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俺は今ららぽに来て、よく待ち合わせに使われる広場に居る。もう久しくここに行ってなかったような気がする、最後に来たのは半年前とかか?。と思いを馳せている間にも、携帯の方には連絡が来ていない、つまりまだ雪ノ下は来てないようだ。
あれ?……………どうしよう、いまさら緊張してきた。友達と遊ぶの初めてだからとても緊張する、経験値はかろうじてお椀一杯あるかないかだ、そんな俺にお椀一つで大海に出ろってか?一寸法師じゃないんだからお椀はないよ、だれでもいいから黒船持ってきて!俺友達居ないんだった…………というかその友達と遊ぶのに緊張しているんだから世話がない。
一つ深呼吸をした。まだ来ていないことだし、書店で時間を潰すことにした。というか、紙に囲まれないと落ち着いて考え事なんて出来る気がしない。
適当な書店の自動ドアが空き、エアコンを効かせた風が俺の身を包む。最近は外気温の変動が激しいせいか、店側のエアコン設定がずれて少し生暖かい風が来ていた。中に居っぱなしの店員は外気温に気づかないのだろう、さっきまで自転車を使っていた事と緊張が相まって少し汗が滲んできた。
中に入って真っ先に探したのはラノベコーナー。妙なタイトルにアニメ調の表紙、最近では太宰治の人間失格ですらアニメ調の表紙にしてしまうのだから。小学校で辞書片手に見た人間失格からは考えられなかったが、まあ文豪面白かったから問題ない。
少し落ち着いてきた所で冷静に考えよう、俺は友達に飯食おうぜと誘った、それだけだ。うん。会って半年も無いが友情は時じゃないってジャ○プで言ってた。相手は人で頭から食われることはない、最悪無視されるだけだ問題ない問題ない。学校外で会うのは初めてとはいえ、そう邪険にされないはず、なんか食いつきもよかったし。よかったのか?
思えば俺はこうして、悪く言えば人の顔色を伺うなんてことをしてこなかった。スポーツでもなんでも一人でしかできなかったからな、一人テニスという字面が嫌でスカッシュの存在を知った時には、これだ!と思った反面なんでこいつら二人いるのに壁打ちやってるんだという虚無感を感じたものだ。結局俺の中のテニスは【家の中でお手玉をすること】に落ち着いた。すでにお手玉と言っている時点で何かが間違っていると思うのだが。
突然ズボンのポケットが震えた。雪ノ下だ。
「もしもし」
「比企谷君かしら?」
「ああ、ついたか?」
「ええ、ただ…………珍妙な男が居て近寄りがたいのよ」
「今どこにいるんだ?」
「書店よ」
「○○か?」
「ええ」
「ん?…………そんな奴いないぞ?」
「見た目が奇妙な訳ではないの、例えるなら身綺麗なゴキブリが服着て本を探しているようね」
「完全に俺だよね?」
耳元でプーップーッと音が鳴った。電話が切れ、後ろに気配がして振り向くと雪ノ下がいた。
「あら、ようやくゴキブリを自覚するようになったのかしら」
「わーい(棒)生物として認識されたー(棒)」
ちょっと涙が滲んだ。俺がゴキブリに見えるのならしょうがない、たぶん全世界の人間そう見えていると考えればダメージは少ない。某漫画によると東京はゴキブリと同じ部活に所属するような物と聞く、だったら俺でも友情なんか芽生えるかもしれないじゃん。なんだ?「じょうじ」っていっときゃ良いんだろ?
現在部活に所属しても友情が一ミリも生えて来ないのは見て見ぬふりをしながら、俺は雪ノ下に問いかけた。
「ま、いいや。雪ノ下、ついでに買いたい物とかあるか?」
「いえ、特にないわ」
「そうか、少し時間が早いからな」
いや、早くね?時計を見ると11時少し過ぎたあたり位で、パフェを食べるには重すぎで昼前に食べることができないほどの時間だった。……………あれ?
「時間つぶしつつ、どこかで食ってくか……………?」
「こっちを見て、正直に言いなさい?」
「時間伝えるのを忘れてました」
しかも、喫茶店側に2時半に予約を取ってきたのだった。それに少しららぽ散策しつつ最終的にマックスコーヒーを買ってくればいいと思ってた、それに女性の身だしなみの時間は優に1時間を超える(俺が思うにファンデーションを調合しているに違いない)
「……………急いで準備する必要もなかったわね」
「それは本当にすまん」
雪ノ下ともなればファンデーションの調合も慣れた物なんだろう。それに急いで来たという割には……………
「似合ってま、すな、シンプルで良いと思うぞ」
訝しげな顔をしながら俺の所を見て、さらに顔に浮かんだ表情が歪んで、雪ノ下は携帯を取り出しピッピッと携帯のプッシュ音を鳴らせた。いやに聞き覚えのある音階だった。
「警察はやめて!」
「違うわ119よ」
「絶対その救急車黄色い!」
小町との悲劇を思い出したぜ…………。
「全く変態的なことを婦女子に投げかけるなんて人間失格もいい所だわ」
「十数年で抱えた恥多すぎるんだよ、女には恵まれなかったが」
「なら元から老け顔なのね、それにしたっていまさら普通じゃないことに傷つくような人でもないでしょうけど」
言葉に棘が生えてるとか言った次元じゃない斬撃だよこれ、いっそ心にモルヒネ打ちたい。いやいや、痛みを感じてこその心だ…………というか老けてるのか?摩耗したみたいな意味合いなんだろう。
「今傷ついてるわ、服良いなって言っただけなのに」
「今傷ついてるわ」
「時間の件は悪かったよ!確認するが、特に何か買いたい物はないんだな?」
「無いと言ったはずなのだけれど?」
「わかった、小町へのお土産を買っていきたいんだ。ああ、妹な?」
「行ってらっしゃい」
「そのお買い物に付き合ってくださいませんでしょうか雪ノ下さん!?」
「私、そんなにセンス無いわよ?自慢じゃないけれど、一般的な女性の好みとは外れているというのは自覚しているもの」
「そうか?」
「ええ、それより比企谷君の服のセンスに驚いているわ」
「あ?ああ、これ先輩が選んでくれた奴だ、俺選んでないからな?」
「その先輩に頼めばよかったのではなくて?」
「この前の卒業式でいなくなったよ、今じゃ地方の大学で一人暮らしだと」
「そう…………わかったわ、このままのさばらせて罪のない妹さんがさらに恥をかく訳にはいかないわ。微力ながら手伝わさせてもらうわ」
◆ ◆ ◆
「遊びすぎた」
「遊びすぎたわね」
パフェを食い終わり、店を出た後俺たちは声を揃えてこう言った。ウィンドウショッピングレベルで店を冷やかし、軽食取ったり、だべったり、おすすめの本を教えあったりしたな。
肝心のパフェはそれはもう頭が悪かった。煌びやかな果実、純白に近い生クリーム、それらがふんだんに使われた甘味の暴力の最終形態。俺はマックスコーヒーを日常的に飲んでいるため耐性はあった、最近は嘔吐耐性もついてきたしな。ちなみに雪ノ下が食べたパンさんパフェは普通に食える量だったことを記しておく。
とまあ、もう、恥も外聞も何もなく遊びまわってた。代償として財布のシェイプアップが行われたが。
「そういえば、失礼だと思うのだけれど」
「ん?」
「よくこういう所を知ってたわね」
「あー……………」
「また先輩?」
「…………まあな」
言い淀んでもしょうがなかったから、素直にそういった。去年に3回ほど変な言い訳されて連れてかれた覚えがある。今回連れて行った半数は先輩に連れてかれた所だったと思う。
「そう」
喉に小骨が刺さったような顔と消化不良感を出しながら雪ノ下はこう言った。
「話にはよく聞くけれどその先輩とは付き合っていたのかしら?」
「まさか、ただの先輩だっただけだ」
あるわけがないし、今現状先輩との繋がりは全くない。そもそもとっくにそんな
「大体、そんなことしたら通報されるだろ」
「……………」
いや、黙らんでくれよ……………。沈黙は金だが、今回ばかりは気まずさを覚えた。結局俺が雪ノ下を呼んだんだし。
「目的も済んだことだし、送るか?」
「いえ、かまわないわ。比企谷君、今日はありがとう」
俺は今、UMAをみた。絶対に雪ノ下だったら「一人暮らしの女性の家に上がりこもうとしているのかしら?本当に気持ち悪いわ死になさい」位言うだろ、それでなくとも1のプッシュ音が2回連続で聞こえてくる!
「実は今日家族が来るかもしれなかったのよ」
「ああ、なるほど」
雪ノ下は親と折り合いが悪いらしい、それで1人暮らししている。どこかで時間をつぶそうと思った所に渡りに船だったわけか。
「それじゃ、お疲れ」
「ええ、また学校で」
俺はその場を立ち去った。
今日は割と楽しい一日だった。