やっちまった…………。
ノリに乗りすぎた。
と後悔後先立たずではあるが、修学旅行からマイスウィートホームから帰って来た俺は思っていた。
何にも解決してねぇ!?
ああ、こんな俺を受け入れてもらった。許してもらった。
だけど由比ヶ浜の事が解決してねえし、あれからどんな顔であいつらの事見ればいいんだ!?
枕に顔を押し付けて10分ほど身悶えた。懐かしいなこの感覚、枕だけは何も言わず受け入れる。アンパンヒーローがダメになったら一番の友人は布団と枕だけが友達さって歌詞になるのではないか。
そうして身悶え続けて、疲れ果てた俺は放心しながら天井のシミを見つめた。
「滅びろ…………いや、やっぱ困るな」
雪ノ下や由比ヶ浜が居なくなるのは、困る。
身勝手な妄想であいつらを、悲しませたくは無い。
ぐおおおおお
また身悶えた。
そんなことがあった次の登校日。
放課後に俺は奉仕部の部室に行こうとしていた。だが、まあ扉を開けるのに苦心していた。
これはあれだ、小学校の時一人で登校していた時先に来ていた奴らが俺の悪口を言っていて入りにくい時に似ている。
なんでああいう時入りにくいんだろうな、悪いのは悪口言っている方だと思うのだが。というか小学校の時の俺大人気だな、比企谷菌がインフルより大流行していた時代だ。
「…………先輩?」
いやまあ、過ぎた事を考えていても意味は無いんだが。そういう所が悪い所なのかもしれない。
大切なのは割り切りだと思っていたが、これからは寄り切りも必要だ。精神的フィジカルはどうやって鍛えればいいですか?
…………一瞬材木座の顔が浮かんだ。ある意味己が主人公の中二病になるしかないのか、無理。
「あの、先輩?無視………ですか?」
まあ、今の俺にはどうやっても無理だという事が判明した所で…………どうしたものか。普通に俺帰っていいんじゃないか?
そもそも、こういう経験は初めてだ。部活やって無かったらバイトバックレの無課金人生。今もだけど。元々居場所がない居場所から逃亡する事には慣れたが、居場所があった所から自らかなぐり捨てて失ったのは初めての経験だった。
つまり経験値0。雪乃女王が倒せない。E缶プリーズ。
…………天啓を得た。とりあえずマッカン買って落ち着こう。
「先輩!」
「びゃああ!?」
急に後ろから抱き着かれた驚きで奇声を上げてしまった。え?なに?アイテム2号!?
「無視、しないでくださいよ」
「え、な、なに?」
もしかして話しかけられてた?なんかすまん。
それにしたって抱き着く事は無いんじゃないですか一色さん。…………そういえば。
「一色、俺辞めるって言ったけど、あれ忘れてくれ」
「…………え?」
「やっぱやめた方が良かったか?」
ああ、何となく歓迎してくれるものだと思っていたが。違ったか。
「先輩、歯を食いしばってください」
「へ?」
そう言うと握り拳を作ってこちらに向き直った。
「先輩は!私がどんな思いで!この数日間過ごしたと思っているんですか!?」
「痛っ!?ちょまっ!?」
「…………理由は、聞かせてくれるんですよね?」
「あの、ちょっと恥ずかしいから嫌だ、って…………お前や奉仕部のみんなと離れるのが嫌になった。それだけだ。ごめんな、心配かけて」
半ば無意識に幼い頃の小町にするように頭を撫でた。一色は不安から来る苛立ちをぶつけたに過ぎない事は分かっている、何とかしようとした結果がそれだった。結果は大失敗、顔を手で覆って俯いてしまった。
というかみんなという言葉を俺が言う事になるとは思わなかったな。
「良いですよ、許してあげます。ただ一つ条件があります」
すまんキモすぎたな。辞めろって事か。
「名前で呼んでください」
「そんなのでいいのか、いろは」
手の隙間から、俺の様子を伺って意を決したように喋った。何か顔が赤いような気がしたが、どうした?風邪か?
「…………そ、それで、先輩は何をしにここに?」
「ああ、一色にはこの件でちょっと迷惑かけたしな。それの相談」
「名前呼びはこれからずっとです!!」
そうなのか。
「なんか悩んでいるのが馬鹿らしくなってきたな。じゃあ顔出してくる」
「あんなに大声出して聞こえないとでも思っているのかしら?」
「悪い」
雪ノ下に軽口を言いながら、俺は間違っていない日常へと進んでいくような気がした。
「それに私も名前呼びしてくれないのかしら」
「なに?名前呼び流行ってるの?ゆきのん?」
誰と付き合うのが良いか。
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雪ノ下雪乃
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由比ヶ浜
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一色いろは
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蛇足なら書くな