ」

「それは良いですよ、なんとでも言えますから。サイゼですね分かりました行きましょう」

 

 まあ、俺に解決できるような事があれば良い…………とはいえ、女子の相談事はたいてい答えが決まっていて、解決するように出来ていないのである。

 ソースは俺の妹。

 

 これが二者択一であればまだいい方で、超絶曖昧な答えを持たれると砂漠で小さな宝石を探すようなものだ。

 そういう答えを持っていない事を祈り、辛○チキンを頼もうと思案しながらサイゼに向かった。今日は王道の気分だったのだ。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そうして不機嫌オーラバリバリの一色さんがドリアを頬張り、ドリンクバーのコーラをがぶのみしながら文句を垂れてきた。

 

「大体なんで先輩たちは、協力してくれって言ってもすぐ言ってくれないんですか!?私だって役に立てると思ったのにぃ~」

「コーラで酔ったのか?俺たちにしたってあの状況は少し辛いって言うのはあるが、ぶっちゃけ解決策が」

「それを相談しろって言ってるんですよ!」

「うっ、首回らなかったというか。それなりに雪ノ下とも話たんだが」

「他には!」

「……………ないです」

「内容は!?」

「……………どうしよう、以上です」

「馬鹿か!」

 

 ここに雪ノ下が居なくてよかったと思っている。雪ノ下も泣くぞ。なんなら今俺泣いてるよ。

 

「どうどう」

「落ち着いてられるかってんですよ!」

「あっ」

 

 チキン食われた…………。

 

「ま、まあ、二人ともボッチだったし、問題を一人で処理してきたと思えば情状酌量の余地が」

「それは分かりますけど…………」

 

 シュンとした顔でそう言った。

 おっと、心に来たこの分かられても感が。

 

「じゃあ、すまないが今の状況を説明するがいいか?」

 

 と言って、今の状態を話した。

 正直言って、今ある状況は人手があれば全て解決する問題ではある。だが使える人手は学生というくくりでもあり、今ではクラス、委員会、部活の三つの集団に所属している中で行動している。

 

 正直そんなに多くの集団に所属すると首が回らなくなるが故の文実なのだが…………まあ、掲げている名目だけ見れば奇麗な物なんだろうけれど。

 

「その時に言えば…………っていう問題でもないでしょうし」

「仮に人手を確保した所で正直根本的な問題にはならないし、委員長をどうにかしないと、とは思っているんだがなぁ」

「注意はしたんですか?」

「効果なし。調子乗りすぎ…………なんて言うのもなぁ」

 

「まあ、そう思うのは仕方ないと思いますよ。そういう女子って大体隅っこでいじけあっていて陰口を言い合う割に、本当に矢面に立った時には震えて何も言えなくなっちゃうんです。話を聞いている限りそんな人が周りにおだてられて委員長になった感じなんですよね?」

 

「めっちゃ毒吐くなぁ」

「私も思う所があるんですよ」

「……………一色、そういう人間は何されたら不安がると思う?」

 

 個人的には、上からの圧力。先生が動いて傀儡レベルで動いてもらえれば全員に召集をかけられる。謙るのはたぶん得意なんだろうな。なんて陰鬱な独白をしながらそう考えていると。一色は別の考えを出した。

 

「方法を度外視で考えれば、噂…………ですかねぇ」

「ああ、確かに。わからんでは無いが。噂を流すほどの情報が無さすぎるのと、即効性に疑問が残る」

 

 というか、今、委員長に働きかけて何とかしようとするのは。今こうしている時点で教室の隅っこで陰口言い合う人間と何が違うのかとも考えなくもないが、今出せる知恵を…………。

 

「そうですよねぇ…………また、今度集まって作戦会議でも開きますか?」

「そうだな、結局必要なのは横の繋がりか…………ボッチにはつらいぜ。じゃあ、会計してくる」

「そうですね」

「あと、一色。文化祭頑張れよ」

「え、ええ。いきなりなんですか?」

「葉山のアレ成功させてさっさとやめてくれ」

 

 顔を真っ赤にさせて、俺が会計している所にかみつかんばかりの勢いで怒鳴ってきた。

 

「いーやーでーすぅー!くーどーいーでーすぅー!久しぶりに聞きましたよ!大体、何で私が辞めなきゃいけないんですか?」

「いや、お前の学校生活の為だろ?」

「へ?」

「あくどい手段使ってマネージャーやってる人間の隣で働いてたら、それこそ要らない噂が立つ。ここまでやってもらってるのに今更不利益を被ることはないだろ?」

 

 何かフリーズしたように立ち尽くした一色を尻目に俺は会計を済ませた。まあドリアとドリンクバー位なら奢ってやらんでもない。あっ、そういえば辛味チキン食われたんだった。

 

「前にも言いましたけど、それをやると」

「逆に不利益になるって事だろ?その時は、全部俺がやりましたでオールOKだ」

「いやそんなことしたら先輩学校に居られなくなっちゃいますよ!?」

「なんで?」

「流石にサッカー部の損になったみたいな話聞いたら確実に全学年から目を付けられますって!今の女子人気すごいんですから!」

「え?マジで?」

 

 その一言で横の繋がりがあって、縦の繋がりも少しばかりありそうで、情報を流せば動きそうな所が、俺の頭に流れてきた。

 

「一色。お前のおかげで何とかなりそうだわ。いや、ごめん。本当にありがとう」

「えっと?なんですか?」

 

 あったあった。学校内で俺らだけが使える毒。炎の海でスキューバダイビングしてるようなウルトラCが頭の中にあったじゃないか!

 そうして、ただ一つ家族以外の携帯電話番号をプッシュした。

 

 

 

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