幻想郷の悪魔さん   作:りっく

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調査隊in紅魔館

 

 

 

 紅魔館のそばまでやって来た。昼間、常に霧が出ているこの湖は、視界が悪く、さらに水滴で体が冷えるため、あまり近寄りたくない。

 しかし、魔理沙達の目指す紅魔館はこの先、湖の畔に建っているのだ。

 

「レミリアは起きてるかなあ」

 

「でももう夕方だし、起きてる頃じゃない?」

 

 2人が霧の中を真っ直ぐ飛んで湖の上を通過する途中で霧が晴れ始めた。橙色の霧がすっかり無くなると、目に飛び込んできたのは夕陽に照らされている紅魔館だった。

 幻想郷には珍しい洋風の作りで、中心に建っている時計塔は5時を指している。

 

 紅魔館の門前に降り立った。

 

「今日は寝てないのね、美鈴」

 

「流石に四六時中寝てるわけじゃありませんよ…お久しぶりです」

 

 答えたのは門の側で壁に寄りかかるようにして立っているチャイナ服を着た門番、紅美鈴だった。彼女は気の使い手で、およそ弱点というものが無いため、紅魔館の門番を任されている。弱点が無いと言っても特定の攻撃に極めて弱いというわけではないというだけのことだが。

 

「なんの御用でしょうか」

 

「ちょっとレミリアに聞きたいことがあってね」

 

「聞きたいこと?」

 

「ええ。レミリアは起きてる?」

 

「はい。ついさっきお目覚めになりました」

 

「じゃあ会わせて。今回は重要な話だから」

 

「重要な話というと……人里で人気だというパへの話でしょうか」

 

「違うわ」

 

 一瞬パへと聞いて何だろうと首を傾げたが、おそらくパフェのことだろう。

 

「じゃあゴールドバッハの予想がついに証明されたとか?」

 

「あんた、ボキャブラリーとか知識とか偏ってるわね…」

 

「咲夜さんが持ってきてくれる雑誌のおかげですよ」

 

「……とにかく、そういうのとは違う真面目な話だから、早く通らせて」

 

「仕方ないですね。ほいほいと通したら本当はいけないんですが」

 

 美鈴は門を開けて、2人に早く通るよう言った。

 

「私だけで来た時は通すの渋るくせになあ」

 

「魔理沙さんは図書館から出禁食らってますからね」

 

 2人は中庭を通って、巨大な玄関のドアを開けた。

 

「相変わらずド派手だなあ」

 

 真っ赤な壁に紅い絨毯。窓は少なく、ホールは少し薄暗かった。左右の廊下へ続く階段は中心の踊り場から分かれており、さらに下の方にもドアがいくつもあるのでどこの扉を開ければ良いのか全く見当がつかない。魔理沙は図書館につながる扉だけは覚えていたが、レミリアの部屋への通路は覚えていなかった。

 

「美鈴は一体何をしてるのかしら。本泥棒と貧乏巫女じゃない」

 

 後ろから突然声が聞こえ、びくっとしてしまう。

 

「咲夜ね。今日はレミリアに会いに来たの」

 

 振り向くと、そこには懐中時計を右手首にぶら下げた銀髪のメイド、十六夜咲夜が立っていた。彼女は「時を操る程度の能力」で時を止めている間に後ろへ回り込んだのだろう。

 

「お嬢様に用があるなんて珍しいわね。でも、貧乏だからって、もうここにはメイドの仕事はもうないわよ」

 

「お金が無くてバイトしに来たんじゃないの。調査よ、調査」

 

「ふうん、何の?」

 

 咲夜は怪しむように訊いてきた。特に魔理沙の方をちらちらと見ている。鈴仙といい、咲夜といい、魔理沙を泥棒かなにかと思っているのではないか。

 実際泥棒なのだが、その事実は魔理沙にとっては“借りている”だけなので自覚が無い。

 

「ちょっとね。いちいち説明するのも面倒だし、まとめて説明するわ」

 

「……そう。じゃあお嬢様の部屋まで案内してあげましょう。どうせ道がわからなかったんでしよう?」

 

「ああ。そういえばこのたくさんのドアはどこに繋がってるんだ?」

 

「左から順に図書館、キッチン、妹様の地下室、妖精メイドたちの部屋で、2階は複雑に通路が絡み合ってるわ」

 

 2階は咲夜があとで拡げたため、かなり複雑なつくりになっているらしい。まるで迷路のようだった。咲夜は迷いなく進んでいくが、もし取り残されたらレミリアの部屋を見つけるのにはかなり時間が掛かるだろう。

 

「私は一発じゃ覚えらんないな。霊夢はどうだ?」

 

「だいたい覚えたわ」

 

 霊夢はあっけらかんと言った。やはり霊夢が弾幕ごっこで強いのは弾幕を避ける技術だけでなく、パターンを覚えるための記憶力が優れているからなのかもしれない。

 

 しばらくすると、咲夜はあるドアの前で立ち止まった。ノックをすると、中から

 

「入りなさい」

 

と声が聞こてえきた。

 

「失礼します、お嬢様」

 

 咲夜は2人の客人、霊夢と魔理沙を部屋に迎え入れた。青髪と紅い眼を持つ運命を操る吸血鬼、レミリア・スカーレットは翼を器用に折りたたみ、ソファに深く腰掛けていた。遠目に見るとカリスマが溢れているように見えなくもない。

 

「あなたたちが来るのはもう知ってたわ。運命を操る私からしたら手に取るように……」

 

「じゃあ私たちが何のためにここへ来たか分かる?」

 

 霊夢が問うと、レミリアは明らかに狼狽した。

 

「わ、分かるわ。えーっと……そうね……お茶会?」

 

「残念、大ハズレ」

 

「運命で分かるんじゃないのかー? 適当なこと言って自慢してたのかな?」

 

 魔理沙が煽ると、レミリアは少し俯き、肩を震わせ始める。

 

「お嬢様!」

 

 咲夜が指を鳴らすと、レミリアと咲夜の姿が瞬時に消えた。

 

「どこいったんだ、あいつら」

 

 魔理沙が、周りを見回していると、壁の向こうからしゃくり上げる声とそれをなだめる声が聞こえてきた。レミリアは傲慢な割に相手に嫌なところをつかれたらとことん弱いらしい。

 

「子供をいじめるのはどうかと思うわ」

 

「でもあいつ500歳だぜ!? この程度で泣くとは思わなかったからさ」

 

 5分ほど経って、再びレミリアと咲夜が現れた。

 

「失礼。ちょっとペットのウーパールーパーの様子が気になってね」

 

 レミリアは平然と言った。目の周りに涙のあとがあるし、壁が薄くて泣いているのがまる聞こえだったとは言いづらい雰囲気である。

 

「…まあいいわ。今日来たのは、永遠亭であんたの妹に処方された性格逆転薬についてなんだけど。そういえばフランは今何してるの?」

 

「地下室に居るわ。もう頭もすっかりまともになったから、鉄格子は撤去してるけど」

 

「そうか。フランにはあの薬の説明をしたか?」

 

「ええ、まあしたと思うけど。何で?」

 

「その薬の在庫が盗まれているんだ」

 

 霊夢と魔理沙はそれまでの調査の経緯を説明した。

 

「なるほど、そういうわけね。でも私があの薬について説明したのは咲夜とフランだけよ。フランは館の中では自由に歩き回ってるけど、館の外には出てない。咲夜は誰かに話した?」

 

 レミリアは咲夜に問うた。しかし咲夜は首を振って、否定した。

 

「うーん、じゃあ、誰があの薬を知ることがてきたんだろう」

 

「一応フランにも聞きましょう」

 

 

 

 

 紅魔館地下室へやって来た。ドアを開けると、中は子供らしいぬいぐるみや可愛いものがいくつも置かれていた。その部屋の真ん中に、フランドールはいた。金髪に宝石のような羽と、姉とは随分外見が違うが、顔立ちはどことなくレミリアと似ている。前に会ったときに顔に浮かべていた狂気はすっかりなりを潜めていた。

 

「フラン、客よ」

 

「霊夢、魔理沙!遊びに来たの?」

 

「いや、残念ながら仕事だ。ごめんな」

 

「ちぇ」

 

 フランは不満そうな顔をした。姉よりも感情をストレートに、顔に出している。言動が幼すぎるのは何十年も閉じ込められてきたせいだろう。

 

「聞きたいことがあるの」

 

 霊夢はフランに近づいた。

 

「最近、あなたはお薬もらったわよね。それを教えてあげた人とかいるのかな?」

 

「うん」

 

 フランはあっさりと肯定した。

 

「誰?誰に教えたの?」

 

「ちっちゃい人。なんとか丸って言ってた」

 

 それを聞いてすぐに魔理沙は針妙丸を思い出した。霊夢も同じ答えにたどり着いたらしく、目を丸くしている。

 

「薬の効果も教えちゃったの?」

 

「うん、ありがとうって言ってたよ」

 

 間違いなく針妙丸はこの薬の盗難に一枚噛んでいる。主犯はおそらく、あの天邪鬼だろうが。おそらく針妙丸は最近までこの紅魔館に潜伏していて、レミリアの性格逆転薬の説明を聞き、仲間の天邪鬼、鬼人正邪に伝えたのだ。そして永遠亭へ出向いて針妙丸に薬を取ってこさせたのだろう。迷いの竹林は妖怪からくすねたマジックアイテムのどれかで抜けたのかもしれない。

 

「結局またあいつを追っかけないといけないってことか」

 

「そうねえ」

 

 以前、幻想郷中が正邪を追い回し、確保しようとしたが、逃げきられてしまった。もしも正邪が今回の事件の犯人であれば、確保はかなり難しいだろう。

 

「なんだか面倒になってきたわね……」

 

 霊夢はため息をついた。

 

 

 




 ようやくプレビューの存在を知りました。以前自分で見てみた時に文章ががたがたになってて読みづらかったので、これ以降はそれが無いようにしていきたいです。
 
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