絶対にありふれてはいけない職業は世界最恐 作:ムリエル・オルタ
目覚めた八重樫に近づくフェリド。未だ宙を見る八重樫の傍らに座る。
「八重樫、僕のこと分かりますか?」
「……………………………バートリー君?」
焦点の合っていない八重樫の目には自分の状態から目を逸らしているようだった。それを痛ましく思いながらフェリドは現実を告げる。
「非常に言いにくいけど僕が助けたときには既に左腕が無かった。それに、あったとしても既に魔物に食べられてると思う…………」
「そ、そんな……………………嘘…………よね?バートリー君の冗談なのよね?」
「流石に僕も前ならいざ知らず今はそんな冗談を言いませんよ」
フェリドの言葉に八重樫は頭を抱えたそしてその時左腕が肘から先が無い事を嫌でも思い知らされ、八重樫は「あ………あぁ…………」と目が虚ろになっていった。
その不味い兆候にフェリドは抱き寄せ、背中を撫でながら落ち着かせようとした。出来る事なら麻酔や睡眠剤で一度眠らせ、落ち着かせる方が良いのだが迷宮にそんなものは無い。それに、眠らせれば非戦闘者を一人連れて歩くことになる。それは、この迷宮では死を意味するだろう。
「落ち着いて、落ち着いてください。大丈夫、僕が守りますから。ほら、深呼吸して」
「はぁ、はぁ……………ふぅ。ごめんなさい。取り乱したわ、ごめんなさい」
フェリドに縋る様に体を預ける八重樫は弱弱しく、それでも安心させるように笑顔を作ったが余りにもぎこちなさ過ぎてフェリドはそのまま暫く八重樫を抱き寄せてあやしていた。因みに、あやし方が子供や赤子に行うそれだったのはご愛嬌と言うか、なんと言うか、絵ずらがアレであったりした。
暫くして落ち着きを取り戻した八重樫は顔を朱に染めて立ち上がった。しかし、五体満足の時とは違い片腕がない状態。普段と違う感覚によろけ倒れそうになるのをフェリドの介護を受けながらどうにか立ち、白崎とハジメがいる場所に向かった。
「ハジメ、お肉の焼き加減はどうですか?」
「うーん、見た目は大丈夫かな?あと魔物のの肉は猛毒らしいから神結晶からとれた神水も用意してやっと完成だと思うよ」
フェリドの問いにそう言いながら一心に魔物の肉を焼いていくハジメ。その姿はまるで焼き鳥を焼くアルバイト店員のようだった。
そんなハジメに何と言ったらいいのか分からないフェリドは暫く無言でハジメの肉焼き作業を見ていたが誰から鳴ったか分からない。お腹の音に顔を見合わせることになった。
そして、音の発生原因はすぐに分かった。ハジメだったのだ。こちらをスルーしているが分り易いほどの頬を染めている。お腹を鳴らしたのが恥ずかしかったのだろう。
「お、お肉も焼けたし、神水もあるから皆食べようよ!えぇっと、フェリドは要らないんだっけ?」
「えぇ、僕は本来食事を必要としない種族ですから。それに、食事代わりの専用のモノもありますしね」
そう言ってフェリドは片手をヒラヒラとさせていた。フェリドの言った「モノ」が気になった三人だが、今は喋ってくれないだろうと思ったのか、それ以上言及しなかった。そして、それぞれ、喉をゴクリと鳴らして目の前にある魔物の肉に齧り付いた。
「うえぅ、マズッ!」
「で、でも、食べないと」
「そ、そうね…………」
三人とも余りの不味さに顔をしかめたが、これ以外食糧がない以上これを我慢して食べるしかないと割り切り無理やり飲み込み胃の中に納める。そして、次の瞬間三人に変化がお訪れた。
「あ゛ぁ……ウグゥゥゥウ……!?!?」
「イッ!?ウグッ……………あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!?!?」
「あぐっ、うぅ……………!くぅぅぁぁアアアアア‼!?!?」
「ちょ、ちょっとこの急展開は僕も予想してませんよ!?大丈夫ですか?皆さん!?」
フェリドは慌てて三人に駆け寄る。三人は吐き出しそうになるがどうにかに見込み神水を煽った。フェリドはわちゃわちゃする事しか出来ず。せめてもと三人用に岩を削ってイッ〇Qの虹が出るときの場所を作っていた。
暫くすると落ち着いたのか三人は黙っていた。フェリドはせっせと三人分の穴を掘っていたので全く気が付いていなかった。が、三人が黙ったことに気が付いたのかひょっこりと頭を出し、様子を窺った。
そしてそこには白髪に赤眼の三人の少女が居た。
「え、ハジメと八重樫と白崎ですよね?どうしました?余りの不味さに頭が逝ってイメチェンですか?似合いませんよ?」
「「「イメチェンじゃないから!」」」
フェリドのコメントに仲良く同時に抗議する三人。それを見たフェリドは「仲いが良いですねぇ」等と言いながら三人の髪と目以外の変化に気が付いた。
「あー、セクハラになるかもしれませんけど確認のために言いますよ?他意はありませんからね?ハジメ達、胸大きくなりました?」
「何言ってるの、バートリー君。ハジメ君は男……………の……………子?」
「どうしたのかお……………り?」
フェリドの言葉に笑いながらハジメを見た白崎と八重樫はハジメを見たまま硬直した。それはハジメがとても女らしい体系になっていたからだ。そして、ここで白崎と八重樫の二人がハジメが女だった事を知らなかった事をフェリドは思い出したが今更である。
そして、その後フェリドとハジメは混乱する八重樫と中途半端にあるオタク知識から訳の分からない事を言い始める白崎に事情を説明するのだった。